ドイツのワーキングホリデーVISAと選ぶべき海外旅行保険。保険プロが解説
2025年2月時点での情報です。
この記事の目次

この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。
ドイツはヨーロッパ中部に位置する国です。
北はバルト海、北海に面し、内陸側はベルギーやオランダ、フランス、ポーランドなど9か国と国境を接しています。
正式名称はドイツ連邦共和国といい、人口は約8,482万人で、首都はベルリンです。
EU加盟国ですので、通貨はユーロを使用しています。
ベルリンの気候は、夏は涼しく快適な一方、冬は長く非常に寒いのが特徴です。
冬の降雪量は多く、風が強く曇りの日が続きます。
ワーホリビザの申請要件
ドイツのワーホリビザは、最長1年間滞在することが可能です。
また、住み込みで子どものお世話や家事をするAuPair以外のさまざまな職場で働くことができます。
項目 | 要件 |
---|---|
滞在可能期間 | 3か月以上1年以内(最長365日) |
年齢 | 18歳以上、申請時に31歳に達していないこと |
申請時に必要な資金 | 2,000ユーロ(日本円で約32万円) |
申請料 | 無料 |
ビザ発給数 | 制限なし |
申請時期 | 3か月前から申請可能、出発の2週間前まで |
ドイツ連邦共和国大使館HP「ワーキングホリデー・ビザの説明」ページより
VISA申請の流れ
■Step1:申請資格を確認する
ドイツのワーホリビザの取得申請にあたっては、申請資格を満たしている必要があります。
年齢のほか、一定額の預金など、上の申請要件をクリアしているか確認しましょう。
■Step2:必要な書類を準備する
ビザの申請に必要な書類には次のようなものがあります。
・長期ビザ申請書
・宣誓書
・書類返送用のレターパックまたは封筒
・パスポート用写真
・パスポート(申請するビザの有効期限後、3か月以上の有効期限のあるもの)
・往復航空券予約の証明書
・海外旅行保険の加入証明書
・通帳のコピー(1年間滞在する場合2,000ユーロ、片道航空券しかない場合はその倍)
・志望動機(英語またはドイツ語)
・履歴書(英語またはドイツ語)
英語またはドイツ語で作成する必要のある履歴書や志望動機、航空券や海外旅行保険の手配など、入手に時間のかかる書類もあるため、早めに準備に取りかかりましょう。
■Step3:ドイツ大使館またはドイツ総領事館に書類を持参し提出する
ビザの申請は、東京のドイツ大使館または大阪のドイツ総領事館へ直接持参のみ受け付けられています。
書類の準備が完了したら、ドイツ大使館のWebサイトから予約し、予約日時に訪問します。
また、申請者の居住地域によって申請先が異なり、予約システムも分かれていますので、間違わないよう注意しましょう。
在京ドイツ大使館(東京)…東日本:新潟・長野・静岡以東に居住している人
ドイツ総領事館(大阪)…西日本:富山・岐阜・愛知以西に居住している人
発給されたビザは、郵送または宅配便の着払いで受け取ることができます。
海外旅行保険への加入が必須条件
ドイツでは、ワーホリビザの申請時に、海外旅行保険の加入証明書の提出が求められます。
そのため、次の条件を満たす海外旅行保険への加入が必須です。
【海外旅行保険の必須となる補償】
・ドイツでの全滞在期間有効であること
・歯科治療にも適用されること
・女性の場合、妊娠時にも有効な保険であること
・賠償責任保険が付いていること
- Q&A ワーキングホリデーの海外旅行保険の費用の相場・目安はどのくらい?
-
木代-
1年間の保険期間で、安い保険会社では大体20万円前後、高い保険会社ですと50万円となっているのが相場です。
保険会社によって行先や年齢に応じて価格(保険料)が変わってくるところもあり、40~50万円以上の金額になる保険会社もあります。
昨今の円安や海外医療費インフレでどの保険会社の海外旅行保険とも利益がひっ迫していることから値上げする保険会社が相次いでいて、今後も保険料相場は上がっていくことが予想されます。
弊社が取り扱っている保険会社はまだ値上げせずに20万円~30万円弱で頑張ってくれていますが(詳細は後述します)、もしかしたら今後上がる可能性があります。
- Q&A 日本の健康保険は使えないの?
