FP・識者の保険コラムExpart Column

30~40代女性で増えるがん罹患。闘病の家族への負担は大きく、がんへの備えが大切。

投稿日:2025年11月01日
CFP 金子賢司
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金子賢司
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金子賢司

ファイナンシャルプランナー(CFP)の金子と申します。

「健康だから大丈夫」「まだ若いから関係ない」――そう思っていた30代後半の女性が、出産直後にがんと診断されました。

生後2ヶ月の赤ちゃんを抱えながらの闘病生活で家族の生活は一変し、経済的にも精神的にも追い詰められる日々が続きました。

しかし、この女性がん保険に加入していたことで、治療に専念できる環境を作ることができました

今回の記事では、がん罹患の統計データと実際の体験談から、若年層女性にとってのがん保険の必要性を考えます。

【データで見る】30代〜40代女性のがんリスク

国立がん研究センターの全国がん登録(2021年)によると、生涯でがんと診断される確率は女性で50.8%、男性で63.3%と、男性の方が高い傾向があります。

日本人が一生のうちにがんと診断される確率

日本人が一生のうちにがんと診断される確率
引用元:がん情報サービス「最新がん統計」を元に筆者作成

しかし、育児期・子育て期に該当する30代〜40代に限れば、女性の方ががん罹患リスクが高いという特徴があります。
これは女性特有のがん(乳がん、子宮がんなど)の影響が大きいためです。

30代・40代女性に多いがん

30代・40代の女性のがん罹患数(上皮内がんを含む)は合計で70,656人にのぼります。その上位5つの内訳は以下の通りです。

1位:乳がん 25,176人(全体の35.6%)
2位:子宮がん 24,713人(35.0%)
3位:大腸がん 4,683人(6.6%)
4位:甲状腺がん 3,412人(4.8%)
5位:卵巣がん 3,056人(4.3%)

注目すべきは、女性特有のがん(乳房・子宮・卵巣)が合計52,945人で、全体の74.9%を占めているという事実です。
30代・40代の女性は、まさに女性特有のがんのリスクが最も高い世代なのです。

【実例】出産直後にがんが発覚したケース

これは知人の奥様のお話です。
30代後半の奥様は、出産をされた2か月後に食道がんステージ3(リンパ節転移)と診断されました。

生後2ヶ月の赤ちゃんを抱えながらの闘病生活。
抗がん剤治療にくわえて食道全摘出手術と、長期にわたる治療が必要でした。

知人(旦那さん)は育児・看病・仕事を同時に抱えることになり、10年続けた仕事を断念。
収入は半減しました。

知人はこのときの状況を、「思考がまとまらない状態が続き、目先や将来の不安がずっとつきまとった」と振り返ります。

このケースの詳しい体験談は、以下のインタビュー記事でご覧いただけます。
■ がん保険インタビュー
出産直後の奥様にがんが見つかり、闘病を支える小川様の保険利用事例

健康保険だけでは足りない現実

日本には高額療養費制度をはじめとする充実した公的医療保険制度がありますが、それだけで全ての経済的負担をカバーできるわけではありません。

実際のがん治療では、制度の対象外となる費用や、直接的な医療費以外の負担も大きいのです。

高額療養費制度があっても残る自己負担

「健康保険があるから大丈夫」と考える方も多いでしょう。確かに高額療養費制度により、毎月の医療費負担は一定額に抑えられます。

しかし一般的な所得の方で、制度適用後でも毎月8万円以上の自己負担が発生します。

さらに、入院や手術が月をまたぐと2ヶ月分の請求に。収入が減少している中での継続的な医療費負担は、家計を大きく圧迫します。

制度対象外の費用が意外に大きい

医療費以外にも、さまざまな出費が発生します。

例えば、個室料金は高額療養費制度の対象外です。大部屋入院も選択肢ですが、がんなど重大な病気で体力が落ちている状態では、個室を選ばざるを得ないケースも多くあります。

