FP・識者の保険コラムExpart Column

親の医療保険は必要か?シニア世代の保険の役割と活用法

投稿日:2025年05月19日
保険ウィズ(株式会社ウィズハート)代表取締役 木代晃輔
株式会社ウィズハート
代表 木代晃輔
保険ウィズ(株式会社ウィズハート)代表取締役 木代晃輔
株式会社ウィズハート
代表 木代晃輔

株式会社ウィズハートの木代(きしろ)です。
弊社はシニア向けの生命保険・医療保険を多く扱っている保険代理店です。

高齢になると、病気やケガのリスクはどうしても高くなります。
シニア世代の親に、突然の入院や長期療養が必要となった時、医療費はどうするのかといった不安を抱えている人もいるかもしれません。

今回は、シニア世代の親の医療保険の必要性や選び方について解説します。

シニア世代も医療費の高額化が予想される

入院や手術にかかる医療費は公的医療保険制度によって、経済的な負担が抑えられる仕組みになっています。
例えば、シニア世代の医療費は、70~74歳までであれば原則2割負担、75歳以上であれば1割負担です。
また、一定以上の医療費がかかる場合には「高額療養費制度」を利用することも可能です。

しかし、入院や手術に伴って生じる費用がすべてに保険が適用されるわけではありません。
例えば、食事代や個室に入った場合の差額ベッド代のほか、先進医療の技術料など公的医療保険の対象外となる費用については全額が自己負担となります

特に、差額ベッド代は病院ごとに独自に設定されており、個室の広さや種類によって数千~数万円と金額にも幅があります。
令和7年4月1日からは食事療養費の額が改定され、1食あたり20円増の510円に変更されました。
入院時には医療費以外にもさまざまな費用が発生するため、親の経済状態によっては、子供世代が経済的にサポートしなければならないケースもあります。

このようなリスクに備える選択肢のひとつが「医療保険」です。
親が適切な医療保険に加入していれば、いざという時の負担を軽減でき、子供世代の経済的な負担も和らぎます

シニア世代の医療費事情

厚生労働省が公表した令和5年の「患者調査」によると、入院の平均日数は28.4日でした。
これを65歳以上に絞ってみると平均35.5日、75歳以上に限定すると平均39.0日にもなり、シニア世代ほど入院日数が長くなりやすいことがわかります。

また生命保険文化センターの調査によれば、入院時の1日あたりの自己負担費用の平均は20,700円で、決して低い金額ではありません。

将来的には高額療養費制度の上限額引き上げが検討されています。
2025年8月での引き上げは一旦見送りとなりましたが、2026年以降の引き上げが予定されていることから、今後負担額が増えることは想定しておく必要がありそうです

■ 参考
厚生労働省「令和5年(2023年)患者調査の概況」
生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計 入院費用(自己負担額)はどれくらい?」

シニア世代でも加入できる医療保険

親の医療費に備えたいと思っても、年齢が上がると健康状態の悪化や保険料負担の大きさから、保険に加入するのが難しくなるのも事実です。
シニア世代では、次のような保険が選択肢となります。

通常型の健康な方向けの医療保険

生命保険会社が販売する一般的なタイプの医療保険は、加入すれば一生涯保障される「終身型」の保険も選ぶことができます。
シニア世代の医療保険は月々の保険料が高くなりがちですが、なかには比較的安価に加入できるプランもありますので、保険料を試算してみるのがおすすめです。

なお健康に関する告知や診査があるため、健康状態によっては持病が保障対象外となってしまったり、加入を断られてしまうことがあります。

引受基準緩和型の医療保険

引受基準緩和型の医療保険は、健康に関する告知が少なく、持病があっても加入しやすいタイプの保険です。
保険会社によっては「限定告知型」と呼ばれることもあり、通常型の加入ができなかった人でも加入できる可能性があります。

一方で、加入から一定期間に持病の悪化で入院した場合には給付金が減額されることがあるほか、通常型の医療保険と比べて保険料は高めに設定されています。

しかし終身保障タイプの保険を選べば、通常型の医療保険と同じように一生涯の保障を持つことができるなど、持病がある人にとっては、重要な選択肢のひとつです。

少額短期保険

シニア世代の医療保険の選択肢として候補に入れたいのが、少額短期保険という新しいタイプの保険です。
いわゆるミニ保険と言われる保険で、必要な保障を必要な期間だけ加入するのに向いています。

1年ごとの更新型の医療保険となるので、数年間だけの短い期間で加入したいという要望に合っています
(商品によっては加入して更新を続ければ99~100歳まで継続できるものもあります。)

少額短期保険の医療保険については以下ページで保険料の試算や比較ができますので、参考になさってください。

医療保険に加入したほうが良い人とは

医療保険が必要かどうかは親の経済状況や健康状態によって異なりますが、次のようなケースでは加入をおすすめします。

・親の貯蓄や年金が少なく、医療費の備えが不十分だと感じる
・持病があり、今後の医療費がかさむ可能性がある
・子供世代の家計に余裕がなく、親の医療費を負担するのは難しい

親自身が充分な貯蓄を持っている場合は、新たに保険に加入する必要はないかもしれません。
しかし今後の日本において、高額療養費制度の上限額引き上げ・改悪などにより、今後も医療費の負担は増えていくことは避けられないでしょう
不安がある方は、医療保険を活用して備えておくといいでしょう。

木代 晃輔

この記事の執筆者:木代 晃輔

神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
独立後は株式会社ウィズハートの代表として、保険相談サイト「保険ウィズ」や、FP相談サイトを開設。

15年以上にわたって生命保険・損害保険の仕事に従事し、北は北海道、南は沖縄までと、日本全国から年間100件以上のご家庭の保険相談にお応えしています。