アイルランドのワーキングホリデーVISAと選ぶべき海外旅行保険。保険プロが解説
2024年11月時点での情報です。
この記事の目次
この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。
アイルランドはヨーロッパの北西部、ブリテン諸島にあるアイルランド島の南側およそ80%の地域で、イギリスの北アイルランドと接しています。
首都はダブリンで、人口は約500万人です。
第一公用語にアイルランド語、第二公用語に英語が規定されていますが、日常会話は主に英語が使われています。
西岸海洋性気候に属しており、メキシコ湾流と偏西風の影響で、夏は涼しく、冬は緯度のわりに寒くありません。
ビザ申請要件
アイルランドのワーホリビザでは、最長12か月間にわたって滞在することができます。
旅行費用を補うためのフルタイムでの就労と、パートタイムまたはフルタイムでの英語学習が可能です。
項目 | 要件 |
---|---|
滞在可能期間 | 最長1年間 |
年齢 | 18歳以上30歳以下 |
貯蓄 | 50万円以上の預金があること |
申請料 | 16,200円 |
医療保険 | 滞在期間をカバーする海外旅行保険への加入 |
ビザ発給数 | 年間800件 |
申請時期 | 年2回(1月、7月) |
VISA申請の流れ
■Step1:申請資格を確認する
アイルランドのワーホリビザの取得申請にあたっては、申請資格を満たしている必要があります。
年齢のほか、一定額の預金など、上の申請要件をクリアしているか確認しましょう。
■Step2:申請書をメールで提出する
アイルランドでは、ワーホリビザの申請時期が例年1月と7月の年2回です。
申請資格に充足していることが確認出来たら、申請書を英文で作成し、受付期間内にメールで提出します。
郵送での受付は行われていませんので注意しましょう。
■Step3:必要書類を書留で郵送する
申請許可のメールを受信したら、必要な書類を取りまとめて書留で郵送します。
この時、送付する書類には以下のようなものがあります。
・申請許可メールをプリントしたもの
・申請書、写真2枚
・パスポート(原本+顔写真ページ、スタンプが押印されているページのコピー)
・履歴書(英文)
・卒業証明書(英文原本)
・残高証明書(英文原本)
・医療保険証券または付保証明(英文原本とコピー)
・航空券(原本とコピー)
・申請料振込控え
・返信用レターパックプラス
英文書類の提出が基本となり、日本語の書類しかない場合は英訳を添付する必要があるなど、準備に手間や時間がかかることが想定されます。
必要書類や取得方法はアイルランド大使館HPに載っているので、早めに確認しておきましょう。
アイルランド大使館HP「ワーキングホリデー・プログラム」
海外旅行保険に加入しておくことが必須!
アイルランドのワーホリビザの申請にあたっては、滞在期間を完全にカバーする海外旅行保険の加入が義務となっています。
アイルランドでは、外国人は基本的にプライベートクリニックを受診することになり医療費は全額自己負担となることから、渡航前にしっかり海外旅行保険に加入しておきましょう。
- Q&A ワーキングホリデーの海外旅行保険の費用の相場・目安はどのくらい?
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木代-
1年間の保険期間で、安い保険会社では大体20万円前後、高い保険会社ですと50万円となっているのが相場です。
保険会社によって行先や年齢に応じて価格(保険料)が変わってくるところもあり、40~50万円以上の金額になる保険会社もあります。
昨今の円安や海外医療費インフレでどの保険会社の海外旅行保険とも利益がひっ迫していることから値上げする保険会社が相次いでいて、今後も保険料相場は上がっていくことが予想されます。
弊社が取り扱っている保険会社はまだ値上げせずに20万円~30万円弱で頑張ってくれていますが(詳細は後述します)、もしかしたら今後上がる可能性があります。
- Q&A 日本の健康保険は使えないの?
