イギリスのワーキングホリデーVISAと選ぶべき海外旅行保険。保険プロが解説
2024年11月時点での情報です。
この記事の目次
この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。
イギリスの正式名称はグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国といい、グレートブリテン島全域とアイルランド島北東部に位置している国です。
イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドという4つのカントリーからなっています。
首都はロンドンで、人口は約6,300万人です。
公用語は英語、2020年にEUを離脱したことから、通貨はユーロではなく英国ポンドとなっています。
ロンドンでは夏が短く快適ですが、冬は長く寒い気候となっており、10月から3月は曇天が続きます。
ワーホリビザの申請要件
イギリスへのワーキングホリデーには、Youth Mobility Scheme=YMS(Tier5ともいいます)というビザを取得することになります。
これは就労ビザの一種で、最長2年間イギリスに居住して働くことができます。
基本的に就労に関する制限はなく、就労せず学校に通うことも可能です。
従来は定員が1,500人と限られていたことから抽選が行われていましたが、2024年から定員が6,000人に増枠され、先着順での受付となりました。
例年10~12月頃に翌年の申請要項が公表されていますので、必ず最新の情報を確認しましょう。
項目 | 要件 |
---|---|
滞在可能期間 | 最長2年間 |
年齢 | 18歳以上30歳以下 |
貯蓄 | 2,530ポンド(約50万円)以上の預金があること |
申請料 | 298ポンド(約5万8千円) |
医療保険 | Immigration Health Surcharge(健康保険付加料、通称:IHS)の支払いが必要 年間776ポンド(約15万円)、2年間の場合は1,152ポンド(約30万円) |
ビザ発給数 | 年間6,000件 |
申請時期 | 6か月前から |
※1ポンド=約197円で計算(2024年11月14日)
イギリスでは、ビザ申請の追加料金として、健康保険付加料(IHS)の支払いが必要です。
このIHSについて、2024年2月にIHSが従来の66%アップとなる改定が実施されました。
YMSビザでは、それまでの470ポンドから776ポンドに大幅な引き上げとなっています。
UK government(英国政府)Youth Mobility Scheme visa
VISA申請の流れ
■Step1:申請資格を確認する
イギリスのワーホリビザの取得申請にあたっては、申請資格を満たしている必要があります。
年齢のほか、一定額の預金など、上の申請要件をクリアしているか確認しましょう。
また、申請時には、ビザ申請日までの約1か月間に、銀行口座に2,530ポンド以上の残高があることを証明しなければなりません。
■Step2:オンラインにて申請し、費用を支払う
ビザの申請はオンラインで手続きできます。
オンライン入力後、ビザ申請料金と追加費用となる健康保険料を支払うことで申請が完了します。
■Step3:ビザ申請センターの訪問予約をして、予約日に訪問する
ビザの取得には生体認証情報(指紋と写真)の登録のため、ビザ申請センターへ訪問する必要があります。
また、申請に必要な補助書類はオンラインで提出するか、ビザ申請センター内で書類のスキャンサービス(有料)を利用することも可能です。
審査結果はメールにて通知され、パスポートはビザ申請センターに訪問するか、郵送にて受け取ります。
海外旅行保険に加入しておくことが重要!
イギリスではビザ申請時に現地の健康保険IHSへの加入が義務になっています。
日本の海外旅行保険への加入は必須とはなっておりません。
では海外旅行保険には加入しなくてよいか?というと、そうではありません。
健康保険IHSで対象となるNHSは常に混雑して診察予約してもなかなか取れません。
そのため渡航者はプライベート病院を使うことが多くなり、プライベート病院も保障される海外旅行保険に加入しておくことはとても重要です。
【IHSと海外旅行保険の比較表】
IHS | 日本の海外旅行保険 | |
---|---|---|
費用 (1年あたり) |
776ポンド (約15万円) |
約20~50万円 |
対象となる医療 | NHS(国民保健サービス)を自己負担なしで受診できる | GP(ホームドクター)、プライベートクリニックを含め、医療費の全額が補償される |
対象外の医療 | プライベート医療サービスは対象外 | 出発前からある持病など、加入時に対象外とされた疾病は対象外 |
加入 | 義務 | 任意 (加入することが望ましい) |
加入方法 | ビザ申請時に保険料を支払う | 渡航前に加入手続きを行う 保険会社やプランは自由に選択できる |
- Q&A ワーキングホリデーの海外旅行保険の費用の相場・目安はどのくらい?
