高血圧の治療費はいくら?公的支援制度と民間医療保険の活用法


高血圧は自覚症状がほとんどないため気付きにくく、脳卒中や心筋梗塞などの重大な合併症を引き起こすリスクがあります。
高血圧は慢性疾患であり、継続的な治療と管理が必要となります。
そのため、長期にわたる医療費負担が発生し、公的支援制度を活用することが重要です。
本記事では、高血圧治療にかかる実際の費用、利用できる公的支援制度、そして診断後の民間保険の活用法について詳しく解説します。
この記事の目次
高血圧はどんな病気?
日本高血圧学会の診断基準では、最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。
高血圧は自覚症状がほとんどないため「サイレントキラー」と呼ばれています。
しかし、放置すると脳卒中、心筋梗塞、腎不全などの重大な合併症を引き起こすリスクが高まるため、注意が必要です。
高血圧は日本人にとって最も身近な生活習慣病の一つで、継続的な治療が必要となります。
高血圧治療にかかるお金の実際
高血圧の治療は長期にわたるため、医療費の負担を正しく理解しておくことが重要です。
治療費は病状の進行度や服用する薬の種類によって変動しますが、基本的な治療から合併症が発生した場合まで、実際にかかる費用について解説します。
基本的な治療にかかる費用
高血圧の治療では、降圧薬の服用が中心となります。
第一選択薬として用いられるカルシウム拮抗薬やARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)などの降圧薬は、1日1回の服用が一般的です。
健康保険組合の統計データによると、高血圧症による1カ月あたりの医療費は約1万6,600円(10割負担)となっています。
3割負担の場合、実際の自己負担額は月額約5,000円程度です。これには再診料、医学管理料、処方箋料、薬剤費などが含まれます。
降圧薬をジェネリック医薬品に変更すれば、薬剤費を2〜7割程度抑えることができ、さらに医療費負担を軽減できます。
合併症が出た場合の治療費
高血圧を適切に管理せず、脳卒中や心筋梗塞などの合併症を発症した場合は、医療費が大幅に増加します。
脳卒中や心筋梗塞で入院・手術が必要となった場合、医療費総額(10割負担)は数十万円から100万円程度に達することもあります。
また、慢性腎臓病(CKD)が進行して人工透析が必要となった場合、年間の医療費は約500万円程度と高額になります。
(ただし、後述する高額療養費制度により、実際の自己負担額は所得に応じた上限額までに軽減されます。)
高血圧治療で利用できる公的支援制度
高血圧の治療では、継続的な通院と服薬が必要となるため、医療費の負担が長期間続きます。
しかし、公的支援制度を活用することで、経済的負担を大きく軽減することが可能です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1カ月(月初から月末)にかかった医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた金額が払い戻される制度です。
自己負担の上限額は年齢と所得区分によって異なり、69歳以下の方の所得区分別自己負担上限額は以下の通りです。
| 所得区分 (年収目安) | 自己負担限度額 |
|---|---|
| 年収約1,160万円以上 | 252,600円 + (総医療費 - 842,000円) × 1% |
| 年収約770万〜約1,160万円 | 167,400円 + (総医療費 - 558,000円) × 1% |
| 年収約370万〜約770万円 | 80,100円 + (総医療費 - 267,000円) × 1% |
| 年収約370万円未満 | 57,600円 |
| 住民税非課税世帯 | 35,400円 |
たとえば、年収約500万円の方が脳卒中で入院し、医療費総額が100万円(3割負担で30万円)かかった場合、自己負担上限額は87,430円となり、差額の21万2,570円が払い戻されます。
また、過去12カ月間に3回以上高額療養費の支給を受けている場合は「多数回該当」として、4回目からはさらに自己負担上限額が軽減されます。
入院が予定されている場合は、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、医療機関の窓口での支払いを自己負担上限額までに抑えられます。
医療費控除
医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告により所得控除を受けられる制度です。
控除対象となる医療費の額は、以下の計算式で算出されます。
【計算式】
医療費控除額 = 1年間に支払った医療費の合計額 – 保険金などで補填される金額-10万円(または総所得金額等の5%)
(総所得金額等が200万円以上の方は10万円を、200万円未満の方は総所得金額等の5%を差し引いた金額が控除対象となります。)
医療費控除の対象には、通院にかかった公共交通機関の交通費も含めることができます。
確定申告の際には、医療費控除の明細書を作成し、確定申告書に添付する必要があります。
高血圧患者は民間の医療保険に加入できる?
