海外旅行保険のプロが指摘!クレカ付帯保険の問題点。

株式会社ウィズハート
代表 木代晃輔

株式会社ウィズハート
代表 木代晃輔
株式会社ウィズハートの木代(きしろ)です。
弊社では、海外旅行保険についてのご相談をよくお受けするのですが、そのなかで多いのが「クレジットカードに付帯されている海外旅行保険があるので別途保険に入らなくてもよいのではないか?」というご質問です。
確かに昨今では大体皆さまクレジットカードをお持ちで、中には複数枚持っているお客様もいらっしゃり、クレカ付帯の海外旅行保険があれば十分なのでは、と思いがちです。
しかし弊社ではクレカ付帯保険があっても、海外旅行保険に別途加入することを強くお勧めしています。
というのも、クレカ付帯保険には
・医療費用の補償金額が低い
・利用にあたって条件があるカードが多い
・カード合算をしても高額なキャッシュレス治療には対応できないリスクがある
という問題点があるからです。
今回は海外旅行保険の仕事を15年以上してきた専門家として、クレジットカード付帯の海外旅行保険の問題点を具体例を挙げながら解説していきます。
この記事の目次
医療費用の補償金額が低い
まずクレカ付帯保険のデメリットに、医療費用の補償金額が低いという点があります。
大手クレジットカード会社の一般カードの医療補償金額をみてみましょう。
治療費用限度額(一般) | 治療費用限度額(ゴールド) | |
---|---|---|
A社 | 50万円 | 100万円 |
B社 | 200万円 | 300万円 |
C社 | 200万円 | 300万円 |
一般カードでの治療費用限度額は50~200万円、ゴールドカードでも300万円程度となっています。
200万円も治療費用が補償されるなら十分では?と思われる方もいるかもしれませんが、それは日本での話。
近年では欧米を中心に医療費が高騰しています。
入院や手術を伴うようなことがあれば医療費は数百万円、時には数千万円にのぼることもあるのです。
弊社のお客様のなかでも、アメリカでの家族旅行中突然の心筋梗塞で倒れられ、現地の病院で手術と入院をされたケースがあり、10日間の入院と手術での治療費総額は約2,000万円となりました。
■詳しくはこちら
【海外旅行保険】アメリカ旅行中に手術&入院されたお客様に、治療費2000万円の保険金をお支払いしました
自分は若くて健康だから大丈夫・・・と安心してはいけません。
直近では、20代女性のお客様がオーストラリアでボルタリングのアクティビティをして右足膝を大怪我しました。
現地で手術を受けたお客様は、リハビリ費用もあわせると治療費は400万円近くになる見込みです。
■詳しくはこちら
【海外旅行保険】オーストラリアのワーホリ中に大怪我で手術されたお客様に、220万円の保険金をお支払いしました
海外でケガや病気になると、医療費が200~300万円ではとても足りなくなるというのは全く珍しいことではないのです。
クレカ付帯保険では、いざという時に治療費用が高額になり十分な補償が受けられない恐れがあります。
ウィズハートでは海外旅行保険に手配する際には、できるだけ治療費用を数千万円~無制限で設定するようことを推奨しています。
利用にあたって条件があるカードが多い
クレカ付帯保険で次に気をつけなければならない点は、保険が使える条件が設定されている という点です。
クレジットカードを保有している人全員が保険を使えるものを「自動付帯」、旅行代金等をカード決済して初めて保険が使えるものを「利用付帯」といいますが、最近のクレジットカードの多くは海外旅行保険を自動付帯ではなく利用付帯となっています。
以下は大手カード会社で、利用付帯の条件を比較したものです。
カード会社 | 海外旅行保険が使える条件 |
---|---|
A社 | 該当カードで旅行費用の決済すること |
B社 | 該当カードで募集型企画旅行の料金を決済すること |
C社 | 該当カードで募集型企画旅行の料金または 旅行中の公共交通乗用具の利用料金を決済すること |
カード会社が近年になって適用条件を変更しているケースも多く、「自分が持っているクレカ付帯保険の利用条件が変わっていた」という方もいらっしゃいます。
他にも、「自動付帯だから安心だと思っていたら死亡・高度障害の保障だけで、治療費用については補償がついていなかった」というカードもあるので注意してください。