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木代-
1年間の保険期間で、安い保険会社では大体20万円前後、高い保険会社ですと50万円となっているのが相場です。
保険会社によって行先や年齢に応じて価格(保険料)が変わってくるところもあり、40~50万円以上の金額になる保険会社もあります。
昨今の円安や海外医療費インフレでどの保険会社の海外旅行保険とも利益がひっ迫していることから値上げする保険会社が相次いでいて、今後も保険料相場は上がっていくことが予想されます。
弊社が取り扱っている保険会社はまだ値上げせずに20万円~30万円弱で頑張ってくれていますが(詳細は後述します)、もしかしたら今後上がる可能性があります。
- Q&A 日本の健康保険は使えないの?
-
木代-
イギリスに限らず、海外では日本の健康保険証を使うことはできません。
そのため海外で病院を受診した時は全額を支払う必要があり、高額な医療費がかかることがあります。健康保険には「海外療養費制度」という制度があって帰国後に申請することで海外での治療費の一部金額の還付を受けることができますが、還付申請の手続きが複雑だったり、還付金が思ったよりもずっと少なかったケースもあるので頼り過ぎは禁物です。
- Q&A クレジットカード付帯保険ではダメなの?
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木代-
イギリスワーホリでは、クレジットカード付帯保険を活用できる場面があるかもしれません。
しかし、必ずしも十分であるとは言えないため、次のような点に注意しましょう。クレジットカードの付帯保険は、多くの場合、補償期間が一定期間だけに限定されます。
例えば楽天カードの付帯保険では渡航から3か月間までとなっており、この期間を超えると補償が終了します。
つまり3か月以上のワーキングホリデーでは保険期間が足らず、VISAの要件を満たすことが出来ないのです。クレカ付帯保険が終了してから海外旅行保険に加入するという案もありますが、海外旅行保険は海外にいる状態で加入することが出来ません。
ワーホリの途中から海外旅行保険に加入することは出来ず、出発前に日本国内から海外旅行保険へ加入しておく必要があります。
海外旅行保険ってどんな保険?メリットとデメリット
海外旅行保険では、さまざまな補償を受けることができます。
代表的な補償には次のようなものがあります(特定の保険会社の補償説明ではなく、あくまで一般的な内容を載せています)。
■治療費用・救援費用
ケガや病気により現地で病院を受診した時や、処方された薬を購入した時にかかった費用が補償されます。
また、ケガや病気で長期入院し、日本から家族が現地に駆けつける際にかかる費用が救援費用として補償されます。
■賠償責任補償
現地で何らかのトラブルにより、第三者に損害を与えてしまったときに保険金が支払われます。
例えば、現地の住まいでお湯を出しっぱなしにして寝てしまい、水浸しになり修理費を請求された時などに補償されます。
■携行品・生活用動産
自分の持ち物が壊れてしまったり、紛失や盗難に遭ってしまったりした時に保険金が支払われます。
例えば、外出先でスマートフォンを盗まれてしまった場合や、カメラを落として壊してしまった場合などです。
特に海外では日本人を狙ったひったくりや強盗などの犯罪が頻発していることから、この補償があると安心です。
海外旅行保険のメリット
海外旅行保険に加入しておくことで、病院を受診した際に治療費などの保険金が受け取れるほか、次のようなメリットがあります。
(特定の保険会社のサービス説明ではなく、あくまで一般的なメリットを載せています)
■治療費のキャッシュレスサービス
海外で病院を受診する時、保険会社から病院へ直接支払いを行う「キャッシュレスサービス」が利用できます。
このサービスを利用すれば、高額な治療費の窓口で支払いや立て替えが不要となります。
■24時間日本語対応のコールセンター
海外旅行保険に加入すると、保険会社のコールセンターが利用できます。
コールセンターでは、医療機関の紹介や手配のほか、パスポートやクレジットカードなどの紛失・盗難時の手続きなど対応を受けられます。
こういった現地での困りごとに、24時間365日、日本語で対応してもらうことが可能です。
■医療通訳サービス
多くの保険会社では、病院を受診する際の医療通訳サービスが提供されています。
ワーホリで海外を訪れる人の中には、現地の言葉に自信がないという人もいるでしょう。