個室料金は1日5,000円〜20,000円と病院によって幅がありますが、長期入院では大きな負担となります。

その他にも
・抗がん剤の副作用対策(ウィッグなど)
・通院の交通費
・家事や育児のサポート費用
など、医療費以外の出費も積み重なります。

見えない経済的影響

育児期のがん罹患では、直接的な医療費以外にも様々な経済的・生活的影響が生じます。

【収入面への影響】
・本人の休職・退職による収入減
・配偶者も育児と看病を両立するため、仕事を減らしたり転職を余儀なくされる

【時間とサポートのコスト】
・ベビーシッターや保育サービスの利用
・家事代行サービスの利用
・親族に頼る場合の交通費・滞在費
・看病のための休暇取得による昇進・キャリアへの影響

【精神的負担】
・経済的不安によるストレス
・子どもの将来への心配
・治療と育児の両立による心身の疲労

これらの「見えない負担」が積み重なることで、生活の質は大きく低下します。

がん保険が経済的・精神的支えになる

がんに罹患したときの経済的・生活的負担に備える選択肢の一つが、がん保険です。
公的医療保険ではカバーしきれない費用を補い、経済的な安心をもたらすだけでなく、精神的な支えにもなります。

がん保険では、一般的に以下のような保障が受けられます。

【基本保障】
がん入院給付金
がんで入院した場合、入院日数に応じて給付される
がん手術給付金
がんで手術をした場合、手術の種類に応じて給付される

その他、特約を付加することで、保障を拡充できます。

【代表的な特約】
がん診断一時金特約
がんと診断されると、まとまった金額が一括で受け取れる(使途自由)
通院給付金特約
放射線治療や抗がん剤などの通院治療にも対応
がん先進医療特約
がんで高額な先進医療を受けたときの費用にも備えられる
保険料免除特約
がんと診断された場合、保険料の支払いが免除される

また、医療保険にがんに関連する特約を付加できる場合もあります。
さらに近年では、がん診断一時金が基本保障になっているもの、健康保険の対象外となる実損払いのがん保険など、さまざまながん保険も登場しています。

前述の知人の奥様のケースでは、がん診断一時金500万円、生存給付金100万円/年(最大4年間)、入院一時金20万円などが支払われ、さらに保険料免除特約により診断後は保険料無料で保障が継続されて、がん保険でかなりの支援を受けられました。

保険が果たす本当の役割

このようにがん保険の価値は、単なる金銭的補償だけではありません。

経済的な余裕が生まれることで、治療の質を優先した選択ができます。
個室の利用、より良い治療法の選択、家事・育児のサポートを依頼するなど、お金の心配をせずに「今、本当に必要なこと」を選べる自由が得られるのです。

そして何より、心の余裕が生まれます。
闘病する本人にとっても支える家族にとっても、経済的不安から解放されることは、治療に専念できる環境を作る上で極めて重要です。

専門家のアドバイスの価値

知人は「自分はがんや病気にはならないだろう」と漠然と考えていたところ、保険営業担当者から「生活習慣からのリスクがある」と指摘され30代後半で加入したと言っています。
結果的に「まさに必要な条件を備えた保険」となりました。

「自分の判断だけだと何かしら思い込みが入ってしまう。保険の専門の方からのアドバイスは価値がある」というコメントは、多くの方に参考になる情報といえるでしょう。

まとめ

『まさか私が・・』という状況になることは、確率が低いですが起こりえることです。
発病してからではなんらかの手をうつことはできません。

統計データが示すとおり、30代〜40代女性は女性特有のがんのリスクが高い世代です。
育児期にがんに罹患すれば、その影響は家族全体に及びます。

がん保険は、健康なうちにしか加入できません。若いうちなら保険料も比較的安く抑えられますし、育児期を迎える前の加入がベストです。

保険は「自分のため」だけでなく「家族のため」の備え。子育て世代だからこそ真剣に考えるべき選択肢です。
未来の家族の笑顔を守るために、今できる準備を始めましょう。

金子 賢司

この記事の解説者:金子 賢司

東証一部上場企業(現在は東証スタンダード市場)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち社会保障の勉強を始め、CFP資格を取得。

以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。

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