海外渡航先で病院にかかり、いざという時にクレカ付帯海外旅行保険が使えると思ったら、条件を満たしていなかったために使えないことが発覚する、というのは最悪のケースです。
今一度、自分のクレジットカード付帯の旅行保険について、利用条件などをしっかり確認しておきましょう。
カード合算をしても高額なキャッシュレス治療には対応できないリスクがある
クレカ付帯保険が複数ある場合、医療費の補償金額を合算させることが出来ます。
例えば200万円の医療費補償のついたクレカ付帯保険を3枚持っていれば、
200万円 × 3枚 = 600万円
の医療費保障を確保することが出来ます。
これ自体はとても良い仕組みでご存知の方も多いと思いますが、実はここにはいくつかの落とし穴があります。
問題となるのは、キャッシュレス治療を受けるときです。
海外でキャッシュレス治療を受けるとき、まず最初に本人がクレジットカード会社に連絡をして、キャッシュレス治療を受けることの承認を得なくてはなりません。
合算利用したい場合は、複数のカード会社に連絡を取って承認を得る必要があるため、その手間はとても大きなものになります。
病状が悪かったり急ぎで治療を受けたいというときには大きな障壁となるでしょう。
次の落とし穴は病院側・保険会社側の事情です。
キャッシュレス治療を提供する病院は、保険会社と連絡を取り合って医療費支払い保証の書面を取り付ける必要があります。
「guarantee of payment」といい、GOPと略されます。
このGOPが保険会社から発行されて初めて病院は支払い保証が得られて治療を開始してくれるのですが、このGOPが発行されるまでには病院の事務負担が多く、時間もかかることがよくあります。
発行が遅れていると治療開始がそれだけ遅くなり、待合室などで長く待たされることになるのです。
もし複数のクレカ付帯保険を使用しようとすると病院はそれぞれの保険会社からGOPを取り付ける必要があります。
1社からGOPを取るのも大変なのに、これが複数社となれば要する事務負担・所要時間はかなり大きくなるでしょう。
治療を受けられるようになるのに相当な待ち時間を要することになりますし、大きな事務負担を理由に病院がキャッシュレス治療を拒否する可能性もあります。
キャッシュレス治療を受けたいときは、緊急ですぐにでも治療が必要なときが多いです。
そんな苦しいときに長時間待たされたり、自分が複数カード会社に連絡して状況説明しないといけないというのは、かなり過酷な状況になると思われます。
さらに保険会社によってキャッシュレス治療を承認できる病院は異なりますから、「この病院はA保険会社はキャッシュレス治療を承認してくれたけど、B保険会社は無理だった」ということもありえます。
こうなると医療費保障の合算がもはや機能しないのです。
クレカ付帯保険の医療費補償の合算は一見すると良い仕組みに思えますが、いざそれを使う場面を現実的に考えると様々な障壁・落とし穴があることを知っておいていただきたいと思います。
クレカ付帯保険だけに頼らす、必ず海外旅行保険に加入しましょう
クレカ付帯保険の注意点を
・補償金額が低い
・利用条件がある
・高額なキャッシュレス治療に対応できないリスクがある
という3つの観点から解説しました。
このような問題点を十分認識されていない方も多く、後から保険が使えなかったり、補償金額が十分でなかったりして大きなトラブルになっているケースがあります。
外務省がホームページで海外渡航者に対し以下のように注意を呼びかけています。
クレジットカードには海外旅行傷害保険特約のついたものもありますが、保険の限度額やサービス・条件の範囲はカードにより異なりますので、内容をよく確認しておくことをおすすめします。
引用元:外務省|海外安全ホームページより
保険というものは加入さえしておけばよいというものではなく、いざという時に十分な補償が受けられなければ意味がありません。
もし保険が使えなかったら、大きな悲劇になります。
海外に渡航される際には、クレカ付帯保険だけに頼るのではなく、必ず海外旅行保険に加入するようにしましょう。
■ 海外渡航中のトラブルにしっかり備えてほしい。ウィズハートの海外旅行保険

この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。