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木代-
アイルランドに限らず、海外では日本の健康保険証を使うことはできません。
そのため海外で病院を受診した時は全額を支払う必要があり、高額な医療費がかかることがあります。健康保険には「海外療養費制度」という制度があって帰国後に申請することで海外での治療費の一部金額の還付を受けることができますが、還付申請の手続きが複雑だったり、還付金が思ったよりもずっと少なかったケースもあるので頼り過ぎは禁物です。
- Q&A クレジットカード付帯保険ではダメなの?
-
木代-
アイルランド大使館によると、渡航期間を全てカバーすることが出来ればクレジットカード付帯の医療保険でも受付可能だとしています
しかしクレジットカードの付帯保険は、多くの場合、補償期間が一定期間だけに限定されます。
例えば楽天カードの付帯保険では渡航から3か月間までとなっており、この期間を超えると補償が終了します。つまり、3か月以上のワーキングホリデーでは保険期間が足らずVISAの要件を満たすことが出来ない = 実質的に不可 なのです。
クレカ付帯保険が終了してから海外旅行保険に加入するという案もありますが、海外旅行保険は海外にいる状態で加入することが出来ません。
ワーホリの途中から海外旅行保険に加入することは出来ず、出発前に日本国内から海外旅行保険へ加入しておく必要があります。
海外旅行保険ってどんな保険?メリットとデメリット
海外旅行保険では、さまざまな補償を受けることができます。
代表的な補償には次のようなものがあります(特定の保険会社の補償説明ではなく、あくまで一般的な内容を載せています)。
■治療費用・救援費用
ケガや病気により現地で病院を受診した時や、処方された薬を購入した時にかかった費用が補償されます。
また、ケガや病気で長期入院し、日本から家族が現地に駆けつける際にかかる費用が救援費用として補償されます。
■賠償責任補償
現地で何らかのトラブルにより、第三者に損害を与えてしまったときに保険金が支払われます。
例えば、現地の住まいでお湯を出しっぱなしにして寝てしまい、水浸しになり修理費を請求された時などに補償されます。
■携行品・生活用動産
自分の持ち物が壊れてしまったり、紛失や盗難に遭ってしまったりした時に保険金が支払われます。
例えば、外出先でスマートフォンを盗まれてしまった場合や、カメラを落として壊してしまった場合などです。
特に海外では日本人を狙ったひったくりや強盗などの犯罪が頻発していることから、この補償があると安心です。
海外旅行保険のメリット
海外旅行保険に加入しておくことで、病院を受診した際に治療費などの保険金が受け取れるほか、次のようなメリットがあります。
(特定の保険会社のサービス説明ではなく、あくまで一般的なメリットを載せています)
■治療費のキャッシュレスサービス
海外で病院を受診する時、保険会社から病院へ直接支払いを行う「キャッシュレスサービス」が利用できます。
このサービスを利用すれば、高額な治療費の窓口で支払いや立て替えが不要となります。
■24時間日本語対応のコールセンター
海外旅行保険に加入すると、保険会社のコールセンターが利用できます。
コールセンターでは、医療機関の紹介や手配のほか、パスポートやクレジットカードなどの紛失・盗難時の手続きなど対応を受けられます。
こういった現地での困りごとに、24時間365日、日本語で対応してもらうことが可能です。
■医療通訳サービス
多くの保険会社では、病院を受診する際の医療通訳サービスが提供されています。
ワーホリで海外を訪れる人の中には、現地の言葉に自信がないという人もいるでしょう。
病院を受診する前に保険会社に連絡を入れることで、電話などを利用した医療通訳サービスを受けることができます。
海外旅行保険のデメリット
海外旅行保険に加入する最大のデメリットは、一定のコスト負担(保険料)があることです。
保険会社やプランにもよりますが、一般的に1年間のワーキングホリデーであれば20~40万円程度の保険料がかかります。
分割は出来ず、加入時に一括で支払う必要があるため、まとまった支出が発生します。
アイルランドワーホリでの海外旅行保険の選び方