病院を受診する前に保険会社に連絡を入れることで、電話などを利用した医療通訳サービスを受けることができます。
海外旅行保険のデメリット
海外旅行保険に加入する最大のデメリットは、一定のコスト負担(保険料)があることです。
保険会社やプランにもよりますが、一般的に1年間のワーキングホリデーであれば20~40万円程度の保険料がかかります。
分割は出来ず、加入時に一括で支払う必要があるため、まとまった支出が発生します。
イギリスワーホリでの海外旅行保険の選び方
ワーホリ保険は多くの保険会社が取り扱っていますが、自分に合った保険会社やプランを選ぶことが大切です。
特に、次のようなポイントをしっかりと押さえて保険に加入しましょう。
滞在期間をカバーする保険会社を選ぶ
ワーホリ保険に加入するときは、滞在期間を十分にカバーできる期間の加入が必要です。
短期間だけの保険会社もあるので、1年間のような中長期の期間に対応している保険会社を選びましょう。
弊社ではAIG損害保険会社をお勧めしており、1年間(それ以上も可)のワーホリ渡航やネット申込にも対応しています。
プランにもよりますが、保険料は1年間で24万円~30万円です。
帰国時期が明確に決まっていない場合や変更となる可能性がある場合は、無保険の期間が生じないよう、最も長い期間で加入しておくことが大切です。
もし早期に帰国した時には、解約により保険料が返金されるので、保険会社や担当の保険会社に早めに相談しましょう。
必要な補償内容を選ぶ
海外旅行保険でもっとも大切な補償が、現地での医療費を補償する「治療救援費用」です。
海外では想像以上に高額な治療費を請求されることがあるため、保険金額が「無制限」となっているタイプがおすすめです。
弊社のお客様であった実例ですが、海外で心不全により救急搬送され、そのまま緊急手術&入院となり、2,000万円を超える医療費がかかったケースがありました。
重大な疾患のほかにも交通事故や犯罪被害により大きなケガを負ってしまうこともありますから、充実した補償内容を選びましょう。
早めの準備が大切
海外旅行保険はネットから申込できるタイプのものも多くありますが、特別な事情がある場合には加入手続きに時間がかかることがあるため、早めに準備しておきましょう。
■入通院歴や持病のある人へ
通常、ワーキングホリデー保険に加入する時には、健康に関する告知が求められます。
直近で入院や通院をしたことのある人や、持病・既往症の治療を続けている人などは申告が必要となります。
保険会社への手続きや申し込みに時間がかかることもあるので、早めに確認するようにしましょう。
弊社でも持病のある方や薬を服用されている方の海外旅行保険のご相談やご加入を多く受け付けていますので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。
海外旅行保険のご相談・お問合せはこちら
私は先日に潰瘍性大腸炎をお持ちでイギリス渡航されているお客様にインタビューをしました。
イギリス現地での病院のかかり方や薬確保の方法について解説していますので、興味のある方はご覧されてください。
■加入証明書(保険付保証明書)が必要な場合
VISA申請にあたっては、英文の保険契約証(付保証明書)という書類の提出が必要になります。
弊社でもよくお客様に発送しておりますが、日数を要することもあります。
英文契約証・証明書をご希望の方は、保険お申し込み後にお早めにご依頼ください。
また、一般的にはネットから海外旅行保険に申込できるのは出発予定日から2~3か月前となっているのですが、VISA申請のためもっと早くに保険加入したいという場合は特別方法にて対応可能ですのでご連絡ください。
その他、イギリスで生活する上での注意
イギリスでは日本と異なる部分が多くありますので、生活する上で次のようなことに注意しましょう。
イギリスの衛生事情
イギリスの水道水はそのまま飲んでも問題ないとされていますが、日本が軟水であるのに対し、イギリスの水はミネラルの多い硬水です。
そのため、人によっては口に合わなかったり、腹痛を起こしてしまったりすることがあります。
また、建物の配管や貯水タンクが古いなど、問題がある時には、市販のミネラルウォーターを飲用するといいでしょう。
食品の衛生管理も徹底されていますが、食品汚染による食中毒も発生していますので、野菜などしっかりと洗って調理することが大切です。
イギリスの治安・犯罪事情
2023年に警察に報告のあったイングランドおよびウェールズにおける犯罪の総数は約549万件です。
これは日本の2023年の刑法犯総数のおよそ7.8倍となっています。