-
木代-
ドイツに限らず、海外では日本の健康保険証を使うことはできません。
そのため海外で病院を受診した時は全額を支払う必要があり、高額な医療費がかかることがあります。健康保険には「海外療養費制度」という制度があって帰国後に申請することで海外での治療費の一部金額の還付を受けることができますが、還付申請の手続きが複雑だったり、還付金が思ったよりもずっと少なかったケースもあるので頼り過ぎは禁物です。
- Q&A クレジットカード付帯保険ではダメなの?
-
木代-
ドイツワーホリでは、滞在期間中のすべてをカバーする保険が必要になっています。
クレジットカードの付帯保険は、補償期間が3か月だけなど短い期間に限定されており、このVISA申請の要件を満たすことが出来ません。滞在期間をカバーできる海外旅行保険に加入しましょう。
海外旅行保険ってどんな保険?メリットとデメリット
海外旅行保険では、さまざまな補償を受けることができます。
代表的な補償には次のようなものがあります(特定の保険会社の補償説明ではなく、あくまで一般的な内容を載せています)。
■治療費用・救援費用
ケガや病気により現地で病院を受診した時や、処方された薬を購入した時にかかった費用が補償されます。
また、ケガや病気で長期入院し、日本から家族が現地に駆けつける際にかかる費用が救援費用として補償されます。
■賠償責任補償
現地で何らかのトラブルにより、第三者に損害を与えてしまったときに保険金が支払われます。
例えば、現地の住まいでお湯を出しっぱなしにして寝てしまい、水浸しになり修理費を請求された時などに補償されます。
■携行品・生活用動産
自分の持ち物が壊れてしまったり、紛失や盗難に遭ってしまったりした時に保険金が支払われます。
例えば、外出先でスマートフォンを盗まれてしまった場合や、カメラを落として壊してしまった場合などです。
特に海外では日本人を狙ったひったくりや強盗などの犯罪が頻発していることから、この補償があると安心です。
海外旅行保険のメリット
海外旅行保険に加入しておくことで、病院を受診した際に治療費などの保険金が受け取れるほか、次のようなメリットがあります。
(特定の保険会社のサービス説明ではなく、あくまで一般的なメリットを載せています)
■治療費のキャッシュレスサービス
海外で病院を受診する時、保険会社から病院へ直接支払いを行う「キャッシュレスサービス」が利用できます。
このサービスを利用すれば、高額な治療費の窓口で支払いや立て替えが不要となります。
■24時間日本語対応のコールセンター
海外旅行保険に加入すると、保険会社のコールセンターが利用できます。
コールセンターでは、医療機関の紹介や手配のほか、パスポートやクレジットカードなどの紛失・盗難時の手続きなど対応を受けられます。
こういった現地での困りごとに、24時間365日、日本語で対応してもらうことが可能です。
■医療通訳サービス
多くの保険会社では、病院を受診する際の医療通訳サービスが提供されています。
ワーホリで海外を訪れる人の中には、現地の言葉に自信がないという人もいるでしょう。
病院を受診する前に保険会社に連絡を入れることで、電話などを利用した医療通訳サービスを受けることができます。
海外旅行保険のデメリット
海外旅行保険に加入する最大のデメリットは、一定のコスト負担(保険料)があることです。
保険会社やプランにもよりますが、一般的に1年間のワーキングホリデーであれば20~40万円程度の保険料がかかります。
分割は出来ず、加入時に一括で支払う必要があるため、まとまった支出が発生します。
ドイツワーホリでの海外旅行保険の選び方
ワーホリに対応した海外旅行保険は多くの保険会社が取り扱っていますが、自分に合った保険会社やプランを選ぶことが大切です。
特に、申請要件に合致するよう、次のようなポイントをしっかりと押さえて保険に加入しましょう。
滞在期間をカバーする保険会社を選ぶ
ドイツワーホリでは、滞在期間のすべてを補償期間とする海外旅行保険への加入が必要です。
保険会社によっては短期間プランしか取り扱っていないことがあるので、1年間など中長期の期間に対応している保険会社を選びましょう。
弊社ではAIG損害保険会社をお勧めしており、1年間(それ以上も可)のワーホリ渡航やネット申込にも対応しています。
