インフルエンサーが手掛ける飲食店「こめを」で食中毒。飲食事業者が賠償責任保険に加入しておくべき理由
店舗の知名度や話題性にかかわらず、外食産業を営む以上決して避けて通れないリスクが「食中毒」です。
人気インフルエンサーが手掛ける「割烹こめを」で78人が集団食中毒が起きました。
今回はこの事故を教訓に、食中毒発生時に店舗が負うことになる責任と、被害者支援および事業継続の要となる「賠償責任保険」について解説します。

この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。
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「割烹こめを」中毒事件の概要と業界への衝撃
著名インフルエンサーが2023年にオープンした割烹料理店において、集団食中毒事故が発生しました。
SNSなどを中心に大きな話題となり、TVなどのメディアでも大きく報じられました。
飲食事業の最も難しい点は、どれほど普段から清掃や衛生管理を徹底していても、食中毒のリスクを「100%ゼロ」にすることが出来ないことです。
入念に予防策を講じていても、食材の持ち込み段階での微量な菌の付着、従業員の予期せぬ体調変化、夏の高温多湿といった環境要因など、不可抗力に近いかたちで事故が起きてしまう恐れが常に潜んでいます。
事故が起きてしまった際、店舗側がどのように事態に対処し、被害を受けられたお客様に迅速かつ真摯な補償を行えるかが、お店の再起と経営の存続に大きく影響します。
2. 食中毒発生時に飲食店が負う「3つの責任」
食中毒事故を起こしてしまうと、飲食店側には以下のような法的責任・社会的責任が一気に押し寄せます。
民事上の責任(被害者に対する損害賠償義務)
体調を崩されたお客様(被害者)に対する金銭的補償です。
・病院にかかった「治療費」
・通院にかかった「交通費」
・仕事を休まざるを得なくなった場合の「休業損害」
・精神的苦痛や逸失利益に対する「慰謝料」など
を支払う義務が発生します。
被害者が多数に及ぶ場合、その総額は数百万円~数億円規模に膨れ上がります。
行政上の責任(営業停止・禁止処分)
保健所の調査を受け、食品衛生法に基づき数日間の「営業停止処分」や、重度のケースでは「営業取消処分(営業禁止)」を受けることになります。
処分期間中の売上は当然ゼロになります。
刑事上の責任(法的な罰則)
業務上の不注意が重大であると判断された場合、業務上過失致傷罪などに問われ、事業主や管理責任者が刑事罰を受ける可能性もあります。
飲食店が賠償責任保険に加入しておくべき理由
食中毒が発生した際、店舗が被害者への誠意を示し、かつ店舗の破産を防ぐために絶対に必要なのが「賠償責任保険(施設賠償責任保険や生産物賠償責任保険・PL保険)」への加入です。
① 被害者救済の迅速化
食中毒被害に遭われたお客様は、身体的な苦痛とともに「治療費や仕事を休んだ分の補償はきちんとなされるのか」という不安を抱えています。
店舗が賠償責任保険に加入していれば、自社の手元資金(現預金)の有無にかかわらず、保険会社を通じて必要な治療費や休業損害などを支払う体制を整えられます。
金銭補償を早期に提示することで二次的なトラブル(炎上や感情的な対立)を防ぎ、被害者救済を最優先で進めるための裏付けとなります。
② 店舗の資金繰り・経営継続の保護
集団食中毒となった場合、数十人~百人単位の被害者への損害賠償金は非常に高額になります。
これらをすべて自社の手元資金から支払うとなれば、すぐに資金がショートし、倒産に至ってしまう恐れが高まります。
賠償責任保険を活用することで、巨額の賠償請求から手元の現預金を守り、事故収束後の店舗再建や営業再開に向けた資金を確保することができます。
飲食事業者が押さえておくべき保険選びのポイント
飲食店向け賠償責任保険を選ぶ際は、「加入していれば安心」ではなく、補償内容の確認が必要です。
以下の点は特に大切になります。
十分な支払限度額の設定
「1名あたり」および「1事故あたり」の支払限度額は、数千万円~億単位での設定を強く推奨します。
集団食中毒では被害者が複数人に及ぶため、1事故あたりの限度額が低いと保険金だけでは全額をカバーしきれなくなります。
「食中毒補償」が保険に含まれているか
賠償責任保険に誤って加入してしまうと、食中毒が対象外となってしまうこともあります。
「施設賠償責任保険」だけでは食中毒がカバーされませんので、必ず生産物賠償責任保険(PL保険)とセットで加入するようにしましょう。
示談交渉サポート・弁護士費用補償の有無
事故発生時、被害者との過失割合や賠償金額の交渉を自社だけで行うのは精神的・実務的に極めて大きな負担となります。
プロである保険会社が示談交渉サービスを提供してくれるかはとても大きなポイントです。
また、交渉を弁護士に依頼するための費用が補償される特約がついているかも併せて要確認です。
「営業休止損害補償(休業損害保険)」の併用
賠償責任保険は「被害者への補償」を行うものですが、行政処分による営業停止期間中の「自社の固定費(家賃や従業員の人件費、廃棄食材の損失など)」はカバーされません。
営業停止中の自社の固定費用を補填してくれる「営業休止損害補償」を併せて準備しておくのが望ましいです。
ウィズハートでは飲食店事業者向けの賠償責任保険を取り扱っておりますので、賠償責任保険をお探しの方はお気軽にご相談ください。
売上高が1億円以下の小規模事業者向けにはネットからお見積りや加入ができる賠償責任保険もありますので、以下専用ページもご覧ください。
飲食業の賠償責任保険なら「事業をおまもりする保険」(飲食店の方向けプラン)
まとめ:衛生管理とリスクマネジメントは経営の「両輪」
飲食店経営において、日々の衛生管理や徹底した清掃、従業員への教育は当然行っておくべき義務です。
しかし、どれほど注意を払っていても事故のリスクを完全に排除することは難しい現状もあります。
予期せぬ事故が起きてしまった際に、被害を受けたお客様に対して責任を果たし、店舗とスタッフの雇用も守る「賠償責任保険」への加入は、単なるコストではなく飲食店経営における必須のインフラといえます。
自店の衛生管理体制を再確認すると同時に、万が一の事態に対応できるリスクマネジメント態勢が整っているか、今回の事故を機に見直しされてみてはいかがでしょうか。
参考:過去に起きた大規模食中毒事件の事例
飲食店における衛生管理の徹底とリスク管理の甘さが引き起こす悲劇として、直近でも以下の事故がありました。
2024年7月:横浜の百貨店内店舗における「うなぎ弁当」集団食中毒事故
2024年7月、横浜市の京急百貨店内にある飲食店が販売した「うなぎ弁当」などを食べた客160人以上が体調不良を訴え、90代の女性1人が亡くなるという事故が発生しました。
保健所の調査で原因は「黄色ブドウ球菌」と特定され、調理前の手洗い不足や手袋の未着用など、現場における基本的な衛生手順の欠如が指摘されました。
長年愛されてきた老舗や有名店であっても、現場のわずかな不注意から命に関わる重大事故へと発展し、長年の信用を一瞬で失うことになります。
体調不良161人・死者も出たうなぎ弁当食中毒、手を洗わず調理が原因か…横浜市保健所調査(読売新聞)

この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。
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