パーキンソン病の治療にかかるお金と支援制度、民間保険での備えについて


パーキンソン病は進行性の神経変性疾患で、長期にわたる治療が必要となります。
治療費の負担は患者や家族にとって大きな心配事ですが、日本には難病患者を支援する様々な公的制度が整備されています。
この記事では、パーキンソン病の治療にかかる費用の目安と、利用できる支援制度について詳しく解説します。
適切な制度を活用することで、医療費の負担を大幅に軽減することが可能です。
この記事の目次
パーキンソン病の治療にかかる費用
パーキンソン病の治療費は、病状の進行段階によって大きく変動します。
まずは実際にどの程度の費用がかかるのか、月額の医療費目安と進行段階ごとの変動について見ていきましょう。
パーキンソン病の治療にかかる月額の医療費目安
パーキンソン病の治療にかかる月額費用は、病状の進行度によって大きく異なります。
【主な費用の内訳(3割負担の場合)】
| 診療項目 | 金額 |
|---|---|
| 再診料・医学管理料 | 1,000~3,000円程度 |
| 薬剤費 | 5,000~30,000円以上 (使用する薬剤により大きく変動) |
| リハビリテーション費用 | 1回500~2,000円程度 (月2~4回実施で2,000~8,000円) |
| 検査費用 | 定期的なMRIや血液検査で数千円~1万円程度 |
特に薬剤費は高額になりがちです。
例えば、レボドパ製剤にCOMT阻害薬(オピカポンなど)を併用すると、薬剤費だけで3か月ごとに約3万円の自己負担(年間約12万円)となります。
ただし、医療費総額が33,330円(3割負担で約1万円)を超える月が年3回以上ある場合、難病医療費助成制度の対象となる可能性があります。
進行段階による費用の変動
パーキンソン病の医療費は、病状の進行に伴って大きく変動します。
・初期(ヤール1~2度)
比較的少ない薬剤で症状をコントロールできる時期です。
月額1~2万円程度の医療費で済むことが多く、通常の医療保険(3割負担)でも大きな負担にはなりにくい段階です。
・中等症(ヤール3度以上)
複数の薬剤を併用する必要が出てくるため、月額3万円以上かかるケースが増えます。
ただ、この段階から難病医療費助成制度の対象となることが多く、自己負担が大幅に軽減されます。
・進行期(ヤール4~5度)
訪問看護や訪問リハビリテーションが必要になり、医療費だけで月5万円以上かかることもあります。
さらに介護保険サービス(訪問介護、デイサービス等)を併用すると、介護費用も月数万円追加されます。
ただ難病医療費助成制度と介護保険制度を活用することで、実際の自己負担は所得に応じて月数千円~数万円に抑えられます。
・入院・手術が必要な場合
DBS(脳深部刺激療法)などの手術では高額な費用がかかりますが、高額療養費制度により自己負担限度額まで軽減されます(後述します)。
パーキンソン病患者が利用できる支援制度
パーキンソン病の治療費負担を軽減するため、以下の公的支援制度が利用できます。
それぞれの制度の対象者や内容を確認し、該当するものは積極的に活用して、少しでも治療費を軽減させましょう。
① 難病医療費助成制度
パーキンソン病は指定難病であり、この制度の対象となります。
・対象者: 原則としてヤール重症度分類3度以上かつ生活機能障害度2度以上の方です。
・軽症高額該当: 重症度に関わらず、医療費総額が33,330円を超える月が年間3回以上ある場合も対象となります。
・自己負担上限額: 医療費の自己負担割合が原則2割に軽減され、さらに所得に応じて月額2,500円~30,000円の自己負担上限額が設定されます。
・対象となる費用: 指定医療機関でのパーキンソン病に関する医療費や薬剤費です。
② 高額療養費制度
同一月内の医療費自己負担額が、年齢や所得に応じた自己負担限度額を超えた場合、その超えた分が加入している公的医療保険から払い戻される制度です。
自己負担限度額は、年齢と所得によって細かく区分されています。
例えば、70歳未満で一般的な所得の方の場合、自己負担限度額は約8万〜9万円程度(医療費総額が267,000円を超えた場合)が目安となります。
この制度は難病医療費助成制度と併用が可能です。
一般的に、まず難病医療費助成制度が適用されて自己負担が2割となり、さらにその自己負担額に対して高額療養費制度が適用されます。
これにより、難病医療費助成制度の自己負担上限額を超えない場合でも、高額療養費制度によってさらなる負担軽減が期待できます。
また、直近12か月の間にすでに3回以上高額療養費の支給を受けている場合(多数該当)は、4回目以降の自己負担限度額がさらに引き下げられます。
上記例の一般所得の方の場合、4回目以降は限度額が44,400円に軽減される仕組みです。
③ 介護保険制度
パーキンソン病は特定疾病に指定されているため、通常は65歳以上が対象の介護保険サービスを、40歳から64歳でも要介護認定を受けることで利用できます。
訪問介護、デイサービス、訪問リハビリテーションなどのサービスを利用でき、自己負担は所得に応じて1~3割となります。
④ その他の制度
障害年金は、病気により生活や仕事に支障が出た場合に支給される年金です。
初診日が65歳未満であることが条件で、認定基準(ヤール重症度など)に基づき等級が認定され、年間約80万円以上が目安となります。
また、身体障害者手帳は、障害の程度に応じて交付され、所得税・住民税の軽減や交通費の割引などのメリットがあります。
主に肢体不自由(運動機能の障害)の程度などにより等級が認定されます。
民間医療保険の活用
公的支援制度に加えて、民間医療保険も治療費負担の軽減に役立ちます。
診断の前後で加入できる保険や活用方法が異なるため、それぞれのケースについて確認しましょう。
診断前に民間医療保険に加入していた場合
もし診断前に加入していた保険があれば、それは重要な保障です。
入院給付金、手術給付金(手術の種類により入院給付金日額の10~40倍程度)、通院給付金(商品や特約による)などが給付対象となります。
診断後の保険加入について
一般的に、パーキンソン病と診断された後は、通常の医療保険への加入は難しいため、引受基準緩和型の医療保険を検討することになります。
この保険は告知項目が3~5項目程度と簡易で、持病があっても加入しやすい医療保険です。
パーキンソン病と診断された後の加入は、パーキンソン病以外の病気・ケガでの医療費の支出をこれ以上増やしたくないときに検討しましょう。
民間の医療保険の活用ポイント
民間保険を活用する際は、まず公的制度を最大限に利用することが基本です。
難病医療費助成制度や高額療養費制度で多くの医療費がカバーされるため、民間保険は不足分を補完する役割として考えましょう。
特に若年性パーキンソン病(40歳未満で発症)の場合は、就業不能保険の検討も重要です。
働き盛りで発症すると収入の減少が大きな問題となるため、就業不能保険で生活費をカバーできると安心ですね。
また、保険の見直しや新規加入を検討する際は、専門家である保険代理店やファイナンシャルプランナーへの相談をお勧めします。
弊社ウィズハートでもパーキンソン病をお持ちの方でもご加入いただける様々な保険を取り扱っておりますので、ご興味のある方はお気軽にお問合せください。
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まとめ
パーキンソン病の治療費は病状により月額1~5万円以上かかりますが、難病医療費助成制度、高額療養費制度、介護保険制度などの公的支援を活用することで、実際の自己負担は所得に応じて月数千円~数万円に抑えられます。
早めに情報を収集し、該当する制度を漏れなく申請するようにしましょう。
公的制度と民間保険の組み合わせ方や、ご自身の状況に応じた最適なプランについても専門家へのご相談をお勧めします。
