FP・識者の保険コラムExpart Column

金融庁が新設する「保険監督局」が、損保・生保業界の改善の好機になることを強く期待。

投稿日:2025年08月22日

金融庁が保険代理店を監督検査する専門部署を新設するというニュースがありました。

金融庁が監督局を2つに分割する組織改編を検討していることがわかった。
不正が相次いだ保険会社の監督強化や資産運用立国の推進に向け、「資産運用・保険監督局」を設置する。
銀行と証券の両業態を一体的に監督するのも大きな目的で、監督局は「銀行・証券監督局」と改称する。

2026年夏の変更を求める機構定員要求に盛り込む。局の再編が実現すれば、2018年以来だ。
金融庁「資産運用・保険監督局」を新設へ 保険不正受け監督局を分割

これについて保険業界歴20年を越える私の考えを言いたいと思います

この2~3年で保険業界では多くの不祥事・事件がニュースを騒がせました。

・中古車販売会社のビッグモーター・による自動車保険の保険金不正請求
・FPパートナー(マネードクター)などの大規模保険代理店への保険会社からの不正な利益供与・便宜供与
・企業系火災保険のカルテル問題

などなど、話題となりました。

このニュースだけを見ていると、一般消費者の方々は今の金融庁の監督不足・力不足を不満に思われるかもしれません。

ですが私の印象は逆で むしろこの数年の金融庁は消費者利益を守るためによく動いているなと感じていますし、私が損害保険会社で働いていた20年前に比べたら今の金融庁ははるかに良くなってきていると感じています。

保険業界歴の長い人なら共感いただけると思いますが、上記のような不祥事はこの数年で突発的に起きたものではなく、昔から悪しき慣習として行われてきたものです。

「よくここに手を付けてくれた!」というのが、保険業界の現場で働いている人の感じ方ではないでしょうか。

私は大学卒業後、新卒で損害保険会社に入社・勤務しました。
商品開発部での勤務でしたので販売現場をこの目で見る機会こそ少なかったですが、上記にあげた不正問題はよく耳にしていました。

例えば自動車ディーラー系代理店が消費者の意向を無視して自動車保険を案内していたり、休日の彼らの野球部の試合に保険会社の社員を何人応援団として呼べるかで自賠責や自動車保険の販売件数が決まる・・・というのも当時の同僚から聞いたことがあります。

大型代理店への異常な利益供与も長く続いてきたことです。
その名称は代理店ボーナスであったり特別コミッションであったり特別広告料などであったり様々ありましたが、結局は保険会社が特定の代理店に金を配り、顧客の意向を逸脱して自社の保険を優先的に販売させてきていたのです。

そして一番の問題は、これを当時の金融庁は見て見ぬふりをしてきたこと
多くの業界関係者が「これはおかしい」と指摘してきました。
しかし当時の金融庁は、「保険会社と代理店の事業間取引の問題であり、金融庁が関わることではない」として関わることを避けてきたのです。

常識的に考えればこの件は事業間取引だけの問題ではなく、その先にある消費者が不利益をこうむっていることは明らかであり、その点も指摘も多くあったでしょう。
入社して1年目の新卒ペーペーの私ですら問題をたくさん目にしてきて「おかしくないのかな?」と思ったのですから、それを金融庁・財務局が知らなかった気付かなかったはずはないのです。

要するに、長年からの悪習で消費者意識・常識感覚がマヒしていたのは保険会社だけでなく、監督する立場である彼ら自身もそうだったのです。

そしてこの数年でついにと言いますか、金融庁が問題提起をしてようやく明らかになりました(もちろんその背景には様々なメディアによる追及がプラスに働いたこともあります)。

ニュースが出たとき「何十年も続いてきた悪習に、よく手をつけてくれた」と感じましたし、今も続いている追及の姿勢を私はとても高く評価をしています。

今回のニュースにある「専門部署の新設」はこの動きをより一層強めることの現れだと思いますし、「お客様のために真面目に仕事をし、尽くす人が評価される」保険業界に向けて大きく前進する好機になるのではないかと期待もしています。

木代 晃輔

この記事の執筆者:木代 晃輔

神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
独立後は株式会社ウィズハートの代表として、保険相談サイト「保険ウィズ」や、FP相談サイトを開設。

15年以上にわたって生命保険・損害保険の仕事に従事し、北は北海道、南は沖縄までと、日本全国から年間100件以上のご家庭の保険相談にお応えしています。