トラブルの多い多胎妊娠、看護師が感じた「多胎家族に必要なサポート」
最終更新日:2021/07/28
『多胎(たたい)』って聞いたことありますか?
『多胎』とは、双子、三つ子、それ以上で生まれてきたお子さんのことをいいます。
医学用語では、一人で生まれてくるお子さんは『単胎・たんたい』と呼んでいます。
双子、三つ子、それ以上の多胎は、生まれてくる赤ちゃんにもご家族にとっても、妊娠・出産・育児は一人で生まれてくる時とは違うこともたくさんあります。
今回は知ってそうで知らない、多胎にまつわるあれこれを、ついてわかりやすく説明していきます。
この記事の執筆者:現役看護師 小田あかり
2003年から看護師として勤務。小児科・NICU・産科を経験し、現在は都内病院で勤務しています。
多数の学会発表の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。
赤ちゃんと共に日々頑張っている妊婦さんに向けて、役立つ記事を書いていきます。
この記事の目次
いま多胎妊娠が増えている!
排卵誘発剤や不妊治療など生殖医療の発達により、実は、多胎妊娠は毎年少しずつ増えています。
1974年~1976年の3年間では、出産1000件あたり5.8件前後だったのが、1987年に6.6件となり、その後は急上昇して2003年には11.0件に達しています。
私たちが子供だった頃よりも、双子・三つ子など多胎で生まれる子供たちの数は増えているんです。
一卵性と二卵性の違い
双子の話題でよく耳にする「一卵性」「二卵性」ってありますよね?
「一卵性」は1つの卵子に1つもしくは2つの精子が受精して、2つの命に分かれて育ち、双子が産まれた状態です。
そのため、一卵性は同じ遺伝子になり、見た目もそっくりになります。
「二卵性」は1つの卵子に1つの精子が受精したものが、2つとも育って、双子が産まれた状態です。
二卵性は半分は同じ遺伝子になりますので、兄弟・姉妹が同時に生まれたのと同じような状態なので、瓜二つということはないのです。
三つ子はもう少し複雑で、「一卵性と二卵性の組み合わせ」もありますし「一卵性が3人」ということもあり、兄弟・姉妹によってさまざまです。 ”
多胎妊娠で起きやすいトラブル
多胎妊娠では、つわり、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、HELLP症候群、子宮内胎児発育遅延、胎児形態異常、子宮内胎児死亡、血栓症などの合併症が単胎妊娠に比べて起こりやすいことが知られています。
特に、早産は多胎妊娠では頻度が高く、赤ちゃんが元気に育っていけるか「予後」に大きくかかわる合併症といわれています。
2000年から2008年までの日本人口動態統計によると、37週未満の早産はなんと54.3%と非常に高率です。
けれども、37週未満の早産で生まれたからといって、すべてに予後に関わる合併症が起きるわけではありません。
医学の進歩により、おおむね28週以降で生まれた赤ちゃんは、合併症がなく育っていくようになりました。
多胎の妊婦さんが早産や他の合併症にならないよう、私たち医療者は全力でサポートしますので、安心してくださいね。
多胎妊娠・多胎育児の方を救いたい。悲しい事件を繰り返さないために。
みなさんは2019年3月名古屋地方裁判所岡崎支部で、『生後11か月の次男を床にたたきつけて死亡させた罪に問われた3つ子の母親に、懲役3年6か月の実刑判決が言い渡された』ニュースを覚えていますか?