日本人の主な犯罪被害には、スリや置き引き等の盗難、路上強盗やひったくりなどが挙げられます。
また、夜間や人気のない場所での性犯罪のほか、公共の場所におけるテロも発生しています。
イギリスでの生活では次のようなことに注意しましょう。
■夜間の外出は控える
夜間は特に性犯罪被害のほか、路上強盗やひったくりに遭うリスクが高まります。
夜遅くの外出や、深夜の地下鉄利用は避け、やむを得ず外出する場合は複数人で行動するなど注意しましょう。
■荷物から目を離さない
海外では財布やスマホをはじめとした、ひったくりや置き引きが多発しています。
そのため、イギリスでも同様に貴重品は常に身に付けて、荷物から目を離さないことが大切です。
例えば、レストラン等で一時的に離席する時には荷物はすべて携行するか、同行者と交代で離席するなどの対策が重要です。
また、見知らぬ人に話しかけられて荷物から注意をそらした隙に、共犯者がバッグの中身を抜き取ることがあるため、相手にせず、できるだけ早くその場を離れましょう。
さらに、最新のスマホなど高価なものを身に付けているとスリや強盗に遭うリスクが高くなります。
普段の服装や持ち物にも注意し、貴重品はボタンのついたポケットに分散して持つ、ズボンの後ろポケットに入れないなど、工夫しましょう。
■行動するエリアのことをよく把握しておく
例えばイギリスの首都ロンドンでは、中心部の繁華街などでは、夜になると治安が悪化するエリアもあります。
さらに、バスや地下鉄などの公共交通機関内のほか、レストランやショッピングモールなどの商業施設なども同様に、スリや置き引きなどのリスクがあります。
常に周囲の様子を把握できるようイヤホンの使用は避け、人目につく場所でのスマートフォンの利用も控えましょう。
イギリスの医療制度と医療費
イギリスでは国民保健サービスとプライベート医療サービスが提供されており、どちらも先進国の医療水準を保っています。
イギリスと日本とで大きく異なるのが、ホームドクター制度を採用している点です。
緊急性のない事情で病院を受診しようとする時は、まずかかりつけ医であるホームドクター(General Practitioner(GP))を受診することになります。
GPでの診断に応じて専門医に紹介状を発行してもらうことになりますが、GPは通常プライベートクリニックとなるため、受診料の支払いが必要です。
■国民保健サービス(National Health Service:NHS)
イギリスワーホリでは、ビザの申請にあたり健康保険付加料(Immigration Health Surcharge)を支払い、NHSへ加入します。
NHSは税金で運営されていることから、加入者は自己負担なしに医師の診察を受けることが可能です。
ただし、NHSでは、原則まず総合診療医(GP)を受診し、必要に応じて専門性の高いサービスへ紹介されることになります。
NHSは恒常的に混雑しており、迅速な予約が取りにくい傾向です。
受診したとしても市販薬で対応可能な症状と判断されると薬が処方されず、薬局へ相談するよう促されることもあります。
また、GPからNHS専門医に紹介された場合でも、緊急性が低いと判断されると実際の受診までに数か月の待機が生じることもめずらしくありません。
そのため、通常はプライベートクリニックを受診するのが一般的です。
■プライベート医療サービス(民間の医療機関)
プライベート医療サービスでは、自分で医療機関を選ぶことが可能で、専門医を直接受診することもできます。
NHSほど混雑していないため、比較的短時間で診察を受けられます。
また、日系のプライベートクリニックであれば、受付から診察まで日本語での対応が可能です。
ただし、全額が自己負担となるため、高額な請求を受けることも想定されます。
そのため、日本で海外旅行保険に加入してから渡航するか、現地の民間医療保険に加入するか、いずれか必須と言えます。
救急医療
イギリスの緊急通報用電話番号は「999」です。
消防、警察、救急を兼ねているため、救急要請の場合は、電話が繋がったらオペレータに「Ambulance(アンビュランス)」と伝える必要があります。
救急車を呼んだ場合、救急救命士の判断により病院に運ばれるため、搬送先を自分で指定することはできません。
救急医療は基本的にNHSによって提供されているため原則無料ですが、NHSに登録していない場合は、急性期以降の治療は有料となります。
この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。
文書管理番号:24G01120