ワーホリ保険は多くの保険会社が取り扱っていますが、自分に合った保険会社やプランを選ぶことが大切です。
特に、次のようなポイントをしっかりと押さえて保険に加入しましょう。
滞在期間をカバーする保険会社を選ぶ
ワーホリ保険に加入するときは、滞在期間を十分にカバーできる期間の加入が必要です。
短期間だけの保険会社もあるので、1年間のような中長期の期間に対応している保険会社を選びましょう。
弊社ではAIG損害保険会社をお勧めしており、1年間(それ以上も可)のワーホリ渡航やネット申込にも対応しています。
プランにもよりますが、保険料は1年間で24万円~30万円です。
帰国時期が明確に決まっていない場合や変更となる可能性がある場合は、無保険の期間が生じないよう、最も長い期間で加入しておくことが大切です。
もし早期に帰国した時には、解約により保険料が返金されるので、保険会社や担当の保険会社に早めに相談しましょう。
必要な補償内容を選ぶ
海外旅行保険でもっとも大切な補償が、現地での医療費を補償する「治療救援費用」です。
海外では想像以上に高額な治療費を請求されることがあるため、保険金額が「無制限」となっているタイプがおすすめです。
弊社のお客様であった実例ですが、海外で心不全により救急搬送され、そのまま緊急手術&入院となり、2,000万円を超える医療費がかかったケースがありました。
重大な疾患のほかにも交通事故や犯罪被害により大きなケガを負ってしまうこともありますから、充実した補償内容を選びましょう。
早めの準備が大切
海外旅行保険はネットから申込できるタイプのものも多くありますが、特別な事情がある場合には加入手続きに時間がかかることがあるため、早めに準備しておきましょう。
■入通院歴や持病のある人へ
通常、ワーキングホリデー保険に加入する時には、健康に関する告知が求められます。
直近で入院や通院をしたことのある人や、持病・既往症の治療を続けている人などは申告が必要となります。
保険会社への手続きや申し込みに時間がかかることもあるので、早めに確認するようにしましょう。
弊社でも持病のある方や薬を服用されている方の海外旅行保険のご相談やご加入を多く受け付けていますので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。
海外旅行保険のご相談・お問合せはこちら
■加入証明書(保険付保証明書)が必要な場合
VISA申請にあたっては、英文の保険契約証(付保証明書)という書類の提出が必要になります。
弊社でもよくお客様に発送しておりますが、日数を要することもあります。
英文契約証・証明書をご希望の方は、保険お申し込み後にお早めにご依頼ください。
また、一般的にはネットから海外旅行保険に申込できるのは出発予定日から2~3か月前となっているのですが、VISA申請のためもっと早くに保険加入したいという場合は特別方法にて対応可能ですのでご連絡ください。
その他、アイルランドで生活する上での注意
アイルランドでは日本と異なる部分が多くありますので、生活する上で次のようなことに注意しましょう。
アイルランドの衛生事情
アイルランドでは水道水をそのまま飲むことができますが、ミネラルを多く含む硬水ですので、人によっては口に合わなかったり腹痛を起こしてしまったりすることがあります。
建物が古い場合など飲用に不安がある時や、体に合わないと感じた時は、市販のミネラルウォーターを飲用しましょう。
また、食品の衛生管理は徹底されています。
アイルランドの治安・犯罪事情
アイルランドは、2024年の世界平和度指数において2位にランクインしており、世界的に見ても治安のいい国だと言えるでしょう。
日本貿易振興機構JETRO 2024年世界平和度指数 アイルランドは2位
ただ外務省によると、アイルランドにおける2023年の年間犯罪発生総件数は前年より増えており、
中でも窃盗は特に増えていて注意しなければなりません。
また、インターネットを利用した特殊詐欺はアイルランドにおいても多く発生しています。
アイルランドでの生活では次のようなことに注意しましょう。
■夜間の外出は控える
アイルランドは比較的治安のいい国ではありますが、犯罪は昼夜を問わず発生しています。