プランにもよりますが、保険料は1年間で24万円~30万円です。
帰国時期が明確に決まっていない場合や変更となる可能性がある場合は、無保険の期間が生じないよう、最も長い期間で加入しておくことが大切です。
もし早期に帰国した時には、解約により保険料が返金されるので、保険会社や担当の保険会社に早めに相談しましょう。
必要な補償内容を選ぶ
海外旅行保険でもっとも大切な補償が、現地での医療費を補償する「治療救援費用」です。
海外では想像以上に高額な治療費を請求されることがあるため、保険金額が「無制限」となっているタイプがおすすめです。
弊社のお客様であった実例ですが、海外で心不全により救急搬送され、そのまま緊急手術&入院となり、2,000万円を超える医療費がかかったケースがありました。
また、ドイツワーホリでは、歯科治療や妊娠のほか、海外賠償責任保険の補償が必要となっています。
海外賠償責任保険は、さまざまな補償がセットされた一般的なプランであれば、通常は補償に組み込まれています。
ただし、歯科治療や妊娠に関する補償は特約として選択するか、それらの補償が含まれたプランに加入する必要があるため、よく確認しておくことが大切です。
重大な疾患のほかにも交通事故や犯罪被害により大きなケガを負ってしまうこともありますから、充実した補償内容を選びましょう。
早めの準備が大切
海外旅行保険はネットから申込できるタイプのものも多くありますが、特別な事情がある場合には加入手続きに時間がかかることがあるため、早めに準備しておきましょう。
■入通院歴や持病のある人へ
通常、ワーキングホリデー保険に加入する時には、健康に関する告知が求められます。
直近で入院や通院をしたことのある人や、持病・既往症の治療を続けている人などは申告が必要となります。
保険会社への手続きや申し込みに時間がかかることもあるので、早めに確認するようにしましょう。
弊社でも持病のある方や薬を服用されている方の海外旅行保険のご相談やご加入を多く受け付けていますので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。
■補償内容に指定がある場合
ドイツワーホリのように、加入する保険の補償内容に条件がある場合、その条件を満たしているかどうか確認する必要があります。
保険会社への問い合わせや、条件を満たす保険を探すために時間がかかることも考えられますので、早めに確認を始めるといいでしょう。
■加入証明書(保険付保証明書)が必要な場合
VISA申請にあたっては、英文または現地語での保険契約証(付保証明書)という書類の提出が必要になります。
弊社でもよくお客様に発送しておりますが、日数を要することもあります。
英文契約証・証明書をご希望の方は、保険お申し込み後にお早めにご依頼ください。
また、一般的にはネットから海外旅行保険に申込できるのは出発予定日から2~3か月前となっているのですが、VISA申請のためもっと早くに保険加入したいという場合は特別方法にて対応可能ですのでご連絡ください。
その他、ドイツで生活する上での注意
ドイツでは日本と異なる部分が多くありますので、生活する上で次のようなことに注意しましょう。
ドイツの衛生事情
ドイツの衛生水準は高く、病院やレストラン、食料品店など、特に問題はありません。
上下水道も整備され、水道水をそのまま引用することもできるなど、環境衛生も整っています。
一方で、日本と異なり水道水が石灰分(カルキ)の多く含まれる硬水となっています。
人によっては口に合わないと感じたり、お腹の調子が悪くなったりすることがあります。
飲用水には市販のミネラルウォーターのほか、硬度を下げるため簡易浄水器の使用を検討するのもいいでしょう。
ドイツの治安・犯罪事情
ドイツはヨーロッパの中でも比較的安全なイメージを持たれていますが、外務省によるとドイツ国内全体の犯罪発生数は約563万件(2022年)となっています。
これは人口10万人当たりに換算すると、日本の約14倍に上るため、日本にいる時と同じ感覚でいることは危険です。
ドイツ滞在中は、次のことに注意しましょう。
■行動のパターン化を避け、夜間の外出は控える
犯罪のターゲットとされないために、目立つ行動を避け、パターン化しないよう心がけましょう。
