現役の糖尿病療養指導士が書く糖尿病コラムdiabetes-column

現役看護師が解説する『3分でわかる糖尿病網膜症の基本』

公開日:2021/09/15
最終更新日:2021/09/16

日本の糖尿病患者は約1000万人、予備軍を含めると2000万人といわれ、年々増加しています。

糖尿病は合併症が怖い病気です。

糖尿病患者さんは、血糖コントロールが悪いと、全身の血管がもろくなります。
目の血管がもろくなると「糖尿病網膜症」という合併症を発症するリスクが高くなります。

では、糖尿病網膜症とはどのような病気なのでしょう。
今回は「3分でわかる糖尿病網膜症」をテーマに、現役看護師で糖尿病療養指導士の小田あかりがわかりやすく解説していきます。

現役看護師 小田あかり

この記事の執筆者:現役看護師 小田あかり

看護師として、腎臓・循環器、糖尿病に関する業務を多くこなし、糖尿病患者さんの指導も行っています。
多数の学会発表の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。

主な所有資格:糖尿病療養指導士、呼吸療法認定士、透析学会認定など


糖尿病網膜症の基本

糖尿病網膜症の治療1

みなさんは糖尿病網膜症がどのような病気か知っていますか?

「目の病気」
「失明するかもしれない病気」
「自分は大丈夫」

糖尿病網膜症のことをお話すると、多くの患者さんがこのようにおっしゃいます。

実は、ほとんどの糖尿病患者さんが糖尿病網膜症を詳しく知りません。
ここからは、患者さんから質問が多い項目に絞って、一つひとつ解説していきます。

糖尿病網膜症はどのような病気ですか?

糖尿病網膜症は糖尿病が原因でおこる目の病気です。
目の奥にある網膜の血流が悪くなったり、こぶのようになったり、酷くなると出血します。

糖尿病網膜症が酷くなると、ごくまれに失明することがあります。

どのような症状が現れますか?

糖尿病網膜症の治療2

糖尿病網膜症の初期は自覚はありません。
ただ、病気が進行すると以下の症状が現れます。
・目がかすむ
・飛蚊症が酷くなる
・視力の低下を自覚する

網膜で出血がおきると、突然以下の症状が現れます。
・急に目が見えなくなる
・目の前が真っ暗になる
・視野の一部が欠ける

このような症状がある場合には、大至急眼科を受診しましょう

糖尿病網膜症になると失明するってホントですか?

本当です。
すべての患者さんが失明する訳ではありませんが、失明の危機が迫っている患者さんは約20%、毎年3000人程度の患者さんが失明しています。

どのような人がなりやすいですか?

糖尿病網膜症は高血糖の人がなりやすいと言われています。

ほかにも、糖尿病網膜症になりやすい患者さんの特徴は以下のとおりです。
・糖尿病の期間が長い
・収縮期高血圧が高い
・高脂血症
・腎機能が悪い(慢性腎臓病と診断されている)

血糖が低い人は糖尿病網膜症になりませんか?

糖尿病網膜症の治療3

血糖値やHbA1cが低いほうが、糖尿病網膜症のリスクは低くなります。
けれども、人に介助してもらわなければならない「重度の低血糖症」を起こす人は、糖尿病網膜症の発症率が4倍になるという報告があります。

低すぎる血糖値も、体には良くありません。医師から指示された目標範囲内に血糖値をコントロールしましょう。

糖尿病網膜症になっていないか知るにはどうしたらいいですか?

眼科で糖尿病網膜症を診断できます。

私が仕事で糖尿病患者さんを診ているときは、まずは「糖尿病と診断されたとき」に、最低でも1回は眼科を受診するように指導しています。
その理由は「2型糖尿病患者さんの約30%が、糖尿病と初めて診断された時点ですでに糖尿病網膜症を発症している」という研究結果があるからです。

その後は最低でも年に1回。
糖尿病網膜症の重症度によっては、1~6ヵ月に1回の眼科受診が必要です。

糖尿病網膜症はどうやって治療しますか?

進行した糖尿病網膜症には、レーザー治療をおこないます。
網膜にできた新生血管と呼ばれる血管にレーザーを当てることで、病気の悪化を防ぎます。

レーザー治療は痛みはほとんどなく、日帰りでできる治療です。病状によっては、繰り返しレーザー治療をおこなう場合もあります。

また目の奥の出血がひどい場合や網膜剥離起こした場合には、硝子体手術をおこないます。
重症化してからのレーザー治療や手術は、視力の低下や失明のリスクが高くなるため、早期の治療が大切です。

糖尿病網膜症を予防しよう!

糖尿病網膜症の治療4

1番大切なことは、血糖値・HbA1cを目標の範囲内に保つことです。
「HbA1c 7.0未満の患者さんは糖尿病網膜症のリスクが下がる」ことがわかっています。

2番目に大切なことは、定期的な眼科受診です。
糖尿病網膜症が重症になる前に適切な治療をおこなうことで、悪化のスピードを遅らせることが期待できます。

3つ目に大切なこと、眼科受診の継続です。
1度受診して問題がなければ「もう大丈夫」と安心して、受診しなくなる患者さんが少なくありません。

先ほどもお話したように、糖尿病網膜症は糖尿病になってからの期間が長いほど、発症のリスクが高くなります。
早期治療は糖尿病網膜症の重症化予防だけでなく、失明の回避にも繋がります。
ぜひ、定期的な受診を続けていきましょう。

さいごに

糖尿病患者さんのだれもが糖尿病網膜症を発症するリスクを抱えていますが、発症しない患者さんがほとんどです。糖尿病網膜症を発症しないためには、指示通りに血糖コントロールをおこなうことが大切です。

さらに、糖尿病網膜症を発症しても、適切な治療をおこなうことで失明を回避できます。
今日からは安定した血糖コントロールと定期的な眼科受診で、糖尿病網膜症を防いでいきましょう。

この記事の参考資料・文献

1) 糖尿病で失明しないために(公益社団法人 日本眼科医会)
2) 糖尿病網膜症診療ガイドライン(PDF)

現役看護師 小田あかり

この記事の執筆者:現役看護師 小田あかり

看護師として、腎臓・循環器、糖尿病に関する業務を多くこなし、糖尿病患者さんの指導も行っています。
多数の学会発表の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。

主な所有資格:糖尿病療養指導士、呼吸療法認定士、透析学会認定など