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ポルトガルのワーキングホリデーVISAと選ぶべき海外旅行保険。保険プロが解説

投稿日:2025年02月03日

ポルトガルのワーキングホリデー。VISA要件と選ぶべき海外旅行保険を保険プロが解説

2025年2月時点での情報です。


木代 晃輔

この記事の執筆者:木代 晃輔

株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。

損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。

ポルトガル共和国はヨーロッパの最西端に位置する国で、日本の4分の1ほどの面積に人口は約1,031万人です。
首都はリスボンで、言語はポルトガル語、EUに加盟していることから通貨はユーロを使用しています。

ポルトガルの位置

地中海性気候に属し、夏は湿度が低いため日本と比べても過ごしやすい気候です。
また、冬は雨が多いものの、暖流と偏西風の影響から温暖です。

ワーホリビザの申請要件

ポルトガルのワーホリビザでは、最長1年間滞在することが可能です。

項目 要件
滞在可能期間 1年間
年齢 18歳以上30歳以下(申請日時点)
申請時に必要な資金 滞在1日あたり45ユーロ相当額の残高が必要
(1年間の滞在で約260万円)
申請料 80ユーロ(約1万3千円)
ビザ発給数 制限なし
海外旅行保険への加入 滞在期間をカバーする旅行保険への加入が必須

ポルトガル外務省HP「ワーキングホリデー要件(youth mobility)」より

VISA申請の流れ

ポルトガルのワーホリビザは、オンラインや郵送での申請に対応していません。
そのため、必要な書類を揃えた上で、ポルトガル大使館に持参する必要があります

■Step1:申請資格を確認する
ポルトガルのワーホリビザの取得申請にあたっては、申請資格を満たしていなければなりません。
年齢のほか、一定額の預金、海外旅行保険への加入など、申請要件をクリアしているか確認しましょう。

■Step2:必要な書類を準備する
ビザの申請に必要な書類には次のようなものがあります。

・ビザ申請書
・身分証明用写真
・有効なパスポート
・海外旅行保険の加入証明書類(緊急医療費用や救援費用(帰国費用)をカバー)
・航空券または航空券を証明する書類
・金融機関発行の残高証明書(英語またはポルトガル語)
・レターパックプラス

■Step3:駐日ポルトガル大使館に書類を持参し提出する
ポルトガルのビザ申請はオンラインでの受付が行われていません。
申請者本人が駐日ポルトガル大使館に書類を持参して申請する必要があります。
なお、訪問にはオンラインによる予約が必要となるため、必ず事前予約を行いましょう。

海外旅行保険への加入が必須!

ポルトガルのワーホリビザを申請するにあたっては、滞在期間をカバーする海外旅行保険に加入しておく必要があります。
特に、病院を受診した際の医療費用に加えて、緊急時の帰国費用(搬送費用)がカバーされていなければなりません。

補償内容をしっかりと確認して、要件をクリアしたプランを選択しましょう。

Q&A ワーキングホリデーの海外旅行保険の費用の相場・目安はどのくらい?
ウィズハート 木代
木代

1年間の保険期間で、安い保険会社では大体20万円前後、高い保険会社ですと50万円となっているのが相場です。

保険会社によって行先や年齢に応じて価格(保険料)が変わってくるところもあり、40~50万円以上の金額になる保険会社もあります。

昨今の円安や海外医療費インフレでどの保険会社の海外旅行保険とも利益がひっ迫していることから値上げする保険会社が相次いでいて、今後も保険料相場は上がっていくことが予想されます。

弊社が取り扱っている保険会社はまだ値上げせずに20万円~30万円弱で頑張ってくれていますが(詳細は後述します)、もしかしたら今後上がる可能性があります。

Q&A 日本の健康保険は使えないの?
ウィズハート 木代
木代

ポルトガルに限らず、海外では日本の健康保険証を使うことはできません
そのため海外で病院を受診した時は全額を支払う必要があり、高額な医療費がかかることがあります。

健康保険には「海外療養費制度」という制度があって帰国後に申請することで海外での治療費の一部金額の還付を受けることができますが、還付申請の手続きが複雑だったり、還付金が思ったよりもずっと少なかったケースもあるので頼り過ぎは禁物です。

Q&A クレジットカード付帯保険ではダメなの?
ウィズハート 木代
木代

ワーキングホリデー期間中をカバーする保険が必須のため、クレジットカード付帯保険ではその期間をカバーできず不可となります。
海外旅行保険への加入が必須です。

海外旅行保険ってどんな保険?メリットとデメリット

海外旅行保険では、さまざまな補償を受けることができます。
代表的な補償には次のようなものがあります(特定の保険会社の補償説明ではなく、あくまで一般的な内容を載せています)。

