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潰瘍性大腸炎の治療費用、年間でどのくらいかかる?

投稿日:2025年10月10日

潰瘍性大腸炎は、厚生労働省指定の難病であり、国の医療費助成制度の対象となる疾患です。しかし、治療が長期にわたるため、年間でどれくらいの費用がかかるのか、不安に感じる方も少なくありません。

この記事では、潰瘍性大腸炎の治療にかかる年間のおおよその費用、費用負担を軽減するために利用できる公的支援制度、そして民間医療保険の活用について詳しく解説します。

潰瘍性大腸炎の治療費用

潰瘍性大腸炎の治療費用は、患者の病状や、どのような治療法を選択するかによって大きく異なります。

主な治療法として、内科的治療(薬物療法)と外科的治療(手術)があります。

薬物療法にかかる費用の目安

薬物療法は、主に「5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤」から始まり、効果が不十分な場合は「ステロイド」「免疫調節薬」などでの治療となります。

潰瘍性大腸炎に関連する、主な薬剤費の目安(月額および年額)は以下の通りです。

・5-ASA製剤:1~2万円(年間12~24万円)
・ステロイド薬:5,000円~1万円(年間6万~12万円)
・免疫調節薬:1~2万円(年間12~24万円)

※上記はあくまで目安であり、投薬量、検査頻度、入院の有無によって大きく変動します。重症化して入院が必要となった場合の入院費の目安は、1週間で20~30万円です。

一定以上の症状の場合は公的制度が利用できる

病状が悪化し、薬物療法でコントロールができない場合などは、大腸全摘出、回腸嚢肛門吻合術(かいちょうのうこうもんふんごうじゅつ)といった手術や、 生物学的製剤による治療を検討することになります。

これらの治療は高額になりますが、高額療養費制度や指定難病医療費助成制度により、医療費が軽減される可能性があります。2つの制度の概要や要件について、見ていきましょう。

高額療養費制度とは?

高額療養費制度とは、1ヶ月に支払う医療費が自己負担上限額を超えた場合、限度額分が払い戻される制度です。

自己負担限度額は、年齢や所得によって異なりますが、例えば年収約370万円~770万円の場合、「8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%」で計算した金額が上限となります。

例えば医療費が100万円かかったとしても、上記計算式に当てはめると、自己負担限度額の上限は、8万7,430円で、差額の21万2,570円が払い戻されます。

高額療養費は、原則、病院で医療費総額を支払い、後日加入している医療保険制度の窓口で手続きが必要です。ただし、事前に「限度額適用認定証」を医療機関に提示すれば、医療費の支払いは自己負担限度額の上限までに抑えられます。

■ 協会けんぽのホームページ
引用元:厚生労働省保険局|高額療養費制度を利用される皆さまへ

指定難病医療費助成制度

潰瘍性大腸炎は、厚生労働省が定める「指定難病」の一種のため、以下の要件を満たせば、難病法に基づく医療費助成の対象になります。

・重症度が中等度または重度の場合(重症度は厚生労働省が定める基準に基づいて医師が評価する)。
・月ごとの医療費総額が3万3,330円を超える月が年間3回以上ある場合

そのため、軽度でも治療が長期化すれば助成の対象になる可能性もあります。

指定難病医療費助成制度では、患者の自己負担が2割に軽減される他、月の自己負担の上限が設けられています。月の自己負担上限額は、同じ健康保険に加入している家族間(同一世帯)での所得に応じて異なる仕組みです。

例えば、市町村民税7.1万円以上25.1万円未満の世帯の場合、月の自己負担上限額は2万円または、3万円※となっています。

・医療費の2割<自己負担上限額:医療費の2割が窓口での負担額となります。
・医療費の2割>自己負担上限額:医療費の2割と自己負担上限額との差額が支給されます。

潰瘍性大腸炎の診断を受けたら、難病指定医を受診し、診断書を記載してもらいましょう。必要書類を都道府県・指定都市の窓口で申請し、審査に通過することで受け取れる「指定難病医療受給者証」を指定医療機関で呈示すれば、助成を受けられます。

※3万円のケース:月ごとの医療費総額が5万円を超える月が、年間6回以上ある者(高額かつ長期の場合)

民間医療保険の活用について

公的支援制度が充実している潰瘍性大腸炎ですが、一定の自己負担は残ります。また、入院時の個室代(差額ベッド代)や、食事代の一部は自己負担です。さらに、治療が長期間に及ぶと、収入が減少してしまう可能性もあります。

民間の医療保険に加入していれば、入院や手術などの費用が保障される場合があるため、保障内容を確認してみましょう。

ただし、潰瘍性大腸炎になってからでは、医療保険の加入は難しくなります。仮に加入できたとしても、大腸や直腸、肛門に関する病気は保障の対象外(部位不担保)などの条件付きになる可能性が高いです。

あくまでも、潰瘍性大腸炎以外の病気で、これ以上の医療費負担を避けたいと言う方は、加入を検討しましょう。

まとめ

潰瘍性大腸炎の治療費は高額になりがちですが、指定難病医療費助成制度と高額療養費制度という2つの公的支援により、大幅に軽減できます。

公的制度ではカバーしきれない費用に備えるため、民間医療保険も選択肢の一つです。潰瘍性大腸炎は医療保険の給付対象になる可能性がありますが、発症後では新規加入の審査が厳しく、加入が難しくなります。仮に加入できたとしても、大腸関連の病気が保障対象外となるなどの条件が付く可能性が高いです。

とはいえ、その他のケガや病気への備えとしては有効です。保険料は発生するものの、検討する価値はあります。まずは専門のファイナンシャルプランナーに相談し、ご自身の病状や家計に合った保険を見つけることが大切です。

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