FP・識者の保険コラムExpart Column

タイの現地病院に聞いた「海外旅行保険は入るべき?カード付帯保険で足りる?医療費が支払えないとどうなる?」

更新日:2025年08月07日

タイの現地病院に聞いた「入るべき海外旅行保険は?カード付帯保険で足りる?もしも医療費が支払えないときは?」

日本からの渡航者が年間100万人を超える人気旅行先であるタイ。
観光やアクティビティが豊富な一方で、タイでは交通事故や食中毒、病気やケガなど日本人がトラブルに遭遇するリスクも少なくありません

日本とは異なり、タイには国民皆保険制度がなく、タイ国民も自由診療が一般的です。
そのため、病院によって規模・設備・サービスに応じた受診料の差があります。

特に、外国人を受け入れられる設備と、世界基準の医療機器を備えた病院では、診療費が高額になることがほとんどです。
滞在期間にかかわらず、海外旅行保険への加入は必須と言えるでしょう。

今回は、多くの日本人が利用し、日本人専門クリニックも併設するタイ最大規模の私立病院「バンコク病院」で、
・タイの医療費事情
・加入すべき海外旅行保険
・クレジットカード付帯保険の実際
・無保険時の対応
・医療費不払い防止策

について、日本の看護師資格を持つ日本人医療コーディネーターに詳しく伺いました。

サードパーティー保険

近年、世界的に医療費が上がっていますが、タイの医療費はどうでしょうか?

バンコク病院ではそれほど大きな値上げはしていません。
実際に風邪などの一般診療費や入院費は、数年前からそれほど変わっていないのが現状です。

物価上昇の影響は確かにありますが、当院では急激なインフレは感じていません。

その背景には、バンコク病院をはじめとするBDMSグループ(※)による、次のようなコスト管理体制があります。
※BDMS(バンコクドゥシットメディカルサービシズ)は、バンコク病院などを傘下に持つタイ最大の民間医療機関グループ。
ASEAN最大級の医療ネットワークを持ち、医療ツーリズムのハブともなっています。

  • 薬品や医療機器を自社で仕入れ・流通管理し、価格を安定化
  • 通訳サービスや救急搬送をすべてグループ内で対応し、外部委託コストを削減
  • タイ最大級の医療グループならではのスケールメリット(薬品やサービスをグループ全体でまとめ、コストを抑える工夫)

こうした仕組みにより、過度な価格上昇は抑えることが出来ています。

日本人旅行者によくあるトラブルを教えてください。

日本人旅行者が遭遇しやすいトラブルや事故のTOP3は以下です。

食中毒・胃腸炎

タイでは加熱が不十分な料理や不衛生な氷が原因で、食中毒や胃腸炎、下痢を起こす日本人は珍しくありません。
火が通った料理を選び、慣れない辛さの料理は控えめにすることをおすすめします。

転倒・つまずき事故

年配者に多いのは遺跡や観光地での転倒です。
タイの遺跡は整備されているとはいえ、急な階段や滑りやすい場所が多く、特に雨の日は注意が必要です。

逆に、若い人に多いのは歩きスマホ中の転倒です。
タイの歩道は段差が大きく、つまづきによるケガが多発しています。
プールやホテルのユニットバスでの転倒も珍しくありません。

バイク事故

タイでは交通マナーが日本と大きく異なり、レンタルバイクやバイクタクシー(モタサイ)の事故が非常に多いです。

特に、
・無免許運転
・ノーヘルメット

この2つは、保険適用外になる可能性が高いため要注意です。
借りられたからといって安心せず、必ず適切な免許・ヘルメット着用を心がけましょう。

加入している海外旅行保険(保険会社)によって対応差はありますか?

「自分の保険でもきちんと対応してもらえるのだろうか?」
海外で病院を受診する際、そのような不安を抱える方も少なくありません。

バンコク病院では保険会社ごとに対応方針の違いがありますが、医療サービスの質に差が出ることはありません。

実際、キャッシュレス対応の条件や必要書類、連絡の流れなどは保険会社によって異なりますが、当院の保険チームでは各社それぞれの特徴をしっかりと理解しながら、患者様が安心して治療を受けられるよう、できる限りスムーズに対応することを心がけています。

特定の保険会社を優遇・冷遇することはなく、どの保険会社でも公平に対応しています。

また、バンコク病院には、日本のアシスタンス会社「プレステージ・インターナショナル」の窓口も常設されています。
日本の主要な海外旅行保険会社と提携しており、手続きや通訳、キャッシュレス手続きのサポートを行っているため、日本人旅行者が安心して利用できる環境が整えています。

プレステージ・インターナショナル

日本の保険会社と外国の保険会社、海外旅行保険に違いはありますか?

