FP・識者の保険コラムExpart Column

J.D.パワー社の自動車保険調査から伺える各社の自動車保険販売戦略

投稿日:2017年08月01日

J.D.パワー アジア・パシフィックが、
・「2017年日本自動車保険新規加入満足度調査(以下、新規加入調査)」と
・「2017年日本自動車保険契約者満足度調査(以下、契約者調査)」
の結果を発表しました。

「新規加入調査」は自動車保険(任意保険)に加入する顧客のうち、過去2年以内に契約先の保険会社に事故連絡(保険金請求)をした人を対象に、
①保険会社の事故対応
②保険金支払の実態
③事故対応や保険金支払全般に対する顧客満足度
を測定する調査です。

一方の「契約者調査」は自動車保険(任意保険)の契約者(既存契約者)を対象に、
①契約保険の内容
②契約期間中の自動車事故保険金請求時の対応
③各種手続きや問合せ時の保険会社・代理店の対応実態
など自動車保険契約期間中の全般に対する顧客満足度を測定する調査となり、毎年発表されています。

2つの調査結果を分析してみて分かること

「新規加入調査」と「契約者調査」を比較すると、「代理店系保険会社」と「ダイレクト系保険会社」で以下のような傾向が見えてきます。

■代理店系保険会社
・代理店系保険会社のうち、特に3メガと呼ばれる大手3グループは「新規加入調査」「契約者調査」ともに満足度が低くくなりました。特にあいおいニッセイ同和は両調査で平均を下回っています。
・「新規加入調査」で顧客満足度が一番高かった朝日損保が「契約者調査」では最下位でした。「保険料が低価格である」ことは高評価されているものの、「顧客対応」や「事故対応」での低評価が「契約者調査」で最下位となった原因かもしれません。

■ダイレクト系保険会社
・「新規加入調査」で顧客満足度の上位であるセゾン自動車とイーデザイン損保は「価格」で非常に高い評価を得ている一方、「契約者調査」で顧客満足度が一番高かったソニー損保は「価格」面での低評価が「新規加入調査」での低い満足度に繋がっているようです。
・ダイレクト系保険会社の場合、ウェブサイトのリニューアル状況と「契約チャネル」の評価には連動性がありそうです。
以下に各保険会社のプレスリリースからサイトのリニューアル時期をまとめてみました。
各社とも直近でWebサイトの改善・リニューアルを行っており、ダイレクト系自動車保険の販売のためにユーザーが使いやすいHPがいかに重要であるかが伺えます。

【各社のウェブサイトのリニューアル時期】
2016年12月 イーデザイン損保
2016年4月 セコム損保
2016年4月 アメリカンホーム
2016年1月 SBI損保
2015年9月 アクサ損保(スマートフォンサイト)
2015年3月 そんぽ24
2014年12月 三井ダイレクト損保
2014年9月 アクサ損保(ウェブサイト)
2013年9月 チューリッヒ保険

わかりやすい情報提供が満足度向上のキーに

今回の調査結果から、代理店系保険会社では保険募集人という担当者を介した顧客との接点を重視し、一方でダイレクト系保険会社ではWebサイトのような顧客への直接的な情報発信ツールを重視し、各保険会社がそれぞれの強みを活かして取り組んでいる様子が読み取れます。

昨年5月の保険業法の改正で求められるようになった「顧客が保険商品を選定するために十分でわかりやすい情報」をいかに提供し、顧客の理解を得られるかが、契約の満足度を高め、長期契約に繋がるキーとなっているようです。