FP・識者の保険コラムExpart Column

自転車通勤を始める方へ。絶対に入っておくべき自転車保険。

更新日:2024年04月23日

増える自転車通勤。会社が推奨するケースも。

通勤自転車による交通事故
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、出勤の際に自転車を利用する方が増えています。
従来は自転車通勤を禁止していた企業も、解禁の動きを見せています。

ただ、自転車通勤は交通事故の危険が高まります。
自転車は原則車道を走行することとなっていますが、交通量の多い時間帯に車道を走ると、自動車に巻き込まれてしまう可能性があります。

被害者になる可能性だけではありません。
自転車の走行が認められている歩道では、歩行者とぶつかってしまう危険性もあります。

このように自転車通勤の事故は、被害者だけでなく加害者になる可能性もあるのです。

自転車保険の加入を求める会社。どの保険を選べばいい?

自転車通勤を認める企業の中には、従業員に対して自転車保険の加入を勧めたり義務付けている企業もあります。

ただ、肝心の保険選びは従業員任せの企業もあるようで、どんな自転車保険に加入すれば良いのか分からない方も多いようです。

自転車保険を選ぶには、自転車保険の基本を理解しておくことが必須です。
まずは、自転車保険のよくある疑問を解決しましょう。

疑問①「自転車保険はどんな補償が付いているの?」

自転車保険は自転車走行中の事故に備える保険です。
自分自身のケガに備える「傷害補償」と、事故を起こして法律上の賠償責任を負った場合の「賠償補償」に分かれています。

自転車保険に加入しなくても、「傷害補償」部分は一般的な傷害保険、「賠償責任」部分は個人賠償責任保険や火災保険・自動車保険の「個人賠償責任特約」でも代用が可能です。

疑問②「出勤中の事故は、会社で補償してくれないの?」

出勤中の事故は会社が補償すべきと考える方もいると思います。
出勤中に事故でケガをしてしまった時は労災保険の対象となるのですが、事故を起こして加害者となった場合は違います。

出勤中に自転車事故を起こし、他人にケガをさせたり物を壊してしまった場合は、原則として加害者の責任となります。
自転車通勤を認めている会社にも責任があるとみなされるケースも稀にありますが、基本は事故を起こした本人に責任が追求されます。

保険で備えがないときは自己資金から損害賠償金を支払い、被害者の方とのやりとりも自分自身で行わなければなりません。

疑問③「自転車事故での損害賠償は高いの?」

自転車は免許不要で誰でも乗れる気軽さから、「事故を起こしても大したことないだろう」と安易に考えてる人もいると思います。

しかし、自転車事故で被害者が死亡することもありますし、死亡まで至らなくても大怪我をさせて高額な賠償責任を命じられた事例も多数あります。

事例1 小学生が起こした自転車事故
男子小学生(11歳)が、夜間にマウンテンバイクで坂道を猛スピードで下っている最中に、60代女性と正面衝突。意識不明の重傷を負わせた。
裁判では、事故の原因が自転車の安全運転について十分な指導をしていなかった保護者にあるとして、保護者に9521万円の損害賠償を命じた。

事例2 30代男性が起こした自転車事故
30代男性が、昼間に信号無視をしてスピードを出したまま交差点へ侵入。
青信号で横断歩道を横断中の50代女性に衝突し、女性は頭蓋骨内損傷などで11日後に死亡した。
この事故で、加害男性は5438万円の損害賠償を命じられた。

疑問④「自転車保険選びで大切なポイントは?」

さて、肝心の自転車保険の選び方のポイントは「賠償責任補償」部分の充実度です。
自転車保険の加入目的は、「万が一事故を起こしたときの賠償責任に備えるため」と言っても過言ではありません。

自転車保険を選ぶときは、賠償責任補償部分に注目してください。

具体的には、
・示談交渉サービスの有無
・補償金額は1億円以上であること
・補償される賠償責任の範囲
をチェックしてください。

「示談交渉サービス」は、事故を起こした際に、示談交渉を保険会社にお任せするサービスです。もしこのサービスが無いと事故の相手との示談交渉は自分自身で行うか、弁護士に依頼する必要があります。

補償金額については無制限が望ましいですが、先程ご紹介した事故事例をみても1億円の補償金額があれば安心でしょう。
もし今加入している自転車保険の補償が不足している場合は、新しく加入し直しても良いのですが、賠償責任に関する保険(特約)に上乗せで加入すると補償が合算されます。

「補償範囲」についても、保険商品によって異なるのでご注意ください。
賠償責任の範囲が対人に限られているものや、被害者が特定の状態になった場合のみ補償対象となるものもあるので、加入の際にしっかり確認することをおすすめします。

一部の保険では補償が不十分と思われるものもあります。
例えば「TSマーク」とは自転車安全整備士による点検を受けた自転車に貼付されるマークで、これには保険もついています。しかし「TSマーク」保険では賠償責任保険金の支払い対象となるのは「対人事故のみ」に限定され、対物補償はついていません。
さらに肝心の対人補償も「被害者が死亡または重度後遺障害を負った場合」に制限されており、これでは補償がとても足りないので、別途加入することをおすすめします。

たくさんある自転車保険

様々な保険会社が自転車保険を販売しておりますが、私が加入しているのは全日本交通安全協会が販売している「サイクル安心保険」です。
今年で5年目の加入になります。

全日本交通安全協会の自転車保険

【全日本交通安全協会】自転車保険加入のご案内
https://cycle-anshin.com/

詳しい保険内容や価格は上記HPをご確認されてください。

自転車通勤は、健康にもよく渋滞とも無縁で快適だと思いますが、一方で事故を起こしてしまった時の影響・損害がとても大きくなる側面もあります。
これから自転車を使って出勤される方は必ず自転車保険に加入し万全の備えをしていただきたいと思います。