潰瘍性大腸炎の方のカナダでの薬確保や病院の探し方
カナダで生活していた地域の商業施設
留学やワーホリで人気があがっているカナダ。
潰瘍性大腸炎をお持ちの方も多くカナダに渡航されていますが、特に気になるのが「潰瘍性大腸炎の診察や薬の確保はどうしたら良いか?」という点でしょう。
弊社は海外留学保険やワーキングホリデー保険を販売していて、潰瘍性大腸炎のお客様の海外旅行保険も多く手配してきました。
怪我や病気の医療費を補償する海外旅行保険ですが、持病(潰瘍性大腸炎)の補償についてはほぼ全ての保険会社が補償対象外(32日以上の渡航の場合)となっており、現地での治療を補償してくれる海外旅行保険は現在のところありません。
そのため潰瘍性大腸炎の診察や治療、薬の確保はご自身で行って、それにかかった医療費は自腹で支払う必要があります。
そうなると、カナダでの診察や薬処方にはどのくらい費用がかかるか気になるはずです。
そこで、潰瘍性大腸炎をお持ちで実際にカナダ渡航された「あぼねこ」さんにインタビューしてお話をお聞きしました。
潰瘍性大腸炎をお持ちでカナダ渡航を予定されている方はぜひご覧ください。
あぼねこ さん
(20代女性)
2022~2023年にカナダのバンクーバーにワーホリで渡航。
潰瘍性大腸炎は2019年夏に発覚。
寛解状態だが、メサラジン腸溶錠400mg「サワイ」(アサコール錠400のジェネリック医薬品)を毎朝6錠。
- カナダに行かれる前にどのような準備をされましたか?
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あぼねこ
さん-
海外生活をする上でやはり潰瘍性大腸炎のことが一番の不安だったので、毎日服用している薬が切れないように渡航前から準備をしました。
まず、日本で診察と内視鏡検査を受け、薬も当面の分を確保しました。
現地バンクーバーでは薬が高いことと、すぐに病院が見つかるか心配だったためです。
日本で処方してもらった薬私の場合は日本の病院で最大3か月分の薬が処方してもらえたので、それを現地に持ち込みました。
搭乗の際にはスーツケースがロストする可能性もあるので、スーツケースや手持ちの荷物などに少しずつ小分けにして運ぶのがいいと思います。私はカナダ滞在期間が1年間だったので、滞在中にどこかで薬を調達する必要があります。
カナダに来て1か月たたないうちに病院を探して、早めに薬をもらえるように動きました。これだけすぐに動き始めたのは、
・病院を探したり予約するのに日数がかかるかもしれない
・現地の薬が身体に合わないかもしれない
などで、日本で処方された薬を飲み切ってしまうと困るためです。
- 英文の診断書は用意されたのでしょうか?
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あぼねこ
さん-
日本の主治医の病院で、英文の「診断書(Medical Certificate)」と「診療情報提供書(Patient Referral Document)」を書いてもらいました。
診断書には、
・飛行機に乗るために荷物に薬を入れていること
・海外にいる間は血液検査が不要なこと
を書いてもらうと、空港での荷物検査や現地病院で処方箋をもらうときに役立ちます。ほかにも内視鏡検査の結果や血液検査の結果も、英訳は不要でしたが、念のため紙の書類として用意しました。
- カナダに着いてからは病院はどうやって探したのでしょうか?
