FP・識者の保険コラムExpart Column

海外旅行保険の仕事をしてる私が「エンジェル・フライト」に感動した

投稿日:2025年05月10日

株式会社ウィズハートの木代(きしろ)です。
国際霊柩送還士という仕事をテーマにしたドラマ「エンジェルフライト」を見ました。

私は海外旅行保険の販売の仕事をしており、
・海外渡航者が海外で亡くなってしまったらどのようなことが起こるのか?
・ご遺族や周囲にどれだけ大きな負担が発生するのか?

を知っておかなくてはと思い、すぐにAmazonプライムで視聴しました。

感動で号泣!
素晴らしいドラマでした。

全6話で各話の構成もストーリも良いし、適度にある笑いのポイントもちょうど良い。
死を扱うテーマだけに重苦しい場面もありますが、全体を通して面白さとのバランスがとても上手く取れていました。

主人公や周りの人物が見せるプロフェッショナルとしての姿勢もすごく伝わってきます。
「最後のお別れのさよなら」を言ってもらうために精一杯尽くし、ご遺族が言う「おかえりなさい」。
言えてよかった、言ってもらえてよかったと、毎回思いました。

海外旅行保険の役割を改めて実感。特に死亡保障。

私は海外旅行保険の仕事をしていて、「海外に行く方は海外旅行保険に絶対に加入してください」とお客様にいつも言っています。

その理由は「高額な海外医療費に備えるため」というのが一番の理由で、死亡されたときの保障についてはあまり重要視していませんでした。

正直なところ「死亡保障はあっても無くてもどちらでも良いのではないか?」と思っていたくらいで、海外旅行保険の仕事をする人の中でも同じ考えの人は割と多いように思います。

しかし今回のドラマを見て、考えが変わりました。

愛する人が亡くなったとき、ご遺族の方の心痛は計り知れません。
もしそのときにご葬儀費用やご遺体搬送などで経済的な負担もさらにかかるとしたら、どれだけ苦しいことになるだろうか。

大切な人が亡くなられた辛さを消すことはできませんが、ご遺族にさらなる負担がかからないようお守りすることはできます。
極限の状況ではそのわずかな守りがきっと大切になります。

ドラマで主人公が「ご遺族にとことん悲しんでもらって、お別れをしっかり言ってもらう」ために精一杯仕事をしていましたが、保険もそれに貢献できるものだと感じました。

海外旅行保険は渡航者だけの保険ではなく、ご家族全員を守る保険でもあると。

日本大使館が出来ること出来ないこと

「海外で亡くなったら日本大使館が代わりに動いてくれるんじゃないの?」と思われている方もいらっしゃいますが、日本大使館は知っている限りの情報提供はしてくれますが具体的なことはご遺族自身で行うことになります。

もしものときは大使館が助けてくれる、お金を出してくれる(貸してくれる)と期待される方もいるのですが、大使館もそこまではサポートすることは出来ません。
以下は在フィンランド日本大使館のHPに書かれている文章です。

旅行、出張等で当国滞在中に、病気、事故等で日本人が亡くなる事案が発生することがあります。
不幸にもそのような事案が発生してしまった場合には、第一に、亡くなった方が海外旅行保険等に加入しているかどうかを確認してください。

保険に加入している場合には、保険会社が加入しているアシスタンス会社のサポートを受け、アシスタンス会社が必要な手続等を代行してくれます。

万が一の事態に備え、海外旅行保険に加入することを強くお勧めいたします。

なお、当館は病院との交渉、通訳、翻訳、医療費及び移送費の負担、支払保証、立替えは行いません。

在フィンランド日本国大使館「邦人のご不幸に伴う手続」より

海外旅行保険で死亡保険金が支払われている件数を調べてみた

せっかくなので海外旅行保険の仕事をしている者としての考察も。

損害保険料率算出機構が公表している保険金支払いデータを分析して、海外旅行保険の死亡保障が実際どれだけ支払われているかを見てみました。

以下は2023年度データの資料で、1年間に49件の死亡事例があり、総額で6億円の死亡保険金支払いがありました
つまり1件あたり平均1,200万円の死亡保険金支払いということですね。


ちなみに、これは「海外旅行保険に入られていた方のデータ」ですので、保険に入っていなかった方はここには含まれておりません
49件というのは保険加入者全体から見たら数は少ないですが、海外で亡くなられて死亡保険金が支払われているケースは毎年何件も起きていることが分かります。

ご遺体の搬送や防腐処理には高額な費用がかかる

「エンジェル・フライト」でも行われていたご遺体搬送やご遺体防腐処理(エンバーミング)ですが、ものすごくお金がかかります。
国によって移動距離・時間が変わるため一概に言えませんが、100万円~200万円がかかることも普通にあるそうです。

ご遺族の方が現地入りすることになれば、その渡航費用や滞在費も追加でかかるでしょう

海外旅行保険ではこれらの費用は治療・救援費用補償としてカバーされます。
以下は弊社ウィズハートで販売しているAIG損害保険会社の海外旅行保険の重要事項説明書で、赤線を引いたところで明確に支払い対象であることを示しています。

AIG損保 重要事項説明書
万が一に亡くなられてしまったときもこのように力を発揮します。

エンジェルフライトのモデルとなった企業

すでに皆さんご存知かもしれませんが、「エンジェル・フライト」のモデルとなった企業があり、それが「エアハース・インターナショナル」という会社です。、

■エアハース・インターナショナル株式会社 HP
https://www.airhearse.com/

外務省が2020年度に行った調査では、海外で亡くなる日本人は年間400~600人に上り、その約半数の送還をエアハース・インターナショナルさんが請けられたそうです。
エアハース・インターナショナルさんは講演活動もたまにされていらっしゃるようなので、いつかお話をお聞きしにお伺いしたいところです。

ちなみにこちらのブログ記事によると、
・ご遺体送還の依頼は保険会社経由で手配されることも多い
・エアハース・インターナショナルさんは東京海上日動やAIG損保とも提携している(知らなかった)
・どちらかの保険に入っていれば万が一のときにエアハースが橋渡しをしてくれる
とのことです。

AIG損保は弊社もメインで取り扱っていて、エアハース・インターナショナルさんが対応してくれるなら安心だなと思います。
機会があればAIG損保の海外旅行保険の損害サービスの方にもこのあたりのお話も聞いてみたいと思っています。

~2025年5月6日追記~
ドラマ「エンジェル・フライト」が2025年5月3日からNHKで再放送されているとのこと。
本当に素敵なドラマなので、たくさんの人に見てもらいたい。
そしてもしシーズン2があるなら絶対見たいですね!待ち遠しいです。

木代 晃輔

この記事の執筆者:木代 晃輔

株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。

損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。