■治療費用・救援費用
ケガや病気により現地で病院を受診した時や、処方された薬を購入した時にかかった費用が補償されます。
また、ケガや病気で長期入院し、日本から家族が現地に駆けつける際にかかる費用が救援費用として補償されます。

■賠償責任補償
現地で何らかのトラブルにより、第三者に損害を与えてしまったときに保険金が支払われます。
例えば、現地の住まいでお湯を出しっぱなしにして寝てしまい、水浸しになり修理費を請求された時などに補償されます。

■携行品・生活用動産
自分の持ち物が壊れてしまったり、紛失や盗難に遭ってしまったりした時に保険金が支払われます。
例えば、外出先でスマートフォンを盗まれてしまった場合や、カメラを落として壊してしまった場合などです。

特に海外では日本人を狙ったひったくりや強盗などの犯罪が頻発していることから、この補償があると安心です。

海外旅行保険のメリット

海外旅行保険に加入しておくことで、病院を受診した際に治療費などの保険金が受け取れるほか、次のようなメリットがあります。
(特定の保険会社のサービス説明ではなく、あくまで一般的なメリットを載せています)

■治療費のキャッシュレスサービス
海外で病院を受診する時、保険会社から病院へ直接支払いを行う「キャッシュレスサービス」が利用できます。
このサービスを利用すれば、高額な治療費の窓口で支払いや立て替えが不要となります。

■24時間日本語対応のコールセンター
海外旅行保険に加入すると、保険会社のコールセンターが利用できます。
コールセンターでは、医療機関の紹介や手配のほか、パスポートやクレジットカードなどの紛失・盗難時の手続きなど対応を受けられます。
こういった現地での困りごとに、24時間365日、日本語で対応してもらうことが可能です。

■医療通訳サービス
多くの保険会社では、病院を受診する際の医療通訳サービスが提供されています。
ワーホリで海外を訪れる人の中には、現地の言葉に自信がないという人もいるでしょう。
病院を受診する前に保険会社に連絡を入れることで、電話などを利用した医療通訳サービスを受けることができます。

海外旅行保険のデメリット

海外旅行保険に加入する最大のデメリットは、一定のコスト負担(保険料)があることです。
保険会社やプランにもよりますが、一般的に1年間のワーキングホリデーであれば20~40万円程度の保険料がかかります。
分割は出来ず、加入時に一括で支払う必要があるため、まとまった支出が発生します。

ポルトガルワーホリでの海外旅行保険の選び方

ワーホリ保険は多くの保険会社が取り扱っていますが、自分に合った保険会社やプランを選ぶことが大切です。
特に、次のようなポイントをしっかりと押さえて保険に加入しましょう。

滞在期間をカバーする保険会社を選ぶ

ポルトガルワーホリでは、入国日から1年間を保険期間とする海外旅行保険に加入しなければなりません。
短期間プランだけしか販売していない保険会社もあるので、中長期の補償期間に対応している保険会社を選びましょう

弊社ではAIG損害保険会社をお勧めしており、1年間(それ以上も可)のワーホリ渡航やネット申込にも対応しています。
プランにもよりますが、保険料は1年間で24万円~30万円です。

帰国時期が明確に決まっていない場合や変更となる可能性がある場合は、無保険の期間が生じないよう、最も長い期間で加入しておくことが大切です。
もし早期に帰国した時には、解約により保険料が返金されるので、保険会社や担当の保険会社に早めに相談しましょう。

必要な補償内容を選ぶ

海外旅行保険でもっとも大切な補償が、現地での医療費を補償する「治療救援費用」です。
海外では想像以上に高額な治療費を請求されることがあるため、保険金額が「無制限」となっているタイプがおすすめです。

弊社のお客様であった実例ですが、海外で心不全により救急搬送され、そのまま緊急手術&入院となり、2,000万円を超える医療費がかかったケースがありました

重大な疾患のほかにも交通事故や犯罪被害により大きなケガを負ってしまうこともありますから、充実した補償内容を選びましょう。

早めの準備が大切

海外旅行保険はネットから申込できるタイプのものも多くありますが、特別な事情がある場合には加入手続きに時間がかかることがあるため、早めに準備しておきましょう。

■入通院歴や持病のある人へ
通常、ワーキングホリデー保険に加入する時には、健康に関する告知が求められます。
直近で入院や通院をしたことのある人や、持病・既往症の治療を続けている人などは申告が必要となります。

保険会社への手続きや申し込みに時間がかかることもあるので、早めに確認するようにしましょう。
弊社でも持病のある方や薬を服用されている方の海外旅行保険のご相談やご加入を多く受け付けていますので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。

海外旅行保険のご相談・お問合せはこちら

■加入証明書(保険付保証明書)が必要な場合
ポルトガルワーホリでは、申請時に海外旅行保険の加入証明書の提出が必要です。
弊社の取り扱っているAIG損保の海外旅行保険は、英語での証明書発行が可能です。