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あぼねこ
さん-
英語での診察は不安があったので、日本語対応ができる病院をネットで探しました。
最初は自宅近くの病院(ファミリードクター)にメールで問合せしてみたのですが、私が潰瘍性大腸炎であることを伝えると「こちらでは診察できません」と断られてしまったんです。
そこで別の病院を探し、たまたま見つけたウォークインクリニックのHPに日本人向けの電話番号があったので、そちらに電話をしました。同じ潰瘍性大腸炎の日本人患者を何名か診たことがあるとのことだったので、その病院で診察を受けることにしました。
実は滞在中に風邪をひいたこともあったのですが、その時も潰瘍性大腸炎と同じクリニックを受診して、結局私は最後までファミリードクターを使うことはありませんでした。
- カナダの病院での診察や、かかった医療費について教えてください。
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あぼねこ
さん-
診察には日本から持参した英文書類と、現在服薬中の薬を持っていきました。
電話で予約した際に日本語通訳をお願いしていたため、日本人スタッフの方に最初からすべて日本語で対応してもらうことができました。
私は専門用語を英語で理解する自信がなかったので通訳をお願いしました。
通訳の費用として$100かかりましたが、英語に自信があれば必要ないと思います。先生には日本から持参した薬剤証明書を渡して、同じ薬の処方箋が欲しいことを伝えました。
日本と違って処方箋の有効期間を選べるので、最長期間の1年間分をもらうのがおすすめです。
カナダでもらった処方箋は1年間有効病院では待ち時間も診察時間もそれぞれ5分程度で、早かったという印象です。
処方箋を含む診察代$185と通訳代$100で、かかったお金は合計で$285(カナダドル)でした。
日本円で約3万円ですね。
診察&処方箋代は日本円で約3万円
- 日本で受ける診察との違いはありましたか?
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あぼねこ
さん-
診察の内容は日本で受けるものとだいたい同じです。
紹介状の内容に沿って病状などを改めて確認され、日本で処方されている薬と同じものを処方しますという流れで進みました。潰瘍性大腸炎の場合は定期的な血液検査を行うのですが、日本の先生から「海外にいる間の血液検査が不要だ」と言われていたので、日本の医師からそう言われているとはっきり伝えました。
私は書いてもらっていないのですが、日本の先生からの紹介状に書いていただければそのほうがいいと思います。
- 薬はどのようにして購入できるのですか?
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あぼねこ
さん-
処方箋があれば薬局で薬を購入することができるので、家から一番近いドラッグストアチェーンの「Rexall(レクソール)」を利用しました。
薬だけでなく日用品や食べ物も売っていて、日本でいうマツモトキヨシのようなドラッグストアです。病院では1年分の処方箋をもらいまして、薬は同じドラッグストアで数か月ごとに分けて処方してもらうため、何度か通う必要があります。
そのため、自宅から近い薬局・ドラッグストアが便利だと思います。私が利用した「Rexall(レクソール)」では、専用のアプリから薬を手配できるような仕組みでした。
薬が少なくなってきたら、アプリでRefillの予約ができます。
薬の用意ができたら連絡が来るので、薬局に受け取りに行くだけです。
- 薬の購入にかかった費用について教えてください。
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あぼねこ
さん-
薬代は3か月分で$371.14でした。
日本円でだいたい4万円ほどです。日本では3割負担でジェネリックの薬をもらっていて5,000円程度、ジェネリックでなくても1万円程度だったので、日本と比較するとだいぶ高いという印象ですね。
- カナダの薬は、日本の薬とはどのような違いがありますか?
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あぼねこ
さん-
日本で処方されていた薬と同じ薬はカナダには無いとのことだったので、有効成分が同じになる別の薬を処方してもらいました。
日本から持参した薬は毎朝6錠服用していたのですが、カナダで処方された薬は1錠当たりの成分量が多く、毎朝2錠の服用になったので、薬を飲むのが楽になりました。
包装も日本のように1錠ずつのPTPシートではなく、フィルムケースのようなプラスチックのケースにまとめて入れられており、かさばらずに保管できます。
なんか海外っぽいケース。笑海外の薬は自分の身体に合わない可能性もあるので、日本でもらった薬が残っているうちに新しい薬を試せるよう、早めに病院に行ったほうがいいと思います。
私の場合は問題なかったので、そのまま服用を続けました。
- あぼねこさんは健康保険の「海外療養費制度」への還付申請もされたのですよね。
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あぼねこ
さん-
はい、日本に帰国してから「海外療養費制度」の還付申請をしました。
潰瘍性大腸炎は持病治療ということで保険が使えないとわかっていたので、海外療養費制度を活用しようと思ったのです。
日本にいる間に自分で健康保険協会のサイトを調べて、必要書類をあらかじめ印刷して持っていきました。カナダにいる間に潰瘍性大腸炎の診察や薬でかかった医療費は15万円ほどでした。
海外療養費制度に還付申請して戻ってきたお金は32,109円と、実際の負担額の5分の1ほどの金額でしたが、少しでも戻ってきて良かったです。ただ、海外療養費制度の申請作業はとても大変でした。
まず必要書類を集めるところがすごく大変です。
作成した書類や領収証のコピーを送って、書類が足りないと言われてまた郵送して…というのを5回くらい繰り返して、手続きが完了するまでに3か月ほど、そこから入金までに1か月ほどかかりました。
- 最後に、潰瘍性大腸炎をお持ちの方がカナダ生活で気を付けて欲しいことはありますか?
