生まれたばかりの赤ちゃんがNICU入院に。NICU入院の理由と特徴、かかるお金を解説。
最終更新日:2022/12/10
「元気な赤ちゃんが生まれてきますように……」
赤ちゃんが五体満足で生まれてくることを、願わない親はいません。
けれどもさまざま理由で、入院や治療が必要となる赤ちゃんも少なくありません。
では、生まれたばかりの赤ちゃんは、どのような病気で入院するのでしょうか?
どれくらい、入院したら自宅に帰れるのでしょう?
医療費などの経済的な負担は?
今回は、赤ちゃんが入院する理由や入院期間、赤ちゃんの医療費について、元NICU・GCU看護師の小田あかりが、わかりやすく解説します。
この記事の執筆者:現役看護師 小田あかり
2003年から看護師として勤務。小児科・NICU・産科を経験し、現在は都内病院で勤務しています。
多数の学会発表の経験を活かして、医療ライターとしても活動中。
赤ちゃんと共に日々頑張っている妊婦さんに向けて、役立つ記事を書いていきます。
この記事の目次
赤ちゃんが入院する確率
NICUは「赤ちゃんの集中治療室」です。
「生まれてから一度も病院から出ていない(家に帰っていない)赤ちゃん」が入院します。
1度自宅に帰った赤ちゃんは、小児科に入院するのが一般的です。
日本で生まれた赤ちゃんのうち4%が、NICU(新生児集中治療室)に入院するといわれています。
4%は25人に1人の割合。
保育園や幼稚園のクラスに一人は、NICUに入院した経験があるのと同じくらいの確率です。
実は、赤ちゃんのときに入院するケースは、意外と多いのです。
赤ちゃんが入院する理由
国内の代表的な子ども病院の1つである国立成育医療センターでは、入院治療が必要な病気・状態を以下のように記しています。
まず、早く小さく生まれた赤ちゃんは、かならず入院します。
- 低出生体重児(出生体重1800g未満、特に1500g未満)
- 早産児(在胎34週以下)
そのほかにも、以下の場合に入院・治療が必要です。
- 呼吸障害がある(高濃度の酸素投与が必要、無呼吸発作や呼吸が苦しい状態が続く)
- 先天性心疾患が疑われる
- 心不全症状がある
- 重症感染症が疑われる(肺炎、敗血症、髄膜炎など)
- 新生児仮死
- 痙攣を起こしている
- 黄疸があり集中的な治療が必要
- 外科的手術が必要
- 重度または多発性奇形がある
- 吐いたりやミルクの飲みが悪い、元気がない
このように、さまざまな理由で赤ちゃんは入院しているのです。
調査結果から分かる、赤ちゃんの入院の特徴
「赤ちゃんが入院する」というと、小さく生まれた場合が多いと思っていませんか?
日本産婦人科医会が全国のNICUを対象に、2003年におこなった「NICUに関する実態調査報告」をもとに解説します。
まず生まれたときの体重別にみていくと、約45000人のうち2000gよりも小さく生まれた赤ちゃんの割合は30%程度で、あまり多くはありません。
赤ちゃんの出生体重の平均である、3000g以上で生まれた赤ちゃんも30%弱入院しています。
「大きく生まれたからNICUには入院しない」ということはなさそうですね。
次に、赤ちゃんの在胎週数をみていきましょう。
正期産である在胎37週以上で生まれた赤ちゃんが、入院患者の54.8%を占めています。
おなかの中に長くいたから、NICUには入院しないというわけでもないようです。
最後に、赤ちゃんの入院期間についてみていきます。
NICUに入院した赤ちゃんの多くが数週間から1か月程度で退院します。病状によっては、ママと一緒に退院することもあります。
けれども、入院期間が1年以上になる赤ちゃんもいます。
調査の時点で、1年以上入院している赤ちゃんは130人いました。
確率でいうと、0.003%。
ごくまれではありますが、1年以上入院が必要になる可能性もあるようです。
赤ちゃんが入院したときの、パパ・ママの負担
赤ちゃんが入院し、心配なことも多いパパ・ママ。
実は、精神的・心理的・身体的な負担がとても大きいのです。
以下は、その一例です。
- 母子分離(赤ちゃんが入院し、親子が離れ離れになる)
- 面会のための通院
- 搾乳
- お金
- 仕事への影響
産後間もない時期の通院は、身体的に大きな負担となります。
3-4時間おきの搾乳で、睡眠時間も十分でない中の通院は、十分な休息が取れないというママもいました。
「赤ちゃんが心配」「赤ちゃんに逢いたい」と、毎日熱心に面会にいらっしゃる親御さんもたくさんいます。