当院には、サードパーティー保険を扱う専門部署があり、どの保険をご利用の患者様にも、同じ基準で公平にご案内しています。

ただ、確かに海外旅行保険の種類によってはいくつかの違いがあります。

たとえば日本の保険会社は、日本人向けに設計された補償内容や、キャッシュレスサービスに対応できる体制が整っていることが多く、病院とのやり取りや手続きも比較的スムーズです

ただし、保険の適用可否は最終的に保険会社の判断となるため、病院が請求手続きを行った後に審査が実施されます。
その結果、既往症に関連する検査や処方薬については、後日に患者様にご負担いただく場合もあります。

一方、日系以外の外国保険会社(医療保険を含む)の場合、キャッシュレスサービスの可否や、保険の対象となる検査・処方薬の範囲が保険会社や加入しているプログラムで異なるため、確認や手続きに時間を要することがあります。

いずれの保険にも特長があるため、ご加入の際には、補償内容や利用方法を十分に確認し、ご自身に合った保障を選ぶことが、安心して医療を受けるための大切な備えとなります。

当院からのアドバイスは、「長期滞在はもちろん、短期のご旅行であっても、万が一に備え、任意の海外旅行保険へご加入いただくこと」をおすすめいたします。

カード付帯保険があれば十分ですか?無保険だとどうなりますか?

海外旅行の際、「とりあえずクレジットカード付帯保険があるから大丈夫」と考えている方も多いのではないでしょうか。

軽い食中毒や転倒などの軽症であれば、カード付帯保険でも十分にカバーできますが、注意したいのは、

  • ICU(集中治療室)への入院
  • 手術が必要な場合
  • 医療搬送(救急車・他施設への転院)

といった重症時です。
300万円程度の補償額では足りなくなるケースが少なくありません

特に医療搬送やICUが絡むと、想像以上の高額になることがあります。

そのため、たとえ短期旅行でも、
「掛け捨ての海外旅行保険に加入しておくのが安心です。」
というのが病院側からのアドバイスです。

さらに、無保険の場合はどうなるのか。
実際にあった事例としては、

  • デポジット(前払い金)が払えず、治療を断念した
  • 友人から急きょお金を借りて支払った
  • タイでの治療を諦めて、一時帰国して治療した

などがあります。
病院としても人命救助は最優先ですが、保険がなければ費用負担は大きくなります。

医療費不払いを防ぐためのデポジット(保証金)について

日本でも社会問題化している、外国人旅行者による医療費の不払い。
タイでは、こうしたトラブルを防ぐために、治療前にデポジット(保証金)を求めるのが一般的です。

バンコク病院では、キャッシュレスサービスに対応した海外旅行保険にご加入の場合、発生した医療費を原則として病院が保険会社へ直接請求するサポートを行っております。
ただし、すべてがキャッシュレス対応とは限らず、また保険会社の承認が得られない場合や、症状・治療内容によっては、デポジット(保証金)や自己負担分が必要となることがあります。

受診前に、ご自身の保険の補償内容やキャッシュレス対応の可否をご確認いただくことをおすすめいたします。

インタビューをしたバンコク病院の情報


バンコク病院公式サイト(日本語)
日本人専門クリニック(JMS)|W棟2階
・日本人窓口電話番号:+66 2 310 3257

あわせて読みたい関連記事

タイ旅行中に日本人が遭遇しやすいトラブルや、実際に入院した場合の流れ、保険でカバーできる範囲について、タイ旅行情報ブログ「タイ一択」でも詳しく紹介しています。

保険の備えに不安がある方やリアルな体験談を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
タイ旅行中の“もしも”に備える!バンコク病院×海外旅行保険×キャッシュレス受診ガイド|タイ一択

伊藤良二

この記事の執筆者:伊藤良二(いとう りょうじ)

ライター・ブロガー
バンコク在住。タイ情報ブログ『タイ一択』運営。タイ国政府観光庁公式サイトでも紹介され、ホテルや飲食店の現地取材・レビューを多数手がける。リゾートバイト派遣大手のオウンドメディア『リゾバマガジン』などにも寄稿し、取材と執筆を中心に活動中。現地の空気感を伝える発信にこだわり、暮らしのなかで見える“リアルなタイ”を届けている。
X:@AsiaThailand208
Instagram:ri_asiajapan

海外旅行保険のご相談・加入はウィズハートにお任せください。

株式会社ウィズハートでは15年以上にわたって海外旅行保険の仕事を行ってきました。

代表の木代(きしろ)は、損害保険会社で保険商品を開発する仕事も経験しています。
万が一のときにはお客様をサポートし、安心して旅行を楽しんでいただくことを願って、この仕事を長年続けています。

もし海外旅行保険のことでお問合せやご相談がございましたらお気軽にご連絡ください。
ウィズハートの海外旅行保険