糖尿病患者さんの指導事例「1型糖尿病のRちゃん」
最終更新日:2021/08/01
この指導事例の記事は漫画版もあります。
【漫画】糖尿病患者さんの指導事例「1型糖尿病のRちゃん」
新人の頃に気付かされた患者さんの気持ち
まだ新人看護師としてできる事も少なくて、糖尿病の事もよくわかっていなかった15年前。インスリンポンプもCGMのような自動で血糖値を測ってくれる機械も一般的ではなかったそんな少し昔のお話です。
ある時、Rちゃんという10歳くらいの女の子が入院し、私は彼女の担当看護師になりました。
彼女は1型糖尿病と診断されてインスリンの注射や血糖測定の練習のために入院をしてきました。
実はRちゃんのお姉ちゃんも1型糖尿病で、お母さんはお姉ちゃんや兄弟のお世話の為に付き添う事ができませんでした。
これからの人生を糖尿病とともに生きていく為に、ある程度自分で身の回りの事ができるような年齢になったらインスリン注射や血糖測定を自分でできるように、長期休みを使って練習入院される子供さんがたくさんいらっしゃいました。
Rちゃんもそんな一人です。
お母さんの付き添いがなくても明るいRちゃん。早く退院したいと練習を頑張っていました。
ある時のこと
新人の私とぬいぐるみを使いながら、インスリンの針のセットや注射の練習をしていたRちゃんがこんなことを言いました。
「あと何回注射しないといけないの?」
「もう嫌だ・・」
1型糖尿病である事をちゃんと理解していたし、お姉ちゃんを見ていて1型糖尿病の大変さをよく知っていたRちゃん。
泣き言も、わがままも言わずに、一生懸命練習していて頑張り屋さんだと看護師も医師も思っていました。
Rちゃんは自分も糖尿病だって言われてショックだった事、お母さんもお父さんも悲しんでいて自分も悲しかった事、お姉ちゃんみたいに低血糖になったり学校でも大変になるから学校に行きたくない事、いじめられるかもしれない事、看護婦さんは頑張ってるねって褒めてくれるけど注射なんてしたくない事。
本音をたくさん話してくれました。
その時の私は何も答えられずに、ぽろぽろと泣くRちゃんの手の握って、頭を撫でて、落ち着くまで一緒にいる事しかできませんでした。
糖尿病患者さんにとって大切な事は「血糖測定」や「インスリン注射」がちゃんとできる事だと思っていた私に、Rちゃんの話してくれた言葉はココロに刺さりました。
見た目の技術ができるようになることと、「糖尿病」という病気を抱えながら生きていくことは本当は全然違うのだという事。
たった10歳の女の子が、自分の病気の事、周囲の人の事を考え病気と向き合っているという現実。たくさんの事に気づかされ、患者さんの気持ちに寄り添う事の大切さに気づくきっかけになりました。
Rちゃんはその後も「ねぇ、今日の担当さん?」「ゲームしようよ」など変わらずに私に話しかけてくれました。
実はその言葉は、明るくてしっかりものの、彼女なりの話したい・甘えたい・構ってほしいサインだったのです。
今までRちゃんはそういうサインを出してくれていたのに私が気づけていなかっただけ。
そういう時にRちゃんとちゃんと向き合って話をすると、気になっていることや悩んでいることなど本音をたくさんお話してくれました。
本当に大切なことは?
糖尿病療養指導士になった今の私だったら・・・。彼女に何か違うことができたのでしょうか?
彼女が同じように話をして涙を流したら、今の私も同じように彼女のそばにいるのだと思います。
今の私が新人の頃と違うのは、Rちゃんやたくさんのこどもたち、その後の大人の糖尿病患者さんから学んだ経験です。
病気になってしまった事、糖尿病とこの先の人生を生きていかなければいけない事、注射なんてしたくない事、患者さんは医療者には言わなくても沢山悩んでいます。
そのことを経験から学び、時間とともに変わる患者さんの考えや気持ち、病気とともに歩んでいく人生に興味を持つようになり、それに寄り添っていきたいと思うようになりました。
私も少しずつ変わっていきました。
Rちゃんが気づかせてくれなかったらヘモグロビンA1cと血糖値の話だけして、患者さんを一方的に怒ってしまう看護師になっていたかもしれません。
看護師として本当に大切なことは、病気とどうやって向き合うか、生きていくか・・・。
悩んでいる患者さんの人生を見守りながら、時には叱咤激励したり、おせっかいなくらいサポートできる様に常にスタンバイしている事だと思っています。
15年も経験を積んでもなお、初めて経験するような症例やビックリする出来事があって、糖尿病患者さんとのお付き合いは楽しいなぁと思う場面がたくさんあります。
これからも沢山の患者さんと出会い、沢山お話をして気持ちに寄り添っていく事を大切にしたいと思っています。
この記事の執筆者:現役看護師 小田あかり
看護師として、腎臓・循環器、糖尿病に関する業務を多くこなし、糖尿病患者さんの指導も行っています。
多数の学会発表の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。
主な所有資格:糖尿病療養指導士、呼吸療法認定士、透析学会認定など
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