弊社では加入証明書をお客様に発送する機会も多いですが、発行には日数を要することもあります。
英文契約証・証明書をご希望の方は、保険お申し込み後にお早めにご依頼ください。

また、一般的にはネットから海外旅行保険に申込できるのは出発予定日から2~3か月前となっているのですが、VISA申請のためもっと早くに保険加入したいという場合は特別方法にて対応可能ですのでご連絡ください。

その他、ポルトガルで生活する上での注意

ポルトガルでは日本と異なる部分が多くありますので、生活する上で次のようなことに注意しましょう。

ポルトガルの衛生事情

首都リスボン地域では水道水を飲むことができますが、硬水なので、日本人は体に合わないかもしれません。
飲用には販のミネラルウォーターも活用しましょう。
レストランなどでは魚介類を提供されていますが、衛生上は特に問題ないと言われています。

ポルトガルの治安・犯罪事情

ポルトガルは、ヨーロッパの中でも犯罪発生率の低い国のひとつです。
しかし、凶悪犯罪は少ないものの、スリやひったくり、車上ねらいなど窃盗犯罪が日常的に発生しています。

また、ポルトガルではクレジットカードでの支払いが一般的で、現金を持ち歩く習慣がありません。
日本人は「お金持ち」のイメージに加えて、現金を多く持ち歩いていると思われていることから、窃盗犯罪のターゲットとなっています。

■人通りの少ない場所や夜間の一人歩きを避ける
昼間は安全な場所でも、夜には人通りが減るなど危険となる場所があります。
夜間の一人歩きは避けて、移動にはできるだけタクシーを使いましょう。

道を歩く時は、バッグは車道と反対側に持つことが大切です。
もしひったくりの被害に遭ったとしても、無理な抵抗はせず、安全の確保を優先しましょう。

■貴重品を持ち歩かず、荷物から目を離さない
外出時は貴重品をできるだけ持ち出さず、持ち歩く場合は分散させておくことが大切です。
混雑している場所ではバッグを身体の正面に抱えるように持つなど工夫し、リュックサックは普段から避けたほうが無難です。
空港やレストランでは荷物を床や座席に放置せず、足もとに置く場合は常に確認するなど注意しましょう。

外務省海外安全ホームページ

ポルトガルの医療制度と医療費

ポルトガルの医療水準は高いとは言えず、都市部と地方でも医療水準に格差があります。
また、医療機器など設備の整った医療施設でも、説明が不足していたり、処方がひと昔前の内容だったりすることもあるため、外務省でも注意するよう呼びかけています。

ポルトガルには公立病院、公立診療所、私立病院、個人医の4種類の医療機関があります。
社会保険制度に加入している人は、公立病院での診察料が低額または無料となりますが、とても混雑しており、入院病床も常に不足している状況です。
私立病院は設備が整っているほか、英語での対応が可能な病院もあります。

社会保険制度に加入していない場合は、公立・私立ともに診察料が全額自己負担となります。
一般的には初診料が100ユーロ程度、入院は1日あたり200ユーロ程度が目安です。
治療内容によっては医療費の自己負担が高額となる可能性もあるため、補償内容の充実した海外旅行保険に加入しておくことが大切です

■公立病院
公立病院は普段から混雑しており、受診までに時間がかかります。
受診にあたっては、SNS番号(国立保健医療サービス利用者番号)がないとさらに対応が遅れることとなりますが、SNS番号は急に発行してもらうことができません。
かかりつけ医・家庭医の担当決めにも必要となることから、事前にSNS番号を取得しておくといいでしょう。

長期滞在者は、かかりつけ医を指定しておくことで、総合病院や専門医への紹介・予約が比較的スムーズになります。

■私立病院
私立病院は公立病院と比べて検査設備が整っています。
ポルトガル語以外にも英語での対応が可能な病院も多いとされています。

一方で、ほとんどの個人クリニックは、院内に検査設備を持っていません。
そのため、医師からの検査指示書を持って検査センターで検査を受け、後日改めてクリニックを受診する必要があるなど、日本と比べても煩雑です。

救急医療

ポルトガルの緊急通報番号は「112」です。
警察、消防、救急が共通の番号を使用しています。

急病の時は「かかりつけ医・家庭医」または総合病院の救急部門を受診するか、往診を依頼することになります。
救急外来では重症者優先となるため、軽症の場合は長時間待たされることもめずらしくありません。

木代 晃輔

この記事の執筆者:木代 晃輔

株式会社ウィズハート 代表取締役
神奈川県出身。大学卒業後に損害保険会社で勤務。
株式会社ウィズハートを創業し、保険相談サイト「保険ウィズ」やFP相談サイトを開設。

損保勤務時は損害保険の開発業務に携わり、現在は海外旅行保険や個人賠償責任保険のプロとしても活動中。

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