しかし、コロナ禍では、面会制限をおこなう医療機関も多く、長時間・頻回の面会ができないケースもあります。
体力が低下している産後は、感染予防の観点からも、無理をしない範囲での面会が大切です。
入院費・治療費の大部分は「公費」で免除されるが・・
NICUに入院して、保育器に入ったり、点滴をしたり、人工呼吸器が必要になったり。
治療内容によっては「1か月の医療費が100万円を超えた」という話を、ネット上で目にすることもあるでしょう。
長期入院となったら「医療費はいくらかかるの?」と、心配になるかもしれません。
実は赤ちゃんの医療費については、手続きをすれば公費で免除され、自己負担はほとんどありません。
くわしく解説します。
生まれたばかりの赤ちゃんは、健康保険にまだ加入していません。
生まれたあとに手続きすることで、健康保険に加入し、医療制度を受けることができます。
健康保険に加入しなければ、医療費の自己負担は10割です。
健康保険に加入することで、自己負担は2割になります。
大人であれば3割の自己負担が必要ですが、赤ちゃんは「乳児医療」と呼ばれる医療費の助成を受けることができ、自己負担は0円になります。
乳児医療は出生届を提出するときに、自治体の窓口で手続きをおこなうと受給できます。
ほかにも出生体重2000g未満や、症状が重く治療が必要な赤ちゃんは「未熟児養育医療」が受給できます。
それ以外にも「こども医療費助成(東京都中央区)」「乳幼児医療費助成制度(東京都立川市)」といった助成制度があります。
さらに、食事代の自己負担も補助している自治体もあります。
差額ベッド代とよばれる個室使用料や、予防接種は助成の対象にはなりませんので、注意が必要です。
内閣府では、自治体ごとの乳児医療費を紹介しています。ぜひ、参考にしてください。
なお、お金が免除されるのは医療費についてだけです。
以下などの支出はお金を負担する必要があります。
- おむつ代
- ミルク代
- 搾乳機器のレンタル代
- 搾乳を保存する搾乳パック代
- 家族が面会に来るための通院費
ミルク代は、市区町村によっては公費で助成される可能性があります。ほかの項目については、医療費控除の対象外です。
医療費はかからないといっても、様々な出費が必要になってきますね。
保険ウィズのお客様にも、お子様が生後すぐにNICUに入院された方がいまして、おむつ代やリネン代などが「NICU管理料」という名目で毎月3~4万円かかっていると仰ってました。
詳しくは以下インタビューページをご参照ください。
切迫早産で入院し、帝王切開出産。お子様もNICUに入院されたN様(兵庫県30代)に保険金をお支払いしました。
赤ちゃんの急な入院でも周囲のサポートが受けられます
生まれたばかりの赤ちゃんが急に入院し、不安や心配も多いとおもいます。
「手続きや医療費のことまで頭が回らない」というのが、親御さんの本音でしょう。
病気や治療については、医師や看護師から説明を受けますが、そのほかの手続きについては誰に聞いたらよいのでしょう。
多くの病院では「ソーシャルワーカー」から、手続きに関連したサポートを受けられます。
ソーシャルワーカーがいない病院では、医師や看護師・助産師から、手続きについての説明があるでしょう。
さらに、役所で出生届を提出した際に、赤ちゃんが入院していることを伝えると、くわしく説明してくれます。健康保険組合でも同様です。
手続きが遅くなると、自己負担が発生することがあるかもしれません。
多くの場合は、必要な手続きを行うことで、支払った医療費は還付されますので安心してくださいね。
まとめ
今回は、生まれたばかりの赤ちゃんの入院の理由や特徴、医療費やその他費用について解説しました。
赤ちゃんの入院の理由はたくさんあります。
小さく生まれた赤ちゃんだけでなく、正期産で平均体重で生まれた赤ちゃんも入院する可能性があるのです。
手術や人工呼吸器が必要になったり、入院期間が数週間〜数か月となるかもしれません。
退院してからも不安が尽きることはないでしょうから、さまざまな不安をもつのは当たり前です。
小さなことでもかまいません。心配や不安、疑問があれば、ぜひ医療者に相談してください。かならず、親身になってくれます。治療の面でも、経済的な面でも、不安なく赤ちゃんの治療と成長を見守っていきたいですね。
<参考資料>
1)愛育病院 新生児科
2)国立成育医療センター 新生児科
3)NICUに関する実態調査報告 平成17年3月 社団法人 日本産婦人科医会