海外旅行保険、家族で「別々の保険会社」にするのは良い?専門家が教えるデメリット

海外旅行にいくときに入る海外旅行保険。
その加入の方法で、「持病がある父はA社」「健康な子供は安いB社」というように、家族間で異なる保険会社への加入を検討されるケースがあります。
一人一人に最適なプランを選べるため一見合理的に見えますが、実は現場の専門家としてはお勧めできない大きなリスクが潜んでいます。
15年以上の経験を持つ海外旅行保険のプロとして、そのメリットとデメリット、そしてプロとしての結論を解説します。
この記事の目次
「家族バラバラ」の加入検討の事情
家族といっても、メンバーの年齢や健康状態は様々です。
例えば、高齢の方は年齢制限で加入できる商品が限られたり、持病(既往症)がある方は持病向けの補償を付けると保険料が高くなることがあります。
一方で、若くて健康な人は健康リスクが比較的低いため、特に吟味せずにネット専用の格安保険で十分な場合も多いです。
全員を同じ保険会社・同じ保険条件に合わせようとすると、「誰かが割高になる」あるいは「誰かが保険条件が過剰になる」ということが起きるため、人によって保険会社を分けるという選択肢が浮上します。
家族間で保険会社を別々にするメリット
最大のメリットは、やはり価格を抑えられる点です。
持病がある人: 持病の悪化までカバーする手厚い保険会社を選択
健康な人: 最低限の補償で、保険料が最安値の保険会社を選択
このようにメンバー個々にベストな保険を組み合わせることで、家族全体での保険料総額を数千円~数万円単位で節約できることもあります。
家族間で保険会社を別々にする「2つのデメリット」
しかし、その節約メリットの裏には、実際にトラブルが起きたときに初めて気づく、重大なリスクがあります。
1. 家族同時の事故で「バラバラの病院で入院」になるリスク
最も懸念されるのが、例えば同じレストランで食事をして食中毒になるなど、家族全員が同時に体調を崩した場合です。
海外旅行保険の便利な機能である「キャッシュレス治療」は、各保険会社が提携している病院で利用可能になります。
しかし、提携病院ネットワークは保険会社によって異なります。
その結果、「父はA病院ならキャッシュレス、母と子はB病院ならキャッシュレス」という事態が起こり得ます。
体調が悪い中、言葉の通じない異国で家族が別々の病院へ移動するのはとても困難ですし、もしすぐにでもキャッシュレス治療が必要という場合には最悪別々の病院に入院することになります。
お互いの看病もできず、安否確認すらままならない状況は、精神的にものすごく大きな負担となります。
2. 手続きや連絡が「倍の手間」になるリスク
他には、飛行機の遅延や手荷物紛失、交通事故など、家族全員が巻き込まれるトラブルの際も厄介です。
保険会社が同じなら代表者一人が連絡すれば済みますが、別々の場合はそれぞれの保険会社へ連絡し、同じ事故説明を繰り返さなければなりません。
航空会社や警察から取り付ける「証明書類」も、会社ごとに手配が必要です。
原本が1部しか手に入らない場合、「原本証明付きのコピー」を認めてもらうよう交渉する手間がかかり、緊急時のストレスが増してしまいます。
海外旅行保険のプロとしての結論
15年以上この仕事に携わってきた結論としては、
「家族旅行では、可能な限り『同じ保険会社』に統一して加入するべき」
です。
海外旅行保険は、万が一の事故や病気に備える「命綱」です。
平穏な時は「掛け捨て」に感じるかもしれませんが、保険に入るのは「最も困ったとき、パニックになっているとき」のためです。
トラブル発生時、「この番号に一本電話すれば、家族全員のことをすぐに手配してくれる」というシンプルさと安心感は、多少の保険料差額よりもずっと価値があります。
スムーズに不安なく医療サービスを受け、家族が離れ離れにならずに危機を乗り越えるためにも、保険会社をわけることなく同じ保険会社で加入されることをお勧めします。

この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。