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あぼねこ
さん-
私は、ブリティッシュコロンビア州サレー市のキングジョージ駅という、バンクーバーダウンタウンからは少し離れたところに住んでいました。
ダウンタウンに比べて日本人は全然いないのですが、徒歩圏内にスーパーやショッピングモールなどあり、とても住みやすい街でした。日本と比べてカナダの物価は高めだと感じました。
今は円安ですのでなおさらだと思います。持病の薬が高いのもですし、住宅も設備はいいのですが家賃が高いです。
ブリティッシュコロンビア州サレー市そして、潰瘍性大腸炎の方が気を遣うのはやはり食事のことですね。
現地には和食レストランもあるのですが、天ぷら・天丼やラーメン、お寿司でもサーモンなど脂っこいものが多く、カナダの食事だとパンケーキやワッフルなどになってしまうので、できるならなるべく自炊するのがおすすめです。
外食の物価の高さや、お腹の調子があまりよくないこともあって、私はあまり外食せず、現地のアジア系マーケットで米やうどん、冷凍サバなどを買って自炊していました。
外食したい時には、バンクーバーには「フォー」のお店が多いので、フォーをよく食べていました。
フォーは日本のラーメンに似ているのですが、ラーメンよりさっぱりしていて、お腹に負担が少ないと感じています。ほかにもトイレ事情では、ウォシュレットがないというのは日本との大きな違いです。
私も最初は嫌だなと思ってしまったのですが、滞在中にだんだん慣れて、日本に戻ってからも使わなくなってしまいました(笑)トイレ事情でいうと、バンクーバーの公衆は汚いトイレが多かったのですが、私はきれいなトイレに行きたいので、Googleマップにピンを打って「きれいなトイレ」というリストを作っていました。
インタビューを終えて
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潰瘍性大腸炎のある方が留学・ワーホリで渡航されるケースはとても増えています。
海外チャレンジを支援すべく、弊社でも海外旅行保険をご案内しておりますが、持病の補償を得ることは現実的に難しく、多くの方が不安に感じられているところでしょう。今回あぼねこさんに教えていただいた「カナダでの生活や薬確保」が心配事だった方もいらっしゃるかと思います。
この記事が少しでも参考になったら嬉しいです。
また、海外留学保険・ワーホリ保険をご相談されたいという方はお気軽にご連絡ください。インタビューに応じてくださったあぼねこさん、ありがとうございました。
(インタビュアー:木代)
「海外旅行保険を相談したい」という方は
こちらからお気軽にご連絡ください。
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インタビュアー
株式会社ウィズハート
代表取締役
木代 晃輔神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
独立後は株式会社ウィズハートの代表として、保険相談サイト「保険ウィズ」や、FP相談サイトを開設。
15年以上にわたって生命保険・損害保険の仕事に従事し、海外旅行保険を中心に日本全国からの保険相談にお応えしています。
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・潰瘍性大腸炎をお持ちでカナダにワーホリ渡航した、るいさんの現地病院受診の経験
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参考情報
【海外療養費制度とは】
海外旅行中や海外赴任中に急な病気やけがなどにより現地の医療機関で診療等を受けた場合、加入されている健康保険から一部医療費の払い戻しを受けることができます。
これを海外療養費制度といいます。
参考:協会けんぽHP
海外で急な病気にかかって治療を受けたとき(海外療養費)