公的支援制度によって医療費負担は軽減されますが、入院時の差額ベッド代や通院時の交通費など、公的制度でカバーされない費用も発生します。
また、合併症の進行により就労が制限された場合の生活費など、医療費以外の経済的リスクにも備える必要があります。
ここでは、高血圧と診断された方が民間保険とどのように向き合うべきか解説します。
高血圧と診断されてからも加入できる医療保険は?
高血圧の診断を受けた場合、通常の医療保険への新規加入が困難になる可能性があります。
診断後でも加入を検討できる保険として、告知緩和型医療保険(引受基準緩和型医療保険)があります。
告知緩和型医療保険は、通常の医療保険と比べて告知項目が少なく、健康状態に不安がある方でも加入しやすい保険です。
一般的な告知項目は3〜4項目程度で、『最近3カ月以内に医師から入院・手術をすすめられたことがある』『過去2年以内の入院・手術歴』『過去5年以内にがん・肝硬変などで医師の診察・検査・治療・投薬を受けたことがある』などが主な内容となります。
ただし、保険料は通常の医療保険より割高に設定されているため、保障内容と保険料のバランスを慎重に検討する必要があります。
また、加入後一定期間(通常1年間)は保障額が削減される商品もあるため、契約前に詳細な条件を確認しましょう。
弊社ウィズハートでは高血圧をお持ちの方でもご加入いただける保険がございますので、ご興味のある方はお気軽にお問合せください。
■ ウィズハートへの保険のご相談はこちら
診断前から加入していた保険があったら
診断前に加入していた医療保険は、高血圧の治療でも給付対象となります。
保障内容を確認し、適切に活用することが重要です。
保障内容の確認ポイント
既に加入している医療保険については、以下の内容を確認しておきましょう。
・入院給付金の日額と支払日数限度
・手術給付金の対象範囲と給付倍率
・通院給付金の有無と条件
・三大疾病特約や生活習慣病特約の有無
診断前に加入していた保険であれば、高血圧による合併症での入院や手術でも給付金を受け取ることができます。
給付金請求のタイミング
脳卒中や心筋梗塞などの合併症で入院した場合や手術を受けた場合は、速やかに保険会社に連絡して給付金を請求しましょう。
請求には医師の診断書が必要となります。
継続の重要性
診断後は、既存の保険を安易に解約しないことが大切です。
一度解約すると、高血圧の診断歴があるため再加入が困難になる可能性が高くなります。
保障内容を十分に活用し、長期的な視点で保険の活用方法を考えましょう。
家族全体で備えるという考え方
本人の保険加入が難しい場合は、家族の保障を充実させることで世帯全体のリスクに備える方法もあります。
配偶者や子どもの医療保険を手厚くしておくことで、万が一の際の経済的負担に対応しやすくなります。
高血圧には遺伝的要因もあるため、家族歴がある場合は早めの対策が重要です。
健康なうちに保険加入しておく大切さ
高血圧を含む生活習慣病は、一度診断されると保険加入が難しくなります。
健康状態が良好なうちに医療保険に加入しておくことで、将来のリスクに備えることができます。健康診断で異常が指摘された場合は、再検査を受けて結果を確認してから保険加入を検討することが重要です。
まとめ
高血圧は20歳以上の日本人の約2人に1人が該当する身近な生活習慣病で、長期的な治療が必要となります。
基本的な治療にかかる費用は月額約5,000円程度(3割負担)ですが、合併症が発生すると医療費は大幅に増加します。
高額療養費制度を活用することで、所得に応じた自己負担上限額までに医療費を抑えることができます。
また、年間の医療費が10万円、もしくは総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%のうちいずれか低い金額を超えた場合は、医療費控除により所得税の還付を受けられます。
民間保険については、診断後の新規加入は困難になる可能性が高いため、既存の保険は安易に解約せず保障内容を十分に活用しましょう。
診断後でも告知緩和型医療保険など加入できる選択肢はありますが、保険料が割高になる点に注意が必要です。
弊社ウィズハートでは高血圧をお持ちの方でもご加入いただける保険がございますので、ご興味のある方はお気軽にお問合せください。
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この記事の執筆者:木代 晃輔
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
独立後は株式会社ウィズハートの代表として、保険相談サイト「保険ウィズ」や、FP相談サイトを開設。
15年以上にわたって生命保険・損害保険の仕事に従事し、北は北海道、南は沖縄までと、日本全国から年間100件以上のご家庭の保険相談にお応えしています。
