海外療養費制度への還付請求の事例インタビュー
「海外療養費制度」とは、海外で急な病気やケガになって現地で治療を受けた際に、帰国後に日本の健保組合などに申請すれば、海外で支払った医療費の一部が還付される制度です。
便利な海外療養費制度ですが、弊社で海外旅行保険を手配したお客様からは
「実際にかかった医療費に対して少ない金額しか還付されなかった」
「書類の記入や申請手続きなどが分かりにくい」
というご相談をいただくケースが多くあります。
今回は、実際に海外で病院にかかられて医療費を支払い、海外療養費制度を利用して還付を受けられたお客様にインタビューを行ないました。
実際に現地でかかった医療費と還付金の差額、具体的な手続き方法などについて詳しくお話をうかがいましたので参考にしてください。

H さん
(40代女性)
2024年からノルウェーに駐在。
弊社が案内した海外旅行保険にご加入いただきました。
子宮内膜症の持病をお持ちで、ノルウェーでも服薬されて過ごされました。
- 今回、海外療養費制度で還付を受けられたケースについて教えてください
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ノルウェーに仕事で約10か月出張しました。
渡航前から子宮内膜症の持病があり、ウィズハートさんで海外旅行保険の手配をしてもらい加入しました。子宮内膜症の薬は日本では最大3カ月分しか処方してもらえないため、現地の医療機関で処方してもらう必要があります。
このときの診療代と薬代について海外療養費制度で還付を受けました。また、滞在中に一度新型コロナウイルスに罹り、週末でかかりつけ医が休診中だったため、民間の医療機関を受診し薬を処方してもらいました。
こちらは薬代は安かったので還付申請せず、診療代だけを還付申請しました。
- ノルウェーの医療制度はどのような仕組みになっているのでしょうか
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ノルウェーは基本的に居住地域で公的なかかりつけ医が決まっています。
まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医への紹介を受ける仕組みです。かかりつけ医はオンラインで予約できますが、予約してから診療を受けるまでに1週間程度かかることが多いです。
民間の医療機関であればもっと早く診療を受けられますが、診療費が高額になります。今回のケースで言えば、子宮内膜症の処方薬については別の婦人科を紹介されるまでもなく、かかりつけ医が同じ成分の薬を処方してくれました。
ノルウェーで処方してもらった子宮内膜症の薬
新型コロナウイルスについては、病状が悪化した際にかかりつけ医が休診だったため、少し離れた場所の民間医療機関を受診しました。
処方された抗炎症薬
- かかった医療費は総額いくらくらいで、そのうちどれだけ海外療養費制度で還付を受けられたのでしょうか?
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請求が2回に分かれていますが、総額で支払った医療費の4.5万円に対し約3.2万円の還付を受けれました。
還付金が申請額よりも少ないのは、海外療養費制度は日本で同じ治療を受けた費用を基準に還付金を計算するためだと思います。
- 申請金額に対し約7割還付されたのですね。海外では医療費が高いので、海外療養費制度では実際に支払った金額の3~4割しか還付されなかった、といった話も聞きますので、予想より多く還付されたな、という印象です
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そうですね。
ただ、やはり日本で全く同じ治療を受け、薬を処方してもらっている方からすると、ノルウェーで公的なかかりつけ医に罹ったとしても診療費や薬代は高くつくな、と感じました。
- 海外療養費制度を申請するにあたっては、いくつか書類の提出が必要です。現地のお医者様に書いてもらわないといけない書類もありますが、苦労などありましたか?
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お医者様とのコミュニケーションは普通にとれましたので、そんなに大変なことはありませんでした。
海外旅行保険の申請時にも書類へのサインが必要なので、「海外旅行保険の書類と同じようなものだね」と言ってすぐに対応していただけました。
疾病分類表から該当するものに〇をつけるところがあって、この病名などが少しわかりにくかったので、私からの説明が必要でした。
疾病分類一覧の書類
- 書類手続きで他に大変なことはありませんでしたか?
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お医者様にサインしてもらう診療内容の明細書の他に、診療費や薬の領収書の添付などが必要です。
私は現地語での会話に不自由があまりないので、現地の人とコミュニケーションがとれればそれほど大変なことはないと思います。ただ、ノルウェーでは処方箋が全て電子情報になり、手元には明細などの書類が残りません。
スクリーンショットや薬の写真などで証拠を残す必要がありました。あと、月ごとの請求なので、長期間になると請求を分けなくてはいけないので少し面倒なことぐらいでしょうか。
- スクリーンショットなどできちんと証拠を残しておくのは大事ですね。他に申請時に工夫された点などありますか?
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現地の薬局でもらう領収書はとても簡易なものなので、メモ書きを入れるなどして工夫しました。
現地の書類などでもわかりにくい点がある場合は、補足説明のメモを入れたりしたので、特に追加の確認メールや電話が来ることもありませんでした。
- 申請から還付金の支払いまでにはどのくらいかかりましたか?
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メモのおかげで書類の再提出や確認作業などありませんでしたが、それでも組合に申請して交付決定されるまで約3カ月かかりました。
通知書は交付決定から約1週間後に届きました。
還付金が振り込まれるのは、それからさらに1か月後くらいでした。
インタビューを終えて
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海外療養費制度は大変便利な制度ですが、書類の記入や添付などの手続きが複雑な点や現地で支払った医療費全てが還付されるわけではない点に注意が必要です。
今回インタビューをさせていただいたH様は、現地でのコミュニケーション力に問題がなく、あらかじめ必要書類を準備されたり自分でメモ書きを入れたりなどの工夫をされたため、比較的スムーズに手続きができたのではないかと思います。
実際に手続きをされた体験談をお聞きしたうえでの注意点などをまとめてみました。
・日本での治療費が基準となるので、支払った治療費の全額が還付されるわけではない
・現地でお医者様に書類を記入していただくなど、コミュニケーションがスムーズにできることが大切
・電子申請が普及している地域ではスクリーンショットを残しておくなどの工夫が必要
・スムーズにいっても申請してから実際の振込までには4ヶ月以上かかる現地の医療機関でのコミュニケーションや医療費の立替に不安がある方は、海外旅行保険の医療アシスタンスサービスの利用をご検討ください(地域によっては利用できないケースもあります)。
詳細を知りたい方や海外旅行保険のお問い合わせをされたい方はお気軽にご連絡ください。
(インタビュアー:木代)
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インタビュアー
株式会社ウィズハート
代表取締役
木代 晃輔
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
独立後は株式会社ウィズハートの代表として、保険相談サイト「保険ウィズ」や、FP相談サイトを開設。
15年以上にわたって生命保険・損害保険の仕事に従事し、海外旅行保険を中心に日本全国からの保険相談にお応えしています。