FP・識者の保険コラムExpart Column

海外旅行保険の販売停止・販売縮小が続く。背景には円安や海外インフレによる収支悪化。

更新日:2025年10月09日

海外旅行保険でも大手である損保ジャパンが、2025年10月1日から海外旅行保険の販売縮小することを発表しました。

具体的には以下の改定となるそうです。

(1)新・海外旅行保険「off!」はこれまで92日間まで加入可能であったが、31日間以内に限定。
32日~92日間についての販売が停止。
(2)家族でまとめて加入できる「家族プラン」の廃止。
(3)店頭で販売していた海外旅行総合保険を販売停止(団体・企業向けの包括契約だけ残す)。

海外旅行保険の仕事を長くしてきた私としてはとても驚きのニュースでした。

損保ジャパンといえば、ネットで加入できる海外旅行保険off!を2000年代に販売開始して、その保険料の安さで多くの人気を博しました。
そのときの海外旅行保険の売上はおそらく業界No.1にもなっていたでしょう。

その後に多くの保険会社がネット加入型の安い海外旅行保険を発売して追随しましたが、どこの会社も損保ジャパンの海外旅行保険off!の成功をモデルケースにしていたと思います。

その損保ジャパンの海外旅行保険の販売縮小。
競合他社はもちろん、同社内でも驚かれた人は多かったでしょう。

縮小の理由について、
「円安と世界的な物価上昇に伴う海外医療費の高騰で治療費用保険金の支払いが増加している。収入保険料がコロナ禍以前の水準に回復していないにもかかわらず、治療費用保険金を中心に支払い保険金が増加しているため、収支が悪化している。」
としています。

この状況は私が以前に記事にもしましたし、つい先日に公開されたYoutubeチャンネル「ちゃんすうWorld」に出演した時にもお話しました。

■ 以前に書いた記事
海外旅行保険の損害率は悪化中。赤字で販売中止の保険会社も。分析して分かった海外旅行保険の大切さ。

■ ちゃんすうWorldに出演して海外旅行保険を解説

円安が解消される目途は立っておりません。
1ドルが100円→150円になったということは、海外医療費は円ベースで1.5倍になっているということです。
今後はさらに1ドル160円、170円になると言う専門家もいますから、そうなれば海外医療費はさらに高額化します。

一方でこれまで各社が行ってきた海外旅行保険の値上げはせいぜい20%~30%にとどまっていて、円安の影響を吸収するには不十分です。
実際のところ損保ジャパンは2024年7月に値上げを実施したばかりでした。
このときの値上げが足らなかったことは今回の販売縮小で明らかになりました。

つまり、各社とも海外旅行保険の値上げはこれからも続くでしょう
むしろこれからが本格的な値上げで、私の予想では2026年~2027年にかけて大きな値上げや動きが出てくるのではないかと予想しています。

その中には連続での値上げを嫌って、海外旅行保険の販売を諦めたり販売縮小をする保険会社がまた出てくるかもしれません。

木代 晃輔

この記事の執筆者:木代 晃輔

株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。

損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。

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