例えば、通勤・通学ルートの固定や、毎朝のジョギング、外出時の日課には注意が必要です。
移動時間帯やルートを変えたり、習慣的な行動を避けたりなど、特定されないような工夫が求められます。
また、主要駅の周辺や飲食店街であっても、深夜になると人通りが減ります。
街灯の設置がまばらなエリアでは、路上強盗や傷害、性犯罪のリスクが高くなることから、夜間の一人歩きはできるだけ控え、やむを得ない場合でも複数人で行動するなどの対策が重要です。
■荷物から目を離さない
普段から多額の現金や貴重品を持ち歩くことは避け、現金は分散して持つようにしましょう。
旅行者を狙ったスリや置き引きが多発しており、観光地では景色を眺めている一瞬の隙に被害にあうケースもあります。
そのため、貴重品はかならず身に付け、知らない人から話しかけられても手荷物から注意を逸らさないようにしましょう。
■行動するエリアのことを把握し、危険な場所には近づかない
普段行動するエリアの治安をよく把握し、危険とされる場所には近づかないよう注意して行動しましょう。
特に、昼間は問題のないエリアでも夜には街灯が少なく、治安が悪化する場所もあります。
人通りの少ない道や繁華街のはずれ、日没後の公園や閑散とした駐車場などは、強盗や傷害、性犯罪の被害に遭うリスクの高いスポットです。
ドイツの医療制度と医療費
ワーホリでの滞在であれば、現地の医療保険への加入は必要ありませんが、ビザ申請にあたって海外旅行保険への加入が必須となっています。
保険がない場合、医療費は全額が自己負担となってしまうため、外務省でも海外旅行保険への加入が推奨されています。
ドイツでは医薬分業体制が徹底されており、ひとことに「病院」と言っても、家庭医・開業専門医・病院の三者の役割が厳密に分けられています。
まず、外来や通院治療に対応するのはプラクシス(Praxis)で、いわゆるかかりつけ医にあたる家庭医と、開業専門医に分けられます。
入院治療を行う「病院」はクランケンハウス(Krankenhaus)といい、一般の外来部門はありません。
その中でも大学病院は紹介患者の診療に限られており、救急外来に対応していますが、こちらも一般の外来には対応していません。
通常はプラクシスを受診し、入院が必要になればクランケンハウス、退院後の通院はプラクシスに戻ることになります。
また、処方薬は医師の処方箋を持参して、薬局で購入します。
日本と異なるのは、予防接種ワクチンも患者自身が薬局で購入する必要がある点です。
通常、医師からワクチンの処方箋を受け、薬局でワクチンを購入し、再び医師のもとを訪れてワクチン接種を受けます。
■医院:プラクシス(Praxis)
外来に対応するプラクシスで診察を受けるためには、基本的に予約が必要です。
日本の病院のように、当日の開院前から並んで早く診てもらうということはできません。
ドイツではかかりつけ医である「家庭医」ハウスアルツト(Hausarzt)の制度があり、公的保険に加入している人は通いやすいハウスアルツトに登録しています。
■病院:クランケンハウス(Krankenhaus)
入院に対応したクランケンハウスは、原則プラクシスからの紹介状をもらってからでなければ受診できません。
そのため、日本の総合病院のように、終日混雑しているということはありません。
救急医療
ドイツにおける救急の緊急通報番号は「112」で、救急車は次の3種類に分けられます。
1.患者搬送を目的とするクランケンワーゲン(Krankenwagen)
2.日本の救急車に近いレットゥングスワーゲン(Rettungswagen)、
3.医師が同乗しているノートアルツトワーゲン(Notarztwagen)
「112」に連絡する時には、自分の症状を伝えられるようにしておくといいでしょう。
夜間や休日の緊急時には、病院や大学病院の救急外来を受診することもできます。
都市によっては開業医による夜間・休日の救急外来も利用できることがあります。

この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。
国一覧はこちら。ワーキングホリデーVISAと選ぶべき海外旅行保険
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