多胎育児のあまりの過酷さが背景にある事件として注目されました。
1人の子育てでも大変なのに、それが2人や3人になるともっともっと大変になります。
「子供の数が倍だから、苦労も単純に倍になる」とはいかないのです。
核家族化や祖父母の年代も現役で働いている人も増えているため、育児で孤立する多胎家族も少なくありません。
同じ事件を繰り返すことがないように、どの病院でも地域と連携したサポート体制を取るようにしています。
病院や保健師がしてくれるサポート
多胎妊娠をすると、病院からは出産前・後の準備、新生児集中治療室の案内などを、多胎対象のプレママクラスで教えてもらうことができます。
夫やパートナー、両家のご両親や兄弟からのサポートなど、大人の手の数があればあるほどありがたいのが、多胎育児の本音です。
しかし、実際には難しいことも多く、出産後のサポート体制については、出産前から病院で相談にのってもらうことができます。
地域の育児サポート、多胎専門の育児ボランティア、ベビーシッターなどの協力や、皆さんの状況にあった継続可能な育児体制を考えてもらえますよ。
また出産後は、地域の保健師さんを中心にサポートを受けることができます。
病院では検診のたびに助産師や看護師が面談を行っていますので、育児の不安や悩み、不足する育児サポートを相談することができます。
ご家族だけでは育児が大変な場合は、0歳児クラスから保育所へ入所することもあります。安心して無理せず育児を続けられるよう、多胎育児のサポートが世の中にはたくさんあります。
多胎育児で不安に思っていること、困っていることがあれば、ぜひ病院の助産師や看護師、地域の保健師に相談してみてくださいね。
多胎専門の支援「日本多胎支援協会」
パパ・ママ・おじいちゃん・おばあちゃんたちが、多胎妊娠・出産・育児の情報を得たいと思っても、専門的な情報が得られないのが実情です。
私の勤務している病院では、
JpMBA|一般社団法人 日本多胎支援協会
を紹介していました。
妊娠・出産・育児だけではなく、「多胎世帯の家計管理」まで、まさに多胎世帯のみなさんが知りたい情報が網羅されています。
それと、JpMBAの冊子には、妊娠中の生活に関する注意点、ママの体の変化、おなかの中の赤ちゃんたちの様子がわかりやすく説明されています。
詳細は日本多胎支援協会HPをご確認ください。
また、産後の多胎育児へのアドバイス、周りの人達が多胎パパママをどうサポートしたらいいか等へのアドバイスも盛り込まれているので、育児書として役立ているご家族もたくさんいらっしゃいました。
赤ちゃんたちが帰ってくる前に:みんなで「育児の練習」
予定日よりも早く小さく生まれた赤ちゃんたちは、「新生児集中治療室」で大きくなるまで入院をします。
その目安は、妊娠37週を超えて予定日が近くなり、体重は3㎏前後になったころ。
(週数や体重は赤ちゃんの状態や施設によってばらつきがあります)
けれども、退院できるからと言って、急に双子・三つ子ちゃんがおうちに帰ってくると大混乱!となってしまいます。
そのため、私の病院では1~2泊程度パパ・ママ・赤ちゃんでお泊りをして退院練習をしています。
「母子同室」のように一緒に過ごしてもらうのですが、ミルク作り・授乳・寝かしつけ・おむつ交換・沐浴…あっという間に時間がたっていきます。
その経験を通して、パパも他のご家族も、双子・三つ子育児の大変さが身に染みて分かっていただけるようです。
多胎育児で大変なことトップ3
私がよくお聞きした「多胎育児で大変なこと」は
・ミルクを作る回数が多い
・哺乳瓶を使う本数が多く洗って消毒が大変
・おむつ交換の回数も多い
この3つでした。
授乳は1日5~8回、おむつ交換も10回以上を3人分、考えただけで、気が遠くなりますよね。
泣いたり、眠らなかったり、吐いたり…他にも想定外なことが、本当にたくさん起きてしまうのです。
まさに、猫の手も借りたいくらい忙しい新生児期です。
退院前に多胎育児の大変さを知っていただくことで、退院後の家族の協力が得やすくなります。
産まれる前から、ずっと、みんなでサポート
多胎育児の場合は、妊娠・出産・産後、そしてご自宅に帰ってからも長くにわたって、たくさんのサポートが必要です。
子育ては一人でするものではなく、家族みんなで見るもの…とは言いますが、どうしてもママに負担がかかりやすい状況は変わっていません。
産まれる前から、そして産まれた後もサポートを続け、ニュースのような悲劇を繰り返さないようにすることが重要だと、心の底から思っています。
この記事の執筆者:現役看護師 小田あかり
2003年から看護師として勤務。小児科・NICU・産科を経験し、現在は都内病院で勤務しています。
多数の学会発表の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。
赤ちゃんと共に日々頑張っている妊婦さんに向けて、役立つ記事を書いていきます。
医療保険に加入されている方は保険金が受け取れるかも。ぜひ確認を!
多胎妊娠は帝王切開手術での出産となります。
もし医療保険に加入されていれば帝王切開手術や出産前後の入院に対して保険金を受け取ることができますので、加入されている方はぜひご確認されてみてください。
弊社は妊婦さん向け医療保険の専門家企業として仕事をしており、多くの妊婦さんへの医療保険手配や保険金お支払いに関わってきました。
その経験からいうと、(医療保険の種類にもよりますが)帝王切開の出産によって大体5万円~20万円くらいの保険金を受け取れます。費用のかかる多胎育児ですから、この保険金の額はとても大きなものでしょう。
また、妊娠中でまだ医療保険に未加入の方がいらしたら加入を絶対にお勧めしたいです。
実際に弊社の女性スタッフが医療保険で救われた事例も載せていますので、以下ページを参照ください。
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