現役の糖尿病療養指導士が書く糖尿病コラムdiabetes-column

糖尿病の合併症「えのき」と「しめじ」。糖尿病患者が気を付けること。

公開日:2021/07/30
最終更新日:2021/08/01

「糖尿病の患者さんは、コロナで重症化しやすい」
こんな話を耳にした方も多いでしょう。

糖尿病は新型コロナウイルス感染症だけでなく、さまざまな病気を引き起こすリスク因子と言われています。

今回は糖尿尿合併症について、
「糖尿病の合併症ってなに?」
「自分は合併症になりやすいの?」
と思う糖尿病患者さん向けに、現役看護師の小田あかり(糖尿病療養指導士)が解説していきます。

現役看護師 小田あかり

この記事の執筆者:現役看護師 小田あかり

看護師として、腎臓・循環器、糖尿病に関する業務を多くこなし、糖尿病患者さんの指導も行っています。
多数の学会発表の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。

主な所有資格:糖尿病療養指導士、呼吸療法認定士、透析学会認定など


糖尿病合併症ってなに?

合併症とは「ある病気が原因で発症する病気」のことで、糖尿病合併症とは「糖尿病が原因で発症する病気」です。

誰もが合併症を発症するわけではありません。生涯にわたって合併症を発症しない人もいますし、その程度には差があります。

実は、糖尿病患者さんの合併症は「糖尿病であること」よりも「血糖コントロールがうまくいっていないこと」が原因のことが多いです。

血糖コントロールが悪いとなぜいけないの?

血糖値が高い状態が継続すると、血管がつねにブドウ糖にさらされ、炎症を起こしてしまいます。
その状態が長く続くと血管はダメージを受け、硬くなったりもろくなったり、詰まりやすくなってしまいます。

神経障害は、ブドウ糖が変化した物質が神経細胞の中にくっついて、神経の働きが鈍くなるために症状が出現し、さまざまな合併症を引き起こす原因となります。

糖尿病は、どのような合併症が起きるのか?

糖尿病の合併症は、全身に起きることが分かっています。

3大合併症 『しめじ』

糖尿病の合併症には3大合併症と呼ばれるものがあります。

・糖尿病性神経障害
・糖尿病性網膜症(目の病気)
・糖尿病性腎症(腎臓病)

この3つは、
神経障害 = し
網膜症 = め
腎症 = じ
の1文字ずつをとって、糖尿病合併症の「しめじ」と呼んでいます。
発症するのは『し→め→じ』の順であることが多いのも、最近の研究でわかっています。

微小血管障害と大血管障害

他に代表的な合併症は「微小血管障害」と「大血管障害」です。

血管自体が持つ弾力性や酸素や栄養の運搬が上手にできなくなり、細い血管が障害され徐々に血流が悪くなっていきます。
これらの細い血管に病気を引き起こすことを「微小血管障害」とよんでいます。

さらに、ダメージを受けているのは細い血管だけではありません。
心臓や脳などの大きい血管も徐々にもろくなり、脳梗塞や心筋梗塞などを発症するリスクが健康な人と比べて3~5倍高くなります。
このように太くて、重要な血管に病気を引き起こしてしまうことを「大血管障害」とよんでいます。

そのほかの合併症

ほかにも以下のような合併症があります。

・アルツハイマー型認知症は2.1倍、脳血管認知症は1.8倍発症リスクが高くなります
・肺炎や膀胱炎などの感染症にかかりやすい
・感染症にかかると治りにくい
・傷ができると治りにくい
・骨粗しょう症など骨がもろくなりやすく、約2~4倍骨折しやすい
・勃起不全(ED)になりやすい

「えのき」もある糖尿病合併症

さきほど、糖尿病の3大合併症を「しめじ」と呼ぶとご紹介しました。

実は、糖尿病の合併症には『えのき』もあるんです。
えのきは
え:壊疽(えそ)
の:脳血管障害(脳梗塞)
き:狭心症・心筋梗塞などの冠動脈疾患
などの大血管障害にまつわる合併症です。

えのきもしめじも発症してしまうと、一生涯にわたって治療が必要になる病気ばかり。
治療費も絶えずかかり、家計への負担がとても大きくなります。

合併症によっては後遺症や死の危険も伴うので、糖尿病は合併症にならないようにすることが大切なのです。

「血糖値やヘモグロビンA1cを適切な範囲に保ちましょう」

医師や看護師から、うるさく感じるくらいに言われていませんか?

なぜ医師や看護師が、うるさいくらいに言うのか考えた事はありますか?

これは、合併症を防いで、糖尿病があっても健康で長生きして欲しいから。
高齢化の現代では、糖尿病と診断されてから亡くなるまでの罹病期間が長い患者さんが増えています。

血糖値やヘモグロビンA1cが高くても、今は問題がないでしょう。
しかし、血糖コントロールが悪く、ヘモグロビンA1cや血糖値が高い患者さんは、そうでない患者さんと比べて、糖尿病合併症の発症率が2倍以上高くなることがわかっています。
年をとってから、脳梗塞や心筋梗塞などの命に直結する病気になったり、障害が残ったりするリスクが高くなります。

自分の足で元気に歩いてイキイキとした老後を送るためにも、患者さんには血糖値・ヘモグロビンA1cを適切な値に保ってほしいと医師・看護師は思っています。

合併症は少しずつ、静かに進行していきます。
・ご自身の合併症がどれくらい進行しているか心配
・どうやって合併症を予防したらいいの?
こんな心配を抱えている糖尿病患者さんは、ぜひ医師や看護師に相談してください。

糖尿病になってからの経過、各種検査データ、身体症状から、あなたの心強いサポーターになってくれると思います。

現役看護師 小田あかり

この記事の執筆者:現役看護師 小田あかり

看護師として、腎臓・循環器、糖尿病に関する業務を多くこなし、糖尿病患者さんの指導も行っています。
多数の学会発表の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。

主な所有資格:糖尿病療養指導士、呼吸療法認定士、透析学会認定など

糖尿病の悪化や合併症発症には保険での備えを。

糖尿病をお持ちの方に特に気を付けていただきたいのはやはり合併症です。
もし合併症が発症すれば生活・家計への影響が大きくなることもあり、それへの対策として保険はとても有効な手段です。

特に今は新型コロナという新しい病気が出てきており、糖尿病の方の健康リスクはさらに大きいものとなりました
もしまだ医療保険に未加入の方がいらしたら保険加入をお勧めしたいです。

当サイト「保険ウィズ」では、糖尿病の方向けの医療保険・生命保険を比較できるページを用意していますので、ぜひご参照ください。
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