高脂血症(脂質異常症)で通院中の方へ。治療費と医療保険加入のポイント
高脂血症は自覚症状がほとんどないため、健康診断で指摘されても放置しがちです。
しかし放置すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な合併症を引き起こすリスクが高まります。
本記事では、
・高脂血症の治療にお金がいくらかかるか
・医療費の負担を軽減する公的制度
・高脂血症と診断されてから医療保険加入
について解説します。
この記事の目次
高脂血症(脂質異常症)について
「高脂血症」とは、高LDLコレステロール血症・高中性脂肪血症の片方または両方に該当する状態を指します。
そして「脂質異常症」とは、高脂血症と低HDLコレステロール血症の両方を含んだ病名です。
いずれも、血液中の脂質の値が異常を示しているという点においては変わりありません。
初期段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断で初めて指摘されることが大半です。
放置すると血管壁に脂質が蓄積して動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる疾患を引き起こします。
治療の基本は生活習慣の改善であり、改善が不十分な場合は薬物療法が開始されます。
生活習慣の改善には以下のようなものがあります。
・食事療法
・運動療法
・禁煙
治療費はどのくらいかかる?
高脂血症の治療は長期にわたることが多いため、継続的な医療費について把握しておくことが大切です。
通常の通院治療にかかる費用と、万が一合併症を発症した場合の入院費用について説明します。
通院治療にかかる費用
通院治療では主にスタチン系薬剤による薬物療法が行われます。
3割負担の場合、月額の自己負担額は3,000円から8,000円程度です。
治療効果の確認のため3〜6ヶ月に1回血液検査が必要で、検査費用は3割負担で1回1,000〜2,000円程度です。
生活習慣病管理料を算定している医療機関では、診察・検査・投薬を含めて月額1,460点(3割負担で約4,400円)が標準的です。
合併症が発症した場合の費用
動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳梗塞を発症する可能性があります。
厚生労働省「令和5年度医療給付実態調査」によると、虚血性心疾患(急性心筋梗塞を含む)の入院では1入院あたりの医療費が約87万円(3割負担で約26万円)、脳梗塞では約73万円(3割負担で約22万円)と高額です。
ただし高額療養費制度により、実際の自己負担額は大幅に軽減されます。
年収370〜770万円程度の方の場合、月額の自己負担上限は8〜9万円台となり、多数回該当の場合は4回目以降4万4,400円に軽減されます。
出典:厚生労働省「令和5年度医療給付実態調査 データベース2」
医療費の負担を軽くできる公的制度
高脂血症の治療や合併症の治療では、公的な支援制度を活用することで医療費の負担を大きく軽減できます。
主な制度は以下の通りです。
①健康保険の高額療養費制度
②医療費控除
③特定保健指導
④傷病手当金
それぞれ詳しく解説していきます。
① 健康保険の高額療養費制度
合併症による入院や手術で医療費が高額になった際、最も重要な負担軽減策です。
1ヶ月間の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻されます。
70歳未満で年収約370〜770万円の方の月額上限は
8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%
とされています。
例えば医療費で160万円かかった場合、自己負担額は約9万4,000円が上限となります。
(事前に「限度額適用認定証」を取得すれば、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。)
② 医療費控除
1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告により所得税の還付や住民税の軽減が受けられます。
総所得200万円以上の方は年間10万円、200万円未満の方は総所得の5%を超えた医療費が控除対象です。
高脂血症の通院費用や投薬費用も対象で、生計を同じくする家族の医療費も合算できます。
仮に申告を忘れた場合でも、過去5年分まで遡って申告可能です。
③ 特定保健指導
40〜74歳を対象に、特定健康診査の結果に基づいて実施される健康支援プログラムです。
高脂血症を含む生活習慣病のリスクがある方に、保健師や管理栄養士が専門的な指導を行ってくれます。
健康保険組合が費用を負担するため、ほとんどの場合無料で利用できます。
④ 傷病手当金
業務外の病気で仕事を休み給与が支払われない場合、健康保険から支給される制度です。
合併症で入院し長期間休業する際に、生活保障として重要な役割を果たします。
連続3日間休業後、4日目から支給開始され、支給期間は通算最長1年6ヶ月です。
支給額は標準報酬日額の3分の2相当額です。
ただし会社員や公務員が対象で、国民健康保険加入者(自営業者など)は原則対象外となっています。
高脂血症でも入れる医療保険・生命保険はある?
高脂血症と診断された後でも、治療状況や健康状態によっては医療保険や生命保険に加入できる可能性があります。
通常の保険への加入が難しい場合でも、「引受基準緩和型の保険に加入する」という選択肢もあります。
診断後の保険加入の可能性
治療中でも、コレステロール値や中性脂肪値が安定していて合併症がない場合は、通常の医療保険に加入できる可能性があります。
投薬治療により数値がコントロールされていれば、条件付きまたは無条件で加入できるケースもあります。
定期的な通院と適切な治療により数値が改善傾向にある場合は、審査において有利に働くでしょう。
保険加入時の告知では、各コレステロール値と中性脂肪の具体的な数値を正確に申告します。
特に重要なのは直近の検査結果と過去の数値の推移です。
告知義務違反があると保険金が支払われない、または契約が解除される可能性があるため、必ず正確に告知してください。
引受基準緩和型保険の活用
通常の医療保険への加入が困難な場合でも、引受基準緩和型保険という選択肢があります。
告知項目が3〜5つ程度の簡単な質問に限定され、全てに「いいえ」と答えられれば加入できます。
一般的な告知事項は以下の通りです。
・直近3ヶ月以内に入院や手術を勧められていないか
・過去2年以内に入院や手術をしていないか
・過去5年以内にがんや肝硬変で治療を受けていないか
高脂血症で通院・投薬治療中でも、これらに該当しなければ加入できる可能性があります。
ただし通常の保険より保険料が割高で、加入から一定期間(通常1年間)は給付金額が削減される場合があるため、契約条件をご確認ください。
まとめ
高脂血症は放置すると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まりますが、高額療養費制度や医療費控除などの公的制度を活用することで医療費の負担を大きく軽減できます。
診断後でも、治療状況や健康状態によっては医療保険や生命保険への加入が可能です。
高脂血症の診断後の保険加入や経済的なサポートについて詳しく知りたい方は、お気軽に株式会社ウィズハートまでご相談ください。