特に夜間には絶対に安全と言える場所はないため、夜間には不要不急の外出は避けましょう。
また、昼間と夜間とでは様子の異なる地域もありますので注意が必要です。
■荷物から目を離さない
海外では財布やスマホをはじめとした、ひったくりや置き引きが多発しています。
そのため、アイルランドでも同様に貴重品は常に身に付けて、荷物から目を離さないことが大切です。
例えば、レストラン等で一時的に離席する時には荷物はすべて携行するか、同行者と交代で離席するなどの対策が重要です。
また、最新のスマホなど高価なものを身に付けているとスリや強盗に遭うリスクが高くなるため、普段の服装や持ち物にも注意しましょう。
■行動するエリアのことをよく把握しておく
例えばアイルランドの首都ダブリンでは、中心部の繁華街などでひったくりや路上強盗などの犯罪が多く発生しています。
さらに、バスや電車などの公共交通機関内のほか、レストランやショッピングモールなどの商業施設なども同様に、スリや置き引きなどのリスクがあります。
常に周囲の様子を把握できるようイヤホンの使用は避け、人目につく場所でのスマートフォンの利用も控えましょう。
在アイルランド日本国大使館HP「安全の手引き」
アイルランドの医療制度と医療費
アイルランドの医療水準は比較的高く、先進国の医療水準にあると言われています。
アイルランドには、公営(Public)医療と、プライベート(Private)医療の二種類の医療機関があります。
アイルランドと日本とで大きく異なるのが、ホームドクター制度を採用している点です。
緊急性のない事情で病院を受診しようとする時は、まずかかりつけ医であるホームドクター(General Practitioner=GP)を受診することになります。
GPでの診断に応じて専門医に紹介状を発行してもらうことになりますが、GPは通常プライベートクリニックとなるため、受診料の支払いが必要です。
■公営医療サービス
公営医療はHealth Service Executive(HSE)が運営する医療サービスで、一般的にpublic health serviceと呼ばれています。
外国人であっても、1年以上滞在する場合はHSEの受診が可能です。
窓口では一定額の支払いが必要となりますが、プライベート医療に比べて安価に医療を受けることが可能です。
ただし、利用者が多いことから恒常的に混雑しているため、専門的診療の受診までに数か月~1年以上の待機が必要となることもあります。
■プライベート医療サービス
プライベート医療は、一般的にprivate health serviceと言われています。
公営医療サービスの利用資格のない人は、基本的にプライベート医療サービスを利用することとなります。
しかし、プライベート医療サービスは、医療機関や専門医を患者自身が最初から自由に選ぶことができ、公営医療と比べて短時間で医師の診察を受けることが可能です。
一方で、プライベート医療サービスは診療や検査など、すべて実費での受診となります。
そのため、公営医療と比較しても支払額が高額となることから、プライベート医療保険への加入が推奨されています。
日本から渡航する場合は、事前に海外旅行保険(海外旅行保険)に加入することで、現地での医療費を補うことができます。
もし海外旅行保険への加入が難しい場合は現地でプライベート医療保険に加入することも検討しましょう。
救急医療
アイルランドの緊急通報用電話番号は「999」または「112」です。
消防、警察、救急を兼ねているため、救急要請の場合は、電話が繋がったらオペレータに「Ambulance(アンビュランス)」と伝える必要があります。
オペレータにより必要と判断されれば救急車が出動し、近くの公立病院救急科に搬送されます。
日本と異なり救急車による搬送は原則として有料で、入院が必要となった場合の入院料も全額実費負担となります。
ただし、公営医療サービスの利用が可能なHSE加入者は規定額のみの請求です。
この記事の執筆者:木代 晃輔
株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。
損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。
文書